禁断の恋が現実に起こってしまったのでなんとかしたい
この日の男爵家は大荒れだった。
「お父様!これはどういう事ですか!!」
「私にも分からん、、またお前が何かしたんじゃないのか、、」
「私がどうすれば王宮から王家と公爵家の婚約証明書がくるのですか!!しかもどちらも私宛!?」
「、、、こっちが聞きたい。マリアが嫁に行ってしまう、ううっ(泣)」
「誰がこんなことを!」
それはマリアが自分で選んで(大量の絵姿から適当に、表紙が好きな色の赤というだけで中身も見ないまま)、それをマリアの父が王宮へと送った(こちらも中身を見ないまま) 。まさか王妃が息子の第一王子カイルと公爵家嫡男ノエルの絵姿を紛れ込ませるとは、そしてそれが選ばれてしまうとは誰一人思いもよらなかった。しかも、二人分を一冊にして。これが一冊ずつならどちらかになったのだろうけれど。王妃いわく「二冊にしたら紛れ込ませたのバレるかもしれないじゃありませんか。絵姿見て選んだほうを送り返してね?ってメモも入れたのよ。マリアったら選べなかったのね。両方なんて困った子、、ふふっ」である。
「そうよ!私の選んだ方はどうなったのですか?というか誰だったんです?」
「、、、見てない」
「見てないってなんですか!」
「見てない、マリアだって見なかっただろうが」
「どこに顔もしらない男を自分の娘の婚約者にする親がいるのですか!あぁあぁ!ここにいましたね!」
「、、、」
「泣いている暇があるならどういう事なのか今すぐ確認してきなさい!!」
そうして追い出されたマリアの父アントニオは幼なじみのピレネー子爵の家を訪ねる。
「じゃぁミラの婚約者は間違いなくジェーソンなのか。なぁブライアン、その、あの、王宮から他になにか届いたってことは?」
「だから、王宮からは婚約証明書、ミラの婚約者が選定されたってこの用紙が届いたってさっき言ったよな?アントニオ、何隠してる?言え」
「、、、家にも王宮からマリアの婚約証明書が届いた。しかも婚約証明書が二通だぞ!なんでだよ!誰が許可したんだ!」
この世の終わりのような真っ青な顔をしているが、結局のところ絵姿を確認することなく送った自分が悪い。
「二通?相手は?」
ぴらっと二枚の紙を机へと並べる。
「カ、カイル殿下とこっちは、、、ノエル様!なんだよこれ。」
トントン
二人は扉を叩く音に気付かず話を続ける
「分からない。なにがどうなってこうなったのか。マリアが選んだのは一体誰だったんだ。マリアとカイル殿下、そしてマリアとノエル様との婚約は国が認めているんだ。でもおかしいだろ、三人仲良くなんてありえないし、嫁にやりたくない!」
最後に本音がでちゃったアントニオ。
「マリアが選んだのは誰だってどういうことだ?」
「マリアは送られてきた絵姿を見ずに俺に渡してきたんだ。しかも冷たい目で睨みながら。それに動揺して、、、俺も確認せずに王宮へ送ってしまった。はぁ、なぜあの時確認しなかったのか」
カチャッと扉が開くなり
「王宮へ行きましょう。このままではマリアは不幸になってしまいますわ」
ブライアンの娘ミラの一言で王宮へ行くことを決めたアントニオは「マリアは不幸にさせん」と慌てて飛び出して行った。
ミラはマリアと幼なじみで大親友。禁断の恋とか秘密の恋なんて本が大好きなマリアの事を一番理解している。親友がなにやら禁断の恋に巻き込まれそうになっているのを黙って見ていられなかったのだ。
「ミラ、立ち聞きは淑女として問題だぞ」
「お父様、あんなに大きな声で話していれば外に聞こえてしまいますわ。それにノックしたのに気付かないほうもどうかと。あぁ今からマリアのところへ行ってまいります。マリアが心配ですから」
ミラは父親へ退室の挨拶を済ませるとすぐに子爵家の馬車に乗り込み男爵家へと急ぐ
男爵家へついたミラはマリアの部屋へ通される
「どう?本の主人公になった気分は?」
「ひどいわ、ミラ」
「冗談よ。元気そうでよかったわ。おじ様、家へ来たあと王宮へ向かったわ。きっとなにかの間違いでしょうけれど、なぜこんなことになったのかしらね?」
「私にも全然」
「あら?マリアなら想像つくんじゃなくて?」
「なぜ?」
「こんな時、本の知識はどうしたのよ」
「、、、そんなの役にたたないわ」
「そうね。物語と現実は似ているようで違うの。実際に恋をした人が考えてとる行動も人それぞれなのよ。みんな同じはありえないの。私はね、マリアにはちゃんと恋をしてほしい。物語にじゃなくてね」
「うん」
