『遡及する思想形成』
『遡及する思想形成』
⑴
何かを考える度に、今現在の事ではなく、過去の出来事へと遡及する。
あの時はこうだったとか、あの時はどうだったとか、その様な、とりとめもないことに。
それは、過去の失敗を繰り返さない様にするための、観念的作業である。
⑵
ただ、未来のことを思考するには、過去のことに拘ってはいられまい。
しかし、それは、つまり、過去に拘っているのではなく、過去を取り返そうとしているのだ。
未来を創造するために、過去を糧として、方法論付けているのである。
⑶
何かに遡及すれば、大概のことは理論付けて説明できるようになる。
ここに、新しい欲求が萌芽し、欲求を欲求のまま叶えたいという願望が現出する。
この過程において、自己という存在は、壊れていくのである。
⑷
何も、思い通りには行かないことは、誰だって承知しているのだ。
ただ、萌芽した欲求は、人生の意味として、此処に存在している。
存在を無視してもよいが、無視をするには足りないほど、自己は疲れ切っている。
⑸
それ故、遡及する、構築された思想を形成し、文章化し、自己内で咀嚼し、体現することを選ぼうとする。
多くの人々が、この現象形成に失敗し、富を集めることで、人生を崇高なものへ導こうとする。
しかしそれは、もう負け犬になった存在の、存在たる証明にしか他ならない。
⑹
そこに、新たな人間思想が生まれ、富を欲する人々が様々に表れだす。
これが、社会の原理であり、本当に欲しい創造を、多くの人々が富と交換する。
ここで、もう一度、自己を省みて遡及する思想を形成すれば、心と心が同化する世界を創造することができる。それは、一言で言えば、最後の願望としての、幸福に過ぎない。