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勇者と魔王の兄による異世界譚  作者: 徽橈 盈虧
第1章 転生〜二度目の人生〜
7/57

1歳の誕生日

6話目です。

ドレッドくんの1歳の誕生日です。

誕生日といったらやっぱり誕生日ケーキですよね。

私はやっぱりショートケーキが好きですね。

俺が生まれてから、ちょうど一年が経った。

今日は俺の誕生日パーティーが行われる。

と言っても、家族3人だけのパーティーだが、それでも誕生日を祝われるのってなん年ぶりだろ。二十歳超えてからは祝われたことなかったからなぁ。なんか新鮮だなぁ。



「そ〜らドレッド高い高〜い。」



「きゃっきゃっきゃ!」



俺は今、自分の部屋で珍しくガイル父さんと遊んでいる。

遊んでいると言ってもガイル父さんが俺を高い高いするだけなんだけどな。ガイル父さん子どものあやし方それしか知らないのかよ。

あとこの高い高い、子ども目線から見るとクッソ怖い。ガイル父さんはかなりの長身だから余計に高く感じる。

でも慣れてきたら普通に楽しかったな。怖いのは最初だけだったし。


何故俺がガイル父さんと遊んでいるのかというと、なんでもアリス母さんとパリキが今日の夜の誕生日パーティーのための夕食やケーキを作るために厨房に立っているんだそうだ。

いつもはパリキが作っているが、今日はアリス母さんも、腕によりを掛けて作る、と息巻いていたからな。今からアリス母さんの作る料理が楽しみだ。


そういう理由があって、俺は今ガイル父さんと遊んでいるわけだ。



さっき昼ご飯を食べて、いつもなら昼寝の時間なわけだけど、今日は自分の誕生日で、ソワソワして眠れないんだよな。

流石にガイル父さんと戯れるのにも飽きたしな。


そういうわけで、書斎に行って本でも読んでこようと思う。

父さんの高い高いから解放されて、俺はハイハイをして書斎に行きたいという意思表示を行った。ガイル父さんはその俺の意を汲んだくれて、今の俺には開けれない扉を開いてもらった。


今日はガイル父さんが付き添いか。なんか不思議な感じだな。いつもとは付き添いが違うという、ちょっとした違和感があり、そのせいか少し速いハイハイをしながら、書斎に向かった。


いつもの重厚感溢れる扉をバシバシと叩くことでここに入りたいということを伝える。

そしてそれを分かってくれたガイル父さんに開けてもらい、今日は何を読もうかなぁ、と思いながら俺は書斎に入った。


今は昼を過ぎた頃だから、できれば夜までに完結する本がいいなぁ。


そう思っていい本がないか本棚を見て回っていると、ある一冊の本に目が止まった。

『魔術理論〜猿でも分かる!!超初級編〜』と書かれた本だった。


前にアリス母さんといた時に見つけた『魔術理論〜初級編〜』という本は、パリキとかアリス母さんの目を盗んでちょっと読んでみたことがあった。初級編と書かれているにもかかわらず、結構な量の専門用語が出てきて、ちょっと混乱した記憶がある。

初級編の更に下、超初級編なら、そんな専門用語への解説とかもついてくるのではないか、と思ったわけだ。

前にも何回か見かけたことはあったのだが、その頃は他の本を読むのに夢中だったんだよなぁ。すっかり忘れてた。


ガイル父さんは、俺が書斎に入ったとき「うっへぇ、俺本嫌いなんだよなぁ。」と言って、書斎に備えてある椅子に座り、机に突っ伏して寝ている。


俺の付き添いだろ。ちゃんと付き添いしてろよ、と思ったが、こういう本を読むときには好都合だな、と思い直した。


ガイル父さんは眠っているし、夜までに読み切れそうな薄さだったし、読んでみるか。


俺は、本のページを捲り、この本を読み始めた。




ーーーこの本を手にとってくれてありがとう。

私の名前はグレイ・カーテス。アウローラ魔術学園を首席で卒業し、そのまま王宮魔術師になった男だ。こう聞くと自慢にしか聞こえないかもしれないが、純然たる事実として受け止めてほしい。



さて、これでは魔術の基礎理論について説明するよ。


まず、この世界には『魔素』と呼ばれる物質がある。この魔素は、何処にでも存在する。空気中にも、水の中にも、木の中にも、生物の中にも、そして、我々人の中にも。

そして、我々人間は自分の体内に存在するこの魔素を『魔力』に変換し、自分のイメージにこの魔力を乗せてこの世界に介入する。

そうして初めて魔術が発現する。



これで魔術の基礎理論は終わりだ。簡単だろう?ーーーーーーー





ふむ、そういうことか。神様に魔術のことについて簡単に教えてもらったが、この魔術についての本はよく分かるな。

さすが、猿でも分かると言うだけのことはある。


お、魔術の修得方法もあるな。




ーーーーさて、魔術の基礎理論が分かったところでその魔術を使いたいだろう?