(本当役にたたないわ。何冊も読んできたのにこんな状況の物語がなかったもの。実際に起こらないと分からないものね。似たような話はあったけれどあれは王子を取り合う女性二人の話だったし。まだまだ勉強不足だわ。そうだ!自分で書いてみるのはどうかしら。モデルが必要ね、、、殿下とノエル様と、、、あとはヒロインか、、、やっぱりミラで!)マリアはマリアだった。
アントニオは王宮の門の前にいた。謁見って誰にすればいいのだろうか。それに王をはじめとする王族に今日の今日会えるはずもない。
(なんで勢いできてしまったんだ!でもこのまま帰るわけにはいかない。マリアが不幸になるのだけは阻止しなくては。とりあえずカイル殿下に謁見の申し込みだ。受付はあそこか)
「はい、ローリエ男爵様ですね。ご案内しますのでこちらへどうぞ」
王宮の受付所で名前を名乗っただけで案内するとは一体?不思議に思ったが案内されるがままついていく。大分奥に進んだ気がするが。
「ではこちらでお待ち下さい」
客間に通されたアントニオは部屋の広さとそこにある豪華な置物や絨毯、シャンデリア、額に入った有名な画家の絵の数々に驚く。(ここ普通の客間じゃないよね、なんか嫌な予感がする。誰が来るか聞いてない!)と青くなっていると扉が開く、、、なり
「お待ちしておりましたわ。マリアがうちのカイルのお嫁さんになってくれるなんて嬉しいわ。これから私もマリアのお義母さんですわね。私女の子が欲しかったのよ。二人でお揃いのドレスなんてどうかしら?でもダメね、年が違うもの。でもちょっとアレンジすればどうにかなると思うの。」
王妃がいきなり現れるというあまりの驚きに臣下の礼を取るのを忘れていたアントニオだったが、我にかえり膝をつこうとした時
「やめてちょうだい。私達家族になるのですもの。そういうのはダメよ。」
「、、、家族」
「そうよ。だってカイルとマリアが夫婦になったらカイルは男爵の息子でもあるのよ。家族!素敵ね。」
急に現れた王妃は他にもベラベラと喋っていた気がするがアントニオの頭に全く入ってこなかった。家族、、家族ってなんだっけ?
『バーーーン』
「キャシー!今度は何するつもりだ!」
ノックもなしで乗り込んできたのはこの国の王であるフリックだった。急いで来たのだろう髪が乱れ、服もよれている。アントニオはまたしても臣下の礼をとりそこなった。いや、今の二人に礼をとったところで気付いてはもらえないだろうが。
「何とはなんです?」
「ルイスに聞いたぞ!おかしな事を受付に頼んだそうじゃないか」
「おかしな?それがおかしいですわね。だって家族にはいつでも会えなくては。私とフリックそしてカイル、それとマリアでしょ。マリアの家族も私の家族。なにかおかしなところがありまして?家族を自由にこちらへ通すことのなにがおかしいのですか」
(いや、それおかしいだろ!?)アントニオはつっこまなかった自分をほめた。
「それがおかしいと言っている。むやみやたらに王宮へ入られては困る」
「家族はいいではありませんか。もう他人じゃないのですよ。それもこれもマリア本人に絵姿から婚約者を選ばさせるなんて考えたフリック様のおかげですわね。ルイスにもあとでお礼をしなければ」
「、、、それなんだが、なかったこ」
「今更なしにはしませんわ!婚約証明書は発行済みなの。フリック様もルイスも納得の上だったはずでは?今更知らなかった、戸籍課が勝手にやったなんておっしゃらないわよね?ねぇローリエ男爵もそう思わない?」
急に話をふられたアントニオは焦った。フリックは今更アントニオの存在に気付き驚きで目を見開く。そんなフリックを目にし、ますます焦って言ってはいけない一言を震える声で言ってしまった。
「はい、、思います」
王妃も絶対権力者、拒否出来るわけがなかった。アントニオは悟った。すべて終わったと。ただ王妃の言う知らなかった?戸籍課?という言葉が引っ掛かっていた。
「失礼します」とまたもや乱入者がやってきた。この国の宰相ルイス・ボーデン公爵。ルイスはノエルの父親だ。
ルイスは王、王妃、アントニオの順に目線を移すとたった一言
「間に合わなかったのですね」
ルイスにとりあえず座りましょうと言われて四人は席につくことになった。ルイスは見覚えのある赤いファイルのようなものを机にポンと放り投げて
「男爵にお尋ねしますが、こちらから送らせていただいた絵姿からなぜこちらを選んだのでしょうか。」
(絵姿だ!赤が好きだという理由だけでマリアが選んだ絵姿だ!どうにかして中身が誰なのか聞き出さなくては!)
