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第79話 魔王様、従者と特訓する②

 前回までのあらすじ

 来る神聖十字軍に備え、特訓のためにルナと二人きりで「本気」の手合わせを行っていたアレク。一息ついて休憩を入れようと思っていたところ、水分補給用に持ってきた水筒の水が、何かの手違いでお酒にすり替わっており、それをルナが一気に飲み干してしまったのだ!その影響で、かつての「お嬢様モード」が発動したルナ。期せずしてアレクは、「ルナリエお嬢様」と手合わせする羽目になってしまったのだ!


「ふふっ、さぁ、特訓を再開しますわよ」


 ルナ、いや、ルナリエお嬢様はそう言って槍を構える。


 その構えは、「両足をクロスし、槍を後手(うしろで)に持つ」という、非常に独特のものだ。


 ほんの少し前かがみになって胸を強調するような姿勢であり、いつもの真面目なルナの姿からは想像もできない、挑発的で、そしてややエロティックな姿である。


「!?」


 俺は驚いて声が出なかった。


 この特徴的な構えは、かつてルナリエお嬢様が得意とした(フォーム)そのものだ。


 彼女がルナになってから(・・・・・・・・)はずっと封印しており、一度も使ったことがなかったものだ。


 つまり今の彼女は、口調だけではなく、性格や戦闘の型まで含めて、完全に「ルナリエお嬢様」そのものだということなのである。


「行きますわよ!」


 彼女はそう言って、爆炎を纏った槍を横なぎに一閃する。


「クッ!」


 俺はギリギリのところで防御したが、衝撃で体が吹き飛ぶ。


 何とかダウンだけは免れ、体制を立て直すことが出来たが、先ほどまでとは比べ物にならないような凄まじい威力だ。


 誤解の無いように言っておくが、ルナが弱くて、ルナリエお嬢様が強いという単純な話ではない。


 ルナは攻撃、防御、持久力などのあらゆる面でバランスが取れた、非常に安定した(フォーム)を得意とする。ある意味で非常に「まじめ」であり規範となるような理想的な戦い方だ。


 一方のルナリエお嬢様は、防御をガン無視した「超火力特化型」の(フォーム)を好む。「殺られる前に殺る。守りに入ったら負け」を地で行くような戦い方だ。その分、瞬間的な火力はこちらの方が圧倒的に高い。


「あぁ! 素敵よ! 流石私(わたくし)の〇〇。もっと、もっと私を燃え上がらせなさい!!」


 ルナリエお嬢様は恍惚とした表情で次々と神速の槍檄を繰り出す。


「……」


 一方の俺、彼女の槍を何とか防ぐので精いっぱいだ。体が思うように動かない。


 今の「魔王」である俺の実力なら、彼女とは互角、いや、それ以上であるはずなのだが……。


「ほらぁ、どうしたの? もっと私を高ぶらせなさい! 頑張ったら、ご褒美(・・・)をあげますわよ」


 ゾクゾクッ!


