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第43話 魔王様、ケルン公国を訪問する⑧「決着」

こんにちは。

モカ亭です。


長らくお待たせして申し訳ありませんでした。

本日より連載を再開させていただきます。


お待ちいただきました皆様、本当にありがとう

ございます。


この場をお借りして、厚く厚く御礼申し上げます。


改めまして、今後ともよろしくお願いいたします。


(前置きが長すぎるのもあれなので、後書きの方にも

少しだけコメントを書かせていただきます。

もし良ければそちらの方もご覧いただければ幸いです)


それでは、本編スタートです!

「あ、アレク様、一体何を!?」


「大丈夫だよ、シルヴィ。この戦いを終わらせてくる」

 俺は彼女にそう告げると、騎士剣を手に、海へと飛び込んだ。


「ぐっ、凄い水流だ……」

 イザベラが魔力で海水の流れを操っているため、荒れ狂う水の流れに押し流されそうになる。


 だが、船から離れてしまえば俺も魔法を行使できる。

 俺は自分自身に強化魔法をかけ、強力な水流に乗ってイザベラの方へ向かう。


「クッ!」


「ふふっ、もうおしまい?」


 海上の戦闘では、ルナがイザベラに徐々に追い詰められていた。

 両者の実力はほぼ互角だが、何と言っても戦っている地形がイザベラに有利すぎる。


「炎」の魔法を得意とするルナが劣勢に陥るのは当然だ。


 先ほど倒したはずのリヴァイアサンもすぐに修復されてしまい、今、ルナは攻め手を欠きながら、リヴァイアサンの執拗な攻撃を躱して逃げ回っている状態だ。


 早く何とかしなければ……。


 俺はイザベラが海上に陣取っている、「水の玉座」のふもとまで泳いで来た。


 彼女は魔力を使って付近の海を大きく噴水のように「盛り上げ」その頂上に、やはり魔力を使って水で錬成した玉座を作り、そこに座ってリヴァイアサンを操りルナを攻撃している。


「すぅ~」


 俺は大きく息を吸い込むと、そのまま海中に潜り、イザベラが作り上げている噴水に突入する。




 噴水の中は更に強力な激流が渦巻いている。魔力で身体を強化しているとはいえ、この激流に逆らうのは難しい。


 とはいえ、その必要(・・・・)はないのだ。なぜなら、この激流は激しく渦を巻きながらイザベラが玉座を作っている噴水の頂上目掛けて噴き上げているから……。


 彼女は今、あらゆる物理攻撃を、ほぼ(・・)無効化する「流水の舞」の魔法で自身を強化している。


「流水の舞」を物理的に突破するには二つの方法しかない。

 一つは、「圧倒的な力」で「流水の舞」ごと敵を斬り伏せるという方法だ。


 通常であれば非現実的な手だ。四天王クラスを「圧倒」することができる力を持つものなど、この世には存在しないからだ。


 だが、「魔剣の力」を開放すれば、魔王本来の魔力と相まって、瞬間的にだが、四天王の発動する「流水の舞」すら切り裂くことが可能だろう。


 しかし、今回この方法は使わない。


 俺が狙っているのは……。






 俺は泳ぐのを止め、水の流れに身を任せる。俺の体は流される木の葉のように、そのまま「目的地」へと運ばれていく。


 そう、イザベラがいる「噴水の頂上」へだ。






「しまった!」

 突如、俺が噴水の中から飛び出してきたことに、イザベラが目を見開いて驚く。


 今だ!