「マリア本人が選んだのです。私から何か言うような事はありませんでした。王宮より送られてきたものですからどなたを選んでも間違いはないのですがこちらの方をマリアがよほど気に入ったのでしょう。今一度拝見させていただいてよろしいでしょうか。」
冷静に話しているようで冷や汗を隠しきれないアントニオに顔色の悪い二人フリックとルイス、それに対してニコニコしている王妃。
「何を今更見るのです?もうすぐ息子になるというのに」
!!! 机に放り投げられた絵姿を奪うようにして膝の上でそっと開くとそこには両面に絵姿が貼られており、アントニオに向かってカイルとノエルがにっこりほほえんでいた。
「ギャーーーー!!なんだこれは!!」
王の前だというのにそんなことどうでも良かった。
「おい、大丈夫か?」
フリックが思わず声をかけるがアントニオの動揺はおさまらない。ブツブツつぶやく。もちろん他の三人にも聞こえている。
「大丈夫じゃない、、、なぜ殿下とノエル様が、、何かの間違いだ、、そうだ間違い、、マリアは渡せない、不幸は目に見えてるじゃないか、それにマリアがやっていけるはずがない!ははっ、」
「ちょっと聞き捨てならないですね。あなたはうちのノエルが女性一人も幸せにできないというのですか。」
「そうね。ノエルはともかくカイルは絶対にマリアを幸せにするわ。カイルが無理でも私が幸せにしますわ。」
「・・・」
フリックは話が変な方向へ進んでいるのに気付いて傍観することにした。
アントニオに対し息子自慢をしていた二人だったが今度はどれだけマリアを幸せに出来るか息子アピールが始まっていた。アントニオは現実逃避し、聞いていないようだった。
フリックはそろそろいいかと
「ローリエ男爵、絵姿を見て驚いていたようだったがまさか知らなかったのか?」と聞くとアントニオは涙目になりながら「はい」と答えた。
つまり絵姿は王妃の手を離れてから開かれずして選ばれ王宮へ戻り婚約が結ばされたということだ。その前に確認する機会はいくらでもあったのにだ。ルイスは絵姿の入った封筒を開けることなく戸籍課へ回し、速やかに処理するようにと告げた。ルイスに無能と呼ばれたくない戸籍課の職員達はトラウマがあるためかそりゃ頑張った。二度聞きは無能のする事だとルイスに確認することなく前例のない婚約の処理が終わった。ルイスのせいで、いや、王妃に言わせればルイスのおかげで。
「これはどうなんだろうか。普通まず二人を相手に婚約することは出来ないのだが受理されている。どちらかを破棄するかもしくは両方か」
「フリック様、破棄はノエルで!」
「王妃様、カイル殿下には侯爵家以上の令嬢がよいのでは?」
「二人ともやめなさい。ローリエ男爵、あなたの正直な意見を聞きたい。どうしたい?」
ここで言わなければと必死になる涙目のアントニオ
「はい国王様、マリアはまさか自分が選んだのが殿下やノエル様だとは今も思ってないでしょう。絵姿を見たら決して選ばなかったと思うのです。不敬ではなくおそれ多くてという意味です。あの子には平凡な幸せが身の丈にあっているのです。どうか、どうか」
「わかった。今すぐには決められないができるだけ早くに結論を出す。こちらから連絡をやろう。今日は下がってよい。」
こうしてアントニオは男爵家へと帰ることになった。諦めの悪い二人を置いて。
アントニオは帰るとすぐにマリアに詰め寄られる
「お父様どうだったのです。何かの間違いだったのですよね。ところで私の婚約者はどなたですの?随分時間がかかりましたのね。」