 恐怖のような、快感のような、何とも言えない感覚が俺を刺激する。かつて何度も味わった感覚だ。


 あぁ、なるほどな。


 俺は直感的に確信する。


「行きますわよ」


 ルナリエお嬢様が槍を横に構えると、それが炎を纏い、巨大な剣の形になる。


「喰らいなさい!! 炎剣レヴァンテイン!!!」


 俺は彼女の攻撃を、避けもせずにもろに喰らう。


 やはりそうだ。


 ルナが俺に絶対の忠誠を誓っているように、俺はルナリエお嬢様には絶対に逆らえないのだ。






 ……。


「まったく、戦闘中にぼーっとするなんて、危ないですわよ」


「……」


 どうやら少しの間気を失っていたらしい。


 気付けば俺は、ルナリエお嬢様に膝枕をしてもらっていた。


「すみません、ルナリエお嬢様」


「まったく、(あるじ)に膝枕をさせるなんて、とんだ召使いもいたものですわ」


 彼女はそう言って俺の頭を少しだけなでる。


「か、勘違いしないでくださる!? 召使いの体調を(おもんばか)るのは、主として当然の義務ですわ!」


 と、赤くなりながら釈明するルナリエお嬢様。


 そう思うなら手合わせで本気の大技をぶっ放すのはやめてくれと言いそうになったが、すんでのところで思いとどまる。


 今そんなことを口走ったら、確実に「お仕置き」コースだ。


「ありがとうございます。もう大丈夫です」


 俺は慌てて飛び起きる。


「そう」


 彼女は一瞬残念そうな顔をしていたが、


「あら、もう大丈夫なのね、それでしたら……」


 と、すぐに何かを思いついたようで、悪戯っぽい笑みを浮かべる。






「有りましたわ。素敵な泉」


 約10分後。


 俺はルナリエお嬢様に引き連れられて、山の中腹にある、木々に囲まれた泉に到着した。


「アナタは(わたくし)に負けたのですから、当然『お仕置き』が必要ですわ」


 とのことで、こんなところまで連れてこられてしまった。一体こんな人気(ひとけ)のない泉で二人きりで何をするつもりなのだろうか。


「さぁ、〇〇、服を脱いで裸になりなさい」


「えっ!?」


 ルナリエお嬢様がとんでもないことを言いだした。


「先ほどの手合わせで汗をかいて疲れたの。泉で水浴びをするから、貴方には私のカラダを流すのを手伝ってもらいますわ」


「ブフッ!?」


「これは『お仕置き』なのですから、貴方に拒否権はありませんことよ」


 そう言ってルナリエお嬢様は、自らも服を脱ぎ始める。


「!?」


 山岳地帯で比較的涼しいとはいえ、季節は8月末の残暑が厳しい時期だ。先ほどまで全力で手合わせしていたこともあり、二人とも汗ぐっしょりなのだ。


 服を脱いだルナリエお嬢様は、息を呑むほど美しい。


 絹のように滑らかな白い肌に、珠のような汗が光り輝きながらしたたり落ちており、神秘的なまでの美麗さだ。


 シミ一つない綺麗な背中に紅い髪が濡れて張り付いており、とても煽情的である。


「ほら、貴方も早く来なさい」


 彼女はそう言って、左手で胸を隠しながら、右手で俺の手を引いて、泉へと入っていく。


 俺たちは二人とも素っ裸で、泉の中ほどまで歩を進める。


「この辺りにしましょう」

 ルナリエお嬢様は、そう言って立ち止まる。ちょうど、太ももから腰に掛けて水につかるぐらいの水位だ。


「じゃあ〇〇、まずは背中を流してもらいますわ」


「は、ハイ……」


 俺は手で水をすくって、ルナリエお嬢様の背中にかけ、それを手でふき取るように流していく。


 彼女の背中は見た目も本当に美しいが、手触りも信じられないぐらい滑らかだ。肩に置いた手が、するりと腰まで滑り落ちるような錯覚に陥る。


 俺は夢中になってルナリエお嬢様の背中を流していく。


「ふふっ、この私の背中を流すことが出来るなんて、身に余る光栄ですわよ」


 彼女はそう言いつつ、とってもご満悦な様子だ。


「ほら、〇〇、ちゃんと『前』も流しなさい」


「前!?」


「ただし、見てはいけませんよ。あなたが見ていいのは、『背中』までです」


 ルナリエお嬢様はそう言って、悪戯っぽく笑う。


 ま、また無茶な命令を……。


 俺は仕方がないので、彼女を後ろから抱きしめるような恰好で覆いかぶさり、その体を洗い流していく。


 首、肩、鎖骨のあたり、と徐々に下へ下へ……。


 ある部分(・・・・)を飛ばし、お腹、腰まで流したところでまた下から上へ……。


「ふふっ。興奮していますの? 息遣いがいやらしくなってきましたわよ」

 ルナリエお嬢様が茶化すように言う。


 こんな状況、興奮するなと言う方が無理だ。


 全裸の男女が森の中の泉で半身浴をし、しかも俺はルナリエお嬢様を後ろから抱きしめるような恰好で、彼女を洗い清めているのだ。


 俺は彼女の胸の部分だけは触れないように気を付けながら流しているのだが、それがかえって変な興奮を引き起こす。


 触れてしまいたいような、触れてはいけないような、悶々とした葛藤だ。


 泉の中に入っているというのに、喉がカラカラだ。


 夏の照り付ける太陽を受けて、頭がくらくらしてくる。


 いっそのこと、何もかも捨て去って欲望に身を任せてしまいたいという衝動に駆られる。


「ありがとうございます。もう十分ですわ」


 そんなことを考えていたら、突如としてルナリエお嬢様が、「満足した旨」告げる。


 よ、よかった……。何とか耐えきったぞ。


 俺はちょっと残念ではあるが、それでも耐えきったことに安どする。


 ところが……。


「では今度は、この私が特別に、貴方のカラダを流して差し上げますわ。幸運に思いなさい」


 全然耐えきっていなかった……。


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