 俺は騎士剣を、渦巻く水と同じ方向に斬り上げる。


「きゃあ!」

 イザベラが悲鳴を上げる。


 腕に切り傷を負っている。赤い「人魚の血」が流れ出る。


 これが、「流水の舞」を破る「もう一つの方法」だ。


 つまり、「流水の舞」の防御は「水の流れ」のごとく物理攻撃を受け流してしまうから、攻撃を避けることが可能なのだ。


 逆にいえば、水の流れに逆らわず、流れに身を任せるように攻撃を繰り出せば、この防御を突破することができるのだ。






 そんなことが可能なのか? いや、普通はできない。


 だが、今回イザベラは、流水の舞を展開しながら、更に海上にて「水の玉座」や「噴水」、更には「水柱」や「リヴァイアサン」など、複数の水魔法を同時に行使していた。


「術者」が同じであるため、基本的にはこれらすべての「水の流れ」は同じだ。


 例えば、渦を巻きながら打ち上げる水柱や、水で構成されるリヴァイアサン・レプリカの体内を流れる水の水流は、基本的にはすべて同じ方向に流れていくのだ。


 魔王アレクは、イザベラがルナを追い詰めるため展開する各種魔法から、「水の流れ」を見て取っていたのだ。


 彼は無謀にも海に飛び込んだが、これもイザベラが操る水の流れを理解していたため、「ポイント」さえ間違っていなければ、何もしなくても彼女の元へたどり着けるという訳だ。


 そして、目には見えないが、「流水の舞」で展開している水の流れも、目視できる海流と同じ方向に流れているのだ。


 そこでアレクは、無理に力を入れず、流れに身を任せたまま「流水の舞」と同じ方向(・・・・)に剣を振るったのだ。


 これが「地上戦」であれば、逆にイザベラの「水の流れ」を目視することができなかっただろう。だが、ここが「海上」であり、彼女が水を利用した攻撃を多用してくれたため、逆に「水の流れ」を目視することができたのだ。


 皮肉にも、「得意な地形」であったことが、鉄壁を誇るイザベラの「流水の舞」を破るきっかけとなってしまったのだ。







「アレク様!」


 噴水の勢いでそのまま空中に放り出される俺を、ルナがキャッチする。

 俺はそのままテンペストに乗せてもらい、イザベラの様子を見る。


 何とか「流水の舞」を破ったとはいえ、「かすり傷」程度のダメージしか与えられていない。


 さぁ、どう来る……。


「……」


 イザベラは驚いた表情をしつつ、先ほどから押し黙っている。彼女の「凄まじい魔力」は全く弱まっていない。


「ふ……」


 ふ?


「ふふふふふっ。流石ね、魔王ちゃん。私の負けよ」


 イザベラは楽しそうな声でそう言うと、魔力の放出を止める。

 それと同時に、リヴァイアサンが霧となって消え失せる。波も穏やかになり、雲が少しずつ消えていく。


 先ほどまでの荒れ狂う海が嘘のように、太陽がさんさんと輝き、潮風が心地よい、「いつもの」ケルナ湾に戻った。


「それにしても、まさか本当に『魔剣の力』なしで私に傷を負わせるとはね。流石は私の魔王ちゃん。とっても感じちゃった(・・・・・・)わ」

 ここは遊覧船の船上。


 イザベラは今、人間の姿に変化(へんげ)しており、船の欄干に足を組んで腰掛けている。


 ルナの協力はあったが、それでも俺は、当初の約束通り「魔剣の力」を一切使わずに彼女にダメージを与えたのだ。


 戦場が、ルナの介入により「遊覧船」から「海の上」に移った段階で、乗客を巻き込む恐れはなくなったため、その時点で「魔剣」を開放することは可能だった。


 だが俺は、あえて、それをしなかった。イザベラとの約束は、「魔剣を解放せずに、彼女を倒すこと」だったからだ。


 実際にはほとんどダメージを与えることはできなかったが、もともとは「余興」程度のつもりだったのだろう。それで彼女はあっさりと負けを認めてくれた。


「な、何が『私の魔王ちゃん』だ! 魔王様に近づくな! この全身淫乱人魚が!」


「あら、むっつりスケベお嬢様のあなたに言われる筋合いはないわ」


 ルナとイザベラが火花を散らしてにらみ合っている。このまま放っておけば「もう一戦」という事態にもなりかねない。


「そ、それで、とりあえず今日は見逃してくれるんだろう?」

 俺は強引に話題を切り替えるべく、イザベラに話しかける。


「そうね、私のこと一杯気持ちよくしてくれたから、今日のことはロドムスちゃんには黙っていてアゲル」


 ……ま、また意味深な言い方を。ルナが怒りすぎて、まわりの海が沸騰するのではないかと思うぐらいの熱量を発している。


「でも、あなたのことをまだ認めた訳じゃないわ。『魔王位を追放された』あなたをね」

 今度は少しまじめな表情で、イザベラが言う。


 俺は「人間との共存」を掲げ、結果として魔王位を追放された。俺は「魔剣」の所有権を失ってはいないが、ロドムスも「魔剣」を所有しており、それも間違いなく「本物」であるという。