魔術には『火』、『水』、『土』、『風』がある。特殊属性というものもあるが、普通の人はこの四つのどれかがあればいいほうだね。


そして、これを使うにはまず、体の中にある魔素を魔力に変換することから始まる。人の中にある魔素は多かれ少なかれ必ず多少は存在する。


それを魔力に変換するには、まず体内に存在する魔素を感じとることから始める。魔素を感じることは難しいけれど、努力したら誰でも感じることができるよ。ーーーーーー





なるぼど。体内の魔素を感じる、ね。

俺は自分の体内に意識を向けてみる。



•••••あれ?何も感じないぞ?

まぁ最初だし、そんなもんなのか。頑張って感じ取れるようになるために努力しないとな。



本を閉じて、窓の外を見てみる。

外は真っ赤に染まった夕日で見事な黄昏時だった。

そろそろ夜になりそうだな。もう少しでパリキが迎えに来るはずだ。

ガイル父さんはまだ(いびき)をかいて寝ているままだった。

俺はハイハイでガイル父さんに近づき、その体を揺すって起こした。



「••••••んぁ、なんだドレッド。書斎に来てもまだ字読めないだろ。読んでほしい本でもあったか?」



俺は窓の外を指差す。



「•••あれ?もうこんな時間か。寝てたら時間が経つのが早いな。よし、ドレッド。そろそろ時間だから行くぞ。」


そう言って俺を抱きかかえると、階段を駆け下りていった。

そんなに急いでどうしたんだろう?と思っていると、ガイル父さんはリビングの扉の前で一度立ち止まった。

そして扉に向かって「もう入って大丈夫か?」と聞き、答えが返ってきたので、扉を開け放った。



「1歳の誕生日おめでとう、ドレッド」



「誕生日おめでとうございます。ドレッド様!」



「ドレッド、誕生日おめでとう!」



順に、アリス母さん、パリキ、ガイル父さんが俺に向けてそう言った。


リビングは、俺の誕生日一色に染められていた。

アンティークな長机に白いテーブルクロスが掛けられており、その上には色とりどりの綺麗な料理が並べられていた。部屋は豪華な飾り付けがしてあり、綺麗な料理に煌びやかさを追加していた。

そして何よりも、長机の真ん中に置かれてある、ホールのショートケーキが一際綺麗だった。



俺は、その光景に感動していた。

祝われるってこんな気持ちになるんだな。

二十歳を超えてからは祝われたことがなかったから忘れていた。

誕生日を祝われるってだけでこんなにも満たされるんだな。

前世ではブラックな会社に入ってからは自分の誕生日そういや昨日だったな、みたいな日々が続いていたからだろうか。

その反動なのかは分からないが、俺はこの幸せを噛み締めていた。



そして俺をこの幸せで満たしてくれた家族への、感謝の気持ちを、今の俺に表現できる精一杯で言葉にした。



「とぅしゃ、かぁしゃ、あいあとう」



「「「ーーっ?!」」」



まだ1歳児の舌足らずな口で、母さん(・・・・)父さん(・・・・)それとパリキに感謝の気持ちを表してみた。



今までは、遠慮していたんだろう。本当の母さんと父さんは前世の二人だけだと、今世の俺の親を親と見ていなかった。

だからどうしても素直に言えなかった。


けど、遠慮する必要なんてはなからどこにもなかったんだな。二人の愛をたしかに感じたのだから。そしてその二人の愛を幸せだと俺が感じたんだから。



「今、喋ったよな?」



「えぇ、喋りましたね。」



「しゃ、喋りましたよね?ドレッド様?」



「さすが、俺とアリスの子供だな!これは将来大物になるぞ!!」



「はい、そうですね。ですが、過度な期待はプレッシャーになりますよ。子供は敏感ですからね。」



「あぁ、ドレッド様がお喋りになられた。そのたどたどしい喋り方がまたなんとも可愛らしい!!」



歯も大分生え揃ってきて、少しぐらいなら普通の料理も食べれる俺は、アリス母さんに美味しい料理を食べさせてもらった。



こうして、俺の幸せを実感できた夜は更けていった。





ドレッドくんのお父さんお母さん優しい良い親ですよね。

お母さんは美人だし、お父さんがイケメン、この世界に小学校とかあったら参観日絶対自慢しますよね。ドレッドくん、ほんと羨ましいですね。


次話は、ドレッドくん初めて外に出るです。

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