「あぁ手違いがあったようだ。国王自ら話された。婚約者のことだがまだ決まっていないらしい。もう少し待つようにだそうだ」
全部は言えないアントニオ。
「そうなの。てっきり殿下かノエル様の絵姿が紛れ込まれていたのかと思ったわ。そんなわけないのに。実際見つけたら絶対に選ばないでしょうけど。お父様だって私に王妃や公爵夫人なんて務まるとは思えないでしょ。私部屋に戻るわ。」
マリアが部屋へ戻ったのを確認すると
「、、、だよな、あれじゃ無理だ」と呟いた。
~~~~~~~
「手違いだったのですって。国王様が直々にお話くださったみたい。正直なところ少し焦ったわ。でも本当によかった。」
「そうだとは思っていたけどよかったわね。マリアが王妃か公爵夫人なんて信じられないもの。」
そうね、なんて言い合い二人はマリアの部屋でお茶をしながら笑いあった。
「でもこれって物語だったらかなりのシンデレラストーリーよね。男爵令嬢が王子様に見初められるのよ。すごいじゃない。殿下とノエル様が二人揃ってマリアを迎えにくるのよ」
「ミラ、冗談でもやめてくれない?禁断の恋は本の中だけよ」
「ふふっ」
ガラガラガラ
(馬車?お父様のお客様かしら?なにか騒がしいわね)
しばらくして男爵家の執事が真っ青な顔でマリアを呼びにくる。
「失礼致します。マリアお嬢様、旦那様がお客人と共にに客間でお待ちです。急ぎ準備を。ミラ様、申し訳ございませんが、本日はお引き取りをとの旦那様からのお言葉を頂いております。こちらでお送り致します。」
マリアは思う。ハンスってこんなに老けてたかしら?顔色のせい?なんか白髪が一気に増えた?
「わかったわ。ごめんなさいミラ、また連絡するわ。ハンス、すぐに準備をするから少し待っていて。」分かりましたとハンスは下がっていった。
「ねぇ急ぎって一体誰かしらね?婚約者が決まったのかしら?それとも殿下だったりして」
「殿下はさておいて婚約者かもしれないわね。どうせならミラも見ていかない?」
誰が待っているのか分かってないのに勝手なことをいうマリアにミラも乗る。
「そうね。マリアの婚約者にはぜひ会いたいもの。違っても部屋を間違えた事にするわ。さぁ行きましょう。」
と、盛り上がった二人はハンスを呼ぶことなく二人で父の待つ客間へ向かった。
トントン
「失礼致します。お待たせいたしま、、、」
「なに?マリアどうしたの?」
挨拶の途中で止まってしまったマリアを不審に思ったミラが背中を人差し指で軽く突っついて小声で話しかけるが反応がない。仕方ないので扉とマリアの隙間から中の様子を伺う。とそこにいたのは
「やぁ、ミラ嬢もきていたんだね。久しぶりだね。」
とにこやかに笑いかけるノエル、、、と隣には不機嫌を隠すことなく
「久しいな」
カイルがいた。
さっきまで冗談で話していたことが現実に起きている。
「なにこれ、、、本当に迎えにきちゃったの?」
「来るか!」ミラのつぶやきにカイルの返しはさすがに早かった。
「ミラも来たのか。お前たちも座りなさい」とアントニオに促され二人はアントニオの隣に並んで座ると今までの流れを説明される。
マリアは自分が置かれている状況をようやく理解した。
「お父様の嘘つき。私の婚約者はまだ決まってないっていったじゃない。なんでこんなことになってるのよ。」
カイルとノエルもやっと状況を理解したところだった。二人とも両親は信じられないので男爵家へと直接乗り込んできたのだった。
~~~~~~~
ノエルの場合
ノエルの父ルイスは負けず嫌いだった。王同様幼なじみだった王妃にはいつも煮え湯を飲まされていた。今回ばかりは負けられない!
