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『さぁ、レース時間は三分を経過。トップ二台は変わらず……あっと、とうとう篠田選手がトップ二台に追いついてきたぁ!』
追いついた!
「来たな?」
待ち構えてた感じですね、葛木さん。
「げぇぇぇっ、もう追いついてきたよ……」
少しびっくりしている横峰さん。二者二様の反応ですね。
「行きますよ?お二方。」
「望むところ!」
「簡単には行かせないよ!」
残り二分。全力で挑まないと、勝てる相手ではない。手抜きなしの真剣勝負!
『さぁ、トップ争いが混沌としてきたぁ!葛木、横峰、篠田の三つ巴の争い!特に篠田選手、ファーステストラップを連発!……おぉ、篠田選手、ストレートエンドでとうとう横峰選手のテールに追いついたぁ!』
「ど根性みせたる~ッ!」
横峰さんが吼える。簡単には行かせてくれないか……。
つついたら拙いから、隙を誘発する?待ってる時間は無い。もたもたしてたら、葛木さんに逃げられてしまう。
『おっとぉ、トップ集団の前に周回遅れの車が……これは桜丘選手ですね。決勝ではいいところがありません桜丘選手、どこで進路を譲るのか?』
……チャ~ンス(キラリ)。
『トップ争いが、S字に進入……おおっと?ここで桜丘選手が外に膨らみながら減速!三台がその内側を抜けて行きます。……あっ、横峰選手が出口で僅かに膨らんだ……その内側に篠田選手が突っ込んだぁッ!!』
読みどおり!横峰さんは、ここのコーナーにセッティングが合っていない感じだったし。あと、周回遅れでタイミングがズレたみたい。二重にラッキー!
「かぁーーーッ、やられたぁ」
これで、いよいよ……。
「待ちくたびれたよ、友美ちゃん。デートに遅刻だぞ?」
「すいませんねぇ、遅れて。その分、たっぷり楽しんでもらいますから」
「そりゃぁ、楽しみだ」
残りは約一分。周回にして、あと三、四周……ってとこかしら。逝かせてもらいます、師匠!