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第107話 魔王様、戦後の流れに身を置く

こんばんは。モカ亭です。


さて、先日「活動報告」でも告知させていただきましたが、諸派の事情により26日(日)のアップが遅れてしまいました。お待ちいただいている皆様には大変申し訳ございませんでした。

改めて、お詫び申し上げます。


次回は明後日(1/30)木曜日にアップし、それ以降はまた日・木ペースでの週2話アップに戻れると思います。


この度はご迷惑をおかけしまして申し訳ありませんでした。

今後とも、追放魔王をどうぞよろしくお願いいたします。


 アレクがエルトリア王国へ帰還して、あっという間に2週間が経過した。


 それは、まるで怒涛のような期間であった。


 帰国後すぐに、戦没者の追悼式典が行われた。


 第3軍長ガロン、第4軍長ウィルソンをはじめ、エルトリア軍は2千名もの死傷者を出した。


 これまでエルトリア軍はいく度もの激戦をくぐり抜けてきたが、今回の戦争の被害は史上最悪のものであった。


 とはいえ、他国の被害に比べれば、エルトリア軍の損害は少ない方である。


 まして、アレクが魔王としての正体を明かしてまでロドムスと対峙しなければ、被害はこんなものでは済まなかったはずだ。


 シルヴィアは追悼式典で「そのこと」を特に強調し、改めて、魔王アレクを救国の英雄であり、彼を追放するなど微塵もあり得ないことを明言した。


 国民たちも、アレクのこれまでの功績を知っているため、比較的、魔王を受け入れることについて、反対意見は少なかった。


 とはいえ、魔王を国内に置くことで、神聖メアリ教国や魔王国から攻められ、滅ぼされるのではないか、との批判的見解があったのは間違いない。


 これに対して、シルヴィは、


「そもそも、アレク様がいなければ、2年前の『バーク街道の戦い』に敗れてこの国は滅んでいたでしょう。同じく、2年前のベルマンテ公、ヘクソン侯が反乱した『クレイド平原』にも勝てなかったでしょう。昨年、ユードラント共和国に攻め込まれた『メルリッツ峠の戦い』はどうでしょうか?」


「今、エルトリア王国があるのはアレク様のおかげです。その恩を仇で返すように、彼を追放するなど、どの口が言えましょうか? そんなに攻め込まれるのが怖いのなら、攻め込まれる前に、あなた方がこの国から逃げ出しなさい!」


 と一喝。


 反対意見を封殺してしまった。彼女も本当に強くなったものだ。






 しかし、他国ではエルトリア王国のようにはいかなかったようだ。


 今回の神聖十字軍の戦犯、サラザール卿は、神聖メアリ教国に帰国後、次のように触れ回ったようである。


 すなわち、アレクという魔王が神聖十字軍に紛れ込んでいて、奴が我々を皆殺しにするために、魔王国の奥深くまで誘い込んで、包囲殲滅作戦を実施したのである。


 私の叡智と機転により、何とか危機を脱することができたが、アレクのせいで今回の神聖十字軍が失敗に終わったのである。


「戦犯」はアレクであり、奴の首こそ、先ず真っ先に挙げなければならないものである。


 よくもまぁ、ここまで平然と嘘がつけるものだ。


 ある意味彼の才能であるようにも思われる。


 彼の流言により、メアリ教国の人間や、特に被害の大きかったアルドニア王国の人間は、アレクのことを非常に憎んでいるようである。


 これにより、「魔王の策にまんまと嵌められた」サラザール卿は、謹慎処分となったものの、首の皮一枚で「五聖将」の地位をはく奪される事態だけは避けられたようである。


 サラザール卿は、即座に「戦犯」アレクをメアリ教国に引き渡すようにシルヴィに書簡を送る。


 しかし、シルヴィはこれを断固拒否。サラザール卿を激烈に批判する書簡を送り返す。


 サラザール卿は、自らのパートナーと思っていた女性から、これ以上ないほどにボロクソに批難されてしまったのである。


 プライドの高い彼が、どれほどのヒステリーを引き起こしたかは想像に難くない。


「僕のシルヴィが、僕にそんなことを言うはずがない。これは何かの間違いだ! そうだ、アレクだ! アレクが、僕のシルヴィをたぶらかしているんだ! きっと、魔術か何かでシルヴィを洗脳しているに違いない!! 僕が、僕がアレクを殺して、シルヴィを助けるんだ!!」


 サラザール卿は、そう言って即座に軍を興して、エルトリア王国のアレクを討伐しようとした。


 しかし、神聖十字軍の失敗により大損害を受けたばかりのメアリ教国軍を、すぐさま再度戦争に送るべきではないこと、そもそもサラザール卿は「謹慎中」の身であり、いくら五聖将とはいえ、現時点では「敗軍の将」である彼の意見が採用される道理はないことから、この提案は却下される。


 ならば属国である中央六国の軍に、エルトリア王国を攻めさせようと考えたサラザール卿であったが、神聖十字軍の「真相」を知る列国の将たちが、「戦犯」であるサラザール卿のいうことを聞いて、「救世主」であるアレクを討つはずがない。


 中央六国の各国も、戦後復旧に努めるためエルトリア王国を攻める余裕はない、との「表向き」の理由により、一旦はサラザール卿の要求を丁重に無視することにした。


 おかげで、「わずかな時間」、本当に「わずかな時間」であるが、各国に平穏が訪れた。


 とはいえ、時間の経過とともに、エルトリア王国が危機にさらされる可能性が高いのは間違いがない。


 アレクとシルヴィは、列国よりも素早く、そして以前よりも遥かに強力に、エルトリア軍を復旧する必要に迫られているのであった。


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