「ノエル、お前の婚約が決まった。絶対に破談にするなよ。王妃には負けない!身分なんて気にするな。男気見せろ!殿下はまだ恋愛のルール『れ』の字も知らんガキだ。ノエル分かっているな、負けるな。お前なら大丈夫だ。マリアを幸せにするんだ!」そして母親の「がんばるのよ~」
「マリア?身分?ってマリア!?」
~~~~~~~
カイルの場合
「カイル、すまない。お前の婚約が決まった。ただ今回は破棄もありだ。ただその場合こちらから破棄することは出来ない。いや、大丈夫だ。相手からはすでに破棄の意向はうけているし。問題はない?」しどろもどろな王に対し王妃は「破棄なんてさせません。カイルこれは真実の愛なのよ。出会いは偶然で必然なの。わかる?この出会いは大切にしてちょうだい。あなたならマリアを幸せに出来るわ。ノエルよりもね!」
「マリア?ノエル?婚約者って?暴力妄想女!?」
~~~~~~~
「お父様、それで破棄という方向で話しているのですよね?これは誰が見ても無効じゃないの。私結婚なんてしないわよ。」
「もちろんじゃないか。だから殿下も来てくださったのだ。」
ノエルは言いずらそうに
「あー、あの私には破棄という選択肢はないのですが、、。」
「「「「はぁ???」」」」
「それってマリアを婚約者にするということですの?」
ノエルにぐいぐい迫るミラ
「んーまぁそういうこと?」父親には逆らえない。ただマリアの事は気に入っていた。
「お前正気か?こんなお、、マリア嬢を婚約者に?」
あきらかにこんな女って言おうとしたカイル。
ノエルはマリアの前に膝まずき手をとると下から顔を覗きこむように見上げると
「私では不満かい?」
恋愛初心者のマリアには刺激が強かった。真っ赤になり涙目。
「クスッ、マリアはかわいいね」
「ノエル、、お前本気なのか」
「あぁ、だからカイル、君のほうは破棄してね?」
「、、、ダメだ!お前は俺の親友であり俺を支える側近だ。ふっ、不幸になるのを見てられない。だったら、、だから俺が引き取る!」(えっ?今何て言った?引き取る?誰が、、、俺!?)
「はぁ?それって本心ではカイルも婚約諦めないって
宣戦布告ってこと?」
「ちがっ」
「違わないだろ」
「違う!」
おいてきぼりのアントニオとミラだったがミラは(いいもの見れたわ。マリアはまだ真っ赤のまま。モテモテね。殿下とノエル様のやり取り聞いてるのかしら。私のほうが禁断の恋に目覚めそう。)なんて事を思っていた。
そんなおいてきぼりのアントニオだったが頑張って口を開いた
「あ、あの、、それで破棄のほうは、、」
「しない!」
「しませんよ」
「そんな、、、じゃぁ、マリアは」
「私の婚約者だな」
「私の婚約者ですね」
その日は話にならないと一同解散となった。
その夜アントニオは泣きながら酔えない酒を浴びるように飲んでいた。
~~~~~~~
「カイル、本当に破棄しないつもりなんだ。それってマリアを気に入ったってことだろ。」
「破棄するつもりはない。ただ気に入ったわけでもない。」
「それおかしいだろ。じゃぁ俺が破棄したらカイルも破棄するの?」
「、、、」
「ほら、それが答えだよ。カイルはなんだかんだいってマリアが気になってる。まぁいいや。俺もマリアは気に入ってるけどカイルに譲るよ。初恋の人と同じ名前の人を好きになるってなんかすごくない?」
「名前は関係ない!」
「ははっ、ごめん。さてと俺のほうの破棄手伝ってくれるよね?、、、父さんがこわい」
「、、、分かった」
(本当にマリアの事気に入ってたんだけどなぁ。でもせっかく恋に臆病なカイルが一歩進めそうなんだし)
「とりあえずこんな感じで頼むよ」
婚約破棄計画を立てた二人は当日を待つことにした。
~~~~~~~
「嫌な予感しかない。お父様、私頭がいた」
「痛くない」
「お腹がい」
「痛くない。気のせいだ。行くぞ」
晴れのこの日アントニオとマリアは王宮へ呼び出されていた。
「お父様、足が」
「早く馬車に乗れ」
しぶしぶ馬車へと乗り込んだマリアは王宮への道中ずっとうつむき不機嫌だった。
王宮から送られてきた書面には特に詳しい事には触れず、婚約に関しての話であるとしか書いてなかったが、アントニオは婚約破棄だと思っていた。とっても前向きに。
(あれだけ王の前ではっきり言ったんだ。大丈夫。殿下とノエル様はちょっとおかしな方向に話がいっていたような気もするが、、、。国王を信じる!)