 どちらの魔剣も本物であるならば、「自らが信じる方」に付くのは当然だろう。


「私はあなたの『人間との共存』という理想を否定しないわ。でも、それを実現できないのであれば、私はあなたを『魔王』と認めることはできないの」


 そう言うことだ。「理想」を掲げ、追われてしまった。(つまり一度「失敗」してしまったのだ)


そこで終わるような男なら、所詮その程度だと彼女は考えているのだろう。


俺の「理想」を理解してくれてはいるが、それを無条件で手伝ってくれるほど、イザベラは「お人よし」ではない。


 彼女に認めてもらうためには、ロドムスを打ち破って、「人間との共存」という俺の理想を現実のものにするしかないのだ。


「それまでは私は、魔王国(・・・)四天王のイザベラ=ローレライよ。ロドムスちゃんの命令があれば、一切ためらわずにあなたを殺すわ」

 イザベラがはっきりと宣言する。


 そう、それでいいのだ。逆に、今回のように、「上」から何の指示も出ていない状況での遭遇は、いちいちロドムスに報告する義理もないということだろう。


 なんとも気まぐれな彼女らしい。


「あぁ、望むところだ! 必ず俺の理想を実現して見せるよ!」

「ふふっ、楽しみにしてるわ」


「あ、あの……!」

 それまで押し黙っていたシルヴィが、意を決したようにイザベラに声をかける。


「ダメよ」

 イザベラはそれを遮る。


「あなたと私が今日会ったのはただの偶然、事故みたいなものよ。『本来会うべきタイミング』ではなかったの。私はあなたの素性を詮索しないし、魔王国に報告するつもりもない。だからあなたも、私から直接、何らかの情報を得ようとしてはダメよ。またいつか、『出会うべき時』に会ったら、その時に改めてあなたと対峙させてもらうわ。可愛い子猫ちゃん」


 イザベラの言葉に、シルヴィが無言で頷く。


「ふふっ、じゃあそろそろ、お(いとま)させていただくわ」

 イザベラが俺に向けて投げキッスをする。


「さっさと行きなさいよ!」

 ルナがまたイザベラを威嚇する。


「あっ、そうそう……」

 イザベラが何ごとか思い出したように、妖しい笑みを浮かべる。


「この私を疵物(きずもの)にしたんだから、その責任はちゃんと取ってもらうわ」

 彼女は腕の傷をさすりながら、そんなことを言う。


 いや、あなたの「水の治癒魔法」ならそんなもの一瞬で消せるでしょうに……。


「女の子の『心の傷』は一生消せないのよ」


 イザベラはそんなことを言いながら、俺にゆっくりと近づくと……。


 突如、俺の口に接吻(せっぷん)を施した。


「!!」

 俺は驚いて目を見開く。


「あっ……!!」

 シルヴィはびっくりして口を押えている。


「あぁぁぁぁー!!!!!」

 ルナが「魂の叫び」を絶叫(シャウト)する。


「ふふっ、また会いましょう。『愛しの魔王』ちゃん」

 イザベラはそう言うと、遠距離転移魔法を発動し、跡形もなく消えてしまったのだった。





 To be continued


お世話になります。


今回は、一週間ほどお休みをいただきまして、ありがとうございました。

だいぶ状況も落ち着いて参りましたので、今週からはまた毎日更新ができ

ると思います。


さて、間に一週間ほど挟んでしまいましたが、「ケルン公国篇」は今回で

無事終了し、次回からはまたエルトリア王国に戻ります。


しばらく出番のなかったナユタ君やパメラさんにもまた登場してもらいたい

なぁと思っております(笑)


また、「戦争パート」についてもほぼ構想が固まりましたので、あと

数話、日常パートの話をアップさせていただいたのち、戦争パートに

突入したいと考えております。


改めまして、今回は本当にありがとうございました。

更新を停止していたにも関わらず、毎日多くの方にアクセスして頂き、

「多くの方が応援してくださる」ことが大変励みになりました。


こうしてまた連載を再開できるのも、応援してくださる皆さまのおかげ

です。


これからも皆さまに楽しんでいただけるよう、お話を作っていきたいなぁと

考えておりますので、改めまして、今後とも「追放魔王」をどうぞよろしく

お願いいたします。

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