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『大変お待たせしましたーッ!これより本日の最終レース、TFCストッククラスAメイン決勝を行います』
いよいよだわ。
『出走台数は全部で十二台です。予選十二位から選手を紹介していきましょう』
何か、段々緊張してきた…。
『……予選第三位。女子中学生でこの位置は凄い!ミナガワレーシング、篠田友美選手ーッ!』
「シノーっ!頑張れー!」
「友美ーっ!」
「ゆーちゃんっ!」
三人組の声援が聞こえる。軽く手を振って答える。
『応援団が凄いですねー。続いて第二位!同じくミナガワレーシング、飯合裕貴選手ーッ!』
ちらっと隣を見ると……特にリアクションもないか。
ふと、視線が合った。
「この前の決着、ここでつけたるわ」
「……この前って?」
ガクッ!
「われ、忘れたんか?初めて地元のコースで会うたときのことを……」
うーん?
ポク、ポク、ポク、チーン!
「あぁ!あの時のこと。すっかり忘れてたわ。セッティングに四苦八苦で」
「あ、あんなぁー。まぁええ。思い出したからには、きっちり白黒つけたる」
「返り討ちにしてあげるわ」
スタート前から、メラメラと闘志を燃やす。
『以上、十二名で争われるAメインですが、ポールポジションの大柳選手と予選五位の杉田選手は、別のレースにて出場権を既に獲得していますので、協議の結果、決勝辞退ということになりました』
そう。このレースに優勝すると、十一月頃に行われる『タニヤ世界選手権』レースの出場権が副賞としてついてくるらしい。だからなのか、周りの人たちを含めて、皆さんものっそい真剣なのですよ。
『では参ります。決勝Aメイン、レース時間は七分間です。ドライバーズ!オン・ザ・トーン……』
フォーーーーーン!
決勝スタート!
まずは、第一コーナー進入…。相変わらず、絶妙なハンドル感覚!次のコーナーへの切り返しも、バツグンな反応。
そして、問題の高速コーナー。
パーシャルでの失速感……無し!予選の時にほんの少しあった違和感が、綺麗さっぱりなくなっている!
『スタートダッシュを決めた先頭二台、飯合選手と篠田選手。無難にワンツーで走行しています』
これで、おかしいと感じていた部分はもう無いはず。安心してメッシーを追いかけられる。
『一周目を終えて、オーダーは変わらず。トップ二台の差は、コンマ三秒といったところか……』
さぁ、覚悟してね、メッシー!
◇
『無難にスタートを切りました各車、大きい順位変動は今のところありません……』
「どうやら、無事にスタートを切れたみたいだね」
「予選一回目の時は、どうなるかと思ったぜ」
大人二人は安堵していた。
「私も、出来る限りのことはしたつもりです」
メカニックも、一仕事終えてレースを見守っている。
「いけそうですか?」
「分かりませんわ。もう一人の彼も、調子良さそうですし、紙一重の勝負になるかも」
研究者の血が騒ぐのか、早速分析を始めている。
「シノ、勝てるわよね?」
「どうだろ……」
「さっきまで落ち込んでたからなぁ」
ちょっと戸惑いを見せるさっちん・みぃー・あやっちの友美応援団。
「マシンは出来上がった、と自負してます。後は、ゆうちゃん次第」
「あんな真剣なシノは、初めて見たわ」
感心しきり、といった感じの郁奈美。
「あの子は、一旦集中するともの凄いのよ?」
「そうなんですか?」
美優が聞き返している。
「そうね。真剣なときの友美は、凄いわよ?」
幼なじみを代表して、亜弥が断言する。
「取りあえず、まだ序盤。レースの推移を見守ろう」
葛木がそう言うと、皆納得してレースに目を移した。
◇
『時間は一分半を経過。相変わらず、トップ二台がレースを引っ張っています。しかし、若干差が縮まってきたかぁ?』
うーん、メッシーもなかなか速いわねぇ。
でも、インフィールドは私の方が速いみたい。メッシーはシケインなどの切り返しで、ちょっと無駄なラインを走ってる分、私が追いついている。
ストレートは互角。なら、仕掛けるのは、インフィールドのどこか。もう少し様子見かな?
『時間は二分。トップ二台の差が見た目でも詰まってきたぞぉ!差はコンマ二秒ない!』
じわじわと追いついてますよ?メッシーに。
「抜かさへんで」
確かに、一コーナーから高速コーナーまでは似たり寄ったりのラインで、オーバーテイクするチャンスがない。しかし、最終コーナー~一コーナーのスピードのノリが私の方がいいのか、二コーナーでメッシーの後ろにくっつくことが出来た。
『トップ二台の差が無くなったぁ!テールトゥノーズ状態でシケインに向かう!』
……追いついたはいいけど、さすがメッシー。簡単には抜かせてもらえないか。
『さぁ篠田選手、抜きに行くか行くかーっ!あぁ、抜けない抜けない……』
「そう簡単に行かさんで」
うーん、もうちょっと後ろで構えて、様子を見ますか。こっちもかなりプッシュしてるつもりだけど、予想以上に手強いなぁ。