~~~~~~~
「さぁ着いたぞ」
アントニオの言葉に無反応なマリアにしびれを切らしたのか「早く降りなさい!」と強めに言うがそれでも無視を決め込むマリア。そんな時馬車の車内に手が伸ばされる。
「迎えにきたぞ。ほら」
「殿下?」
「ほら早くしろ」
「カイルが嫌なら私の手をとって?」
「ノエル様まで、、」
カイルは無理やりマリアの手をとり馬車から降ろしてしまうとアントニオに先に行くと伝え、マリアと手を繋いだまま王宮の奥へと進んでいく。その間カイルとノエルはこっそり会話する。
「カイルちょっとやり過ぎじゃない?」
「このくらいでちょうどいい」
「そうかな?周り見えてる?すごい注目されてるけど」
「、、、かまわない」
「ふーん。なんかカイル変わったね。なんか目覚めちゃった?」
「うるさい、もう時間だろ。行くぞ」
どうやらカイルは自分の中にマリアに対してなにかが芽生えたことに気付いたらしい。
三人がたどり着いたのは宣誓の間だった。ここは王族と公爵家で婚約者が決まった者が国王の前で婚約者を報告する場所となっている。マリアはなぜ王宮に呼ばれたのかも、宣誓の間の意味も知らなかった。
「あの、ここはどこでしょう?これから何があるのですか?」
「心配しなくていいよ。私達に任せて。さぁ行こう」
ノエルがカイルと繋いでいないマリアの左手を握る
カチャッ
宣誓の間の扉が開かれると正面に国王であるフリックがいた。右手には奥から王妃のキャシー、ルイス、アントニオが座っていた。
カイルとノエルに手を繋がれたまま国王の前に用意された席までたどり着くと右からカイル、中央にマリア、そして左にノエルが座る。
キャシーはニヤニヤが止まらない。なぜかルイスもにやけている。アントニオだけはここがどういった場所か気付いて半泣きだ。
「ではカイル・カイザー宣誓を」
「はい。私カイル・カイザーはここにいるマリア・ローリエを婚約者とすることをここに宣誓致します。」
(はっ?なにこれ、)
「宣誓、聞き届けた。では次にノエル・ボーデン宣誓を」
(勝手に聞き届けないでよ!私の感は当たるのよ。お父様の嘘つき!!私の意思は関係ないの!?)
「お待ち下さい。その前に私の話を聞いていただけませんか。」
ノエルの宣誓を遮るカイルに不満顔なルイス、わくわく顔の王妃、もはや泣いているのか青いのか白いのかよくわからない顔のアントニオ。
「いいだろう。カイル話せ」
「ありがとうございます。私はマリアをノエルに譲るつもりはありません。今回の婚約は私とだけするものとしたい。ですからノエルとマリアの婚約は破棄とすることを認めていただきたい。これに関してはすでにノエルとは話がついております。ですからノエルが宣誓することは何もありません。」
「ノエル、今の話は事実か?」
「はい。間違いございません。手違いがあったとしても王となる者の婚約者が二人と婚約を結んでいるとはおかしな話。私は宰相である父がおっしゃった『よき王になれるよう支えなければならない立場』にあると理解しております。それを一人の女性を奪いあうなどとは次期王の側近として恥ずべきこと。」
違いますか父上?とばかりにノエルはルイスを見る。
ルイスは何も言わない。発言が許されていないからだ。でもわかっていたという顔をしている。王妃は満面の笑み、アントニオは、、、割愛する。
「フレドリック・カイザーはここにカイル・カイザーとマリア・ローリエの婚約を認める。皆、良いな」
(うそでしょ。なにこれ、、、シンデレラストーリー?物語なら最高のハッピーエンドでしょうけど私には絶対に無理!無理ったら無理!!)
後日逆立ちで庭園を一周するカイルを見たものがいるとかいないとか。