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「……決勝に関しては以上です。何か質問ありますか?……無いようですね?では、フェアなレースを!」
各ドライバーが散開する。いよいよ決勝が始まろうとしている。
『……あ~、テス、テス。では、皆さんお待たせ致しました~っ!これより、GT300クラス決勝を行います。
レース形式は、五分間の周回レースです。初めに、選手紹介~っ。予選順位順に選手を紹介していきます。紹介された選手は、順々に操縦台へ上がって下さい。まず、予選第一位、ポールポジション!』
うわ、そういえばここのレース、そんなのがあったっけ。いい晒し者じゃない~~。
「何と今回レース初参加の女子中学生、篠田友美選手~~っ!」
ひいぃぃぃ~、めっちゃ恥ずかしい~~~っ!
……でも、そうも言ってられない。軽く会釈しながら上がろう。そして、いつもの操縦ポジションを確保。
……ん?か、母さん、一人で大ウケしてるよぉ。予選の時といい、今といい……死刑だけじゃ物足りないわ。何か考えとかないと。
『そして二番手、フロントロー(最前列)内側は葛木選手~~っ!』
「やぁ、ここ、いいかな?」
え?葛木さんが隣に……?
「あ、はい」
「お望みどおり、手加減なしでいくからね」
うわぁ、プ、プレッシャーだよぉ……。いつもと立ち位置が違う。確実に本気モードだ……。
『……以上の十選手で争われます。今回は、非常にハイレヴェルなレースが予想されます。何せ、予選一位から十位までのタイム差が、何と二秒しかありません。その上、上位二名が21秒を切ってくるという激闘の予選でした。その激戦を制したのが、女子中学生というからまた驚きです』
そんなことより、葛木さんが隣に立つなんて予想外。
どうしよう、どうしよう!まさに『ゆみはこんらんしている』状態だよぉ~。
『では、助手の方々はマシンをスターティンググリッドにつけてください』
ふと気になって、マシンをグリッドにセットしている母さんの方に視線を変えると……。
「……………………」
ニッコリ微笑みながら、コクリとうなずいた。
……やっぱり母さんだ。“大丈夫だよ”と言ってるみたい。いままで混乱していたのが、嘘みたいに落ち着いてきた。
『では、参ります。スタート十秒前!』
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、…………フォーーーーーン!!
電子ホーン音と同時に、反射的にトリガー(スロットル)を握る。
スタートダッシュは成功!
まずは第一コーナー。
……あ、あれ?予選の時よりアンダー気味になってる。イマイチ内側に寄らない?
「どうした?隙が出来てるぞ?」
すかさず葛木さんがインを狙ってくる。でも大丈夫。入り込めるようなスペースじゃない。
「そうはさせません」
トリガーを握って応戦。それが失敗だった。インがさらに開いてしまった。
「あ、しまった……」
「譲ってくれてありがとう」
入り込まれてしまった。さらに……
「悪いね、いただきっ!」
あちゃぁ~。横峰さんにも行かれちゃった。
確かに、少しラフにアクセルを開けても姿勢が崩れないし、ラインが破綻するほど敏感でもない。いわゆる弱アンダーステアというやつ?
ちょっとぉ~、それにしてはマージンありすぎじゃないのぉ?
『おお~っとぉ?スタートダッシュに成功した篠田選手でしたが、ちょっとした隙をつかれ順位を下げてますねぇ。まだペースが上がらないのか、現在六番手まで後退しています……』
ふぅ、セッティングに慣れるのに、時間掛かっちゃったぁ。でわでわ、反撃開始といきますか。まずは、目の前の二瓶さんから……
『おお?レースが動いたぁ!篠田選手、二瓶選手をS字の立ち上がりでPASS!』
よし、アンダーが気持ち強いせいで、バトルでリアがブレイクすることが無い。安心してトリガーを握れる。ESCのセットもジャストミート。次は……大野さんね。
『さて、前方では、葛木&横峰選手がテールトゥノーズのトップ争いをしています。この二人も、結構因縁めいたものがありますからねぇ』
待っててね、お二人さん。すぐに追いつくからね。