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勇者と魔王の兄による異世界譚  作者: 徽橈 盈虧
第1章 転生〜二度目の人生〜
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情報収集

四話目です。

ドレッド、生後5ヶ月の話しです。

俺が生まれてから5ヶ月が経過した。


まだハイハイはできないが、もう首が据わり首を曲げて周りの景色を観察することができるようになった。


と言っても、自分が寝ている赤ちゃん用のベッドの上からしか観察することしかできないがな。



この世界で、神様からもらった『全ての言語を理解し、読み書きできる能力』。

これががちゃんと機能していて、結構便利で役に立つ。



この世界の言語は発音も語調もイントネーションも何もかもが日本語と違うのに、その言語を聞くとスルスルと頭に入ってきてちゃんと意味を理解しているのだ。

この能力は常時発動しているらしく、自分の意思で能力をきろうとしてみてもできなかった。

神様ってすげぇと改めて思った。



そして、俺はこの能力をフル活用してアリス母さんとガイル父さんの会話を全て盗み聞きしてこの世界の知識を増やしているのだ。



というかこれ以外することがない。まだ首も据わってなくて動くこともできないし、ただ周りの景色を見ているだけじゃ暇なのだ。


そんな俺に会いに来てくれるのは、アリス母さんとガイル父さんの他にもう一人だけいた。


現代の日本に溢れているフリフリがついた可愛いけど機能性を感じないメイド服ではなく、機能性を重視した、悪く言えば地味、良く言えば機能美が優れているメイド服を着た給仕さんがいた。



そんなに金を持った貴族みたいな感じがしないアリス母さんとガイル父さんがどうして給仕なんて雇えるのか、ということに対して疑問符を浮かべていると、父さんが俺の部屋でその給餌さんと話しをしていた。



そして俺はそれに聞き耳を立てていた。まだ生まれて数ヶ月の赤ちゃんが話しを理解しているとは思わないのだろう二人は普通の声で話していてよく聞こえた。


まぁそりゃそうだろうな。俺みたいに生まれた瞬間から意識がある訳じゃない限り、普通の赤ちゃんが理解するわけないもんな。



「雇っていただき誠に有難うございます。誠心誠意、粉骨砕身で身を粉にして働かせてもらいます。」



「そんなに畏まらなくてもいいから。もっと気楽にいこうぜ。」



「そういう訳にはいきません。雇ってもらった以上、全力を尽くします。」



そしてその二人の会話を聞くと、いろんなことがわかった。


まず、この給餌さん、名前はパリキという。

鳶色の髪をポニーテールにして、それが左右に揺れる度に犬の尻尾みたいだな、と思った。

瞳の色も、髪の色と同じ鳶色。くりっとした瞳が可愛い、見た目15歳くらいの少女だ。

さっきの会話からも、少女が真面目な性格だということが分かる。


その少女は、背筋をぴしっと伸ばして真っ直ぐ前を向いてガイル父さんにお礼をしていた。

そのお礼の角度はキッチリ90度。こういうところからも、少女の真面目すぎる性格が計り知れる。



そして、どうしてガイル父さんがパリキを雇うことができたのかだが、話しを聞く限り、父さんはもう現役を引退したがそこそこ凄腕の冒険者だったようだ。


そんな元凄腕冒険者の父さんは、アリス母さんが俺を身籠もるとともに、引退してこの村『カリソン村』に隠居して普通の村人として生活している。


ちなみにこの村カリソンは、カリソン山脈の奥地にある、殆ど限界集落に近いような村だ。


そして、冒険者時代に貯めていた貯金が結構あり、今回パリキを雇うことができたのだ。

さらに、なんか農民にしては家がでかいなぁ、と思っていたが農民じゃなく冒険者で、貯めていた貯金を使って建てたらしい。


いいなぁ冒険者。俺も大きくなったら冒険者になってみたいなぁ。やっぱ剣持って竜を倒すとかに男子なら憧れるよなぁ。


と、思っていると、あっちでの話し合いが終わったらしくガイル父さんとパリキが俺に近づいてきた。



「ドレッド、この子がお前の専属世話係になったパリキだ。」



「よろしくお願いします。パリキと申します。まだ給餌見習いですけど、一生懸命身の回りのお世話をさせていただく所存です。」



赤ん坊に対しても真面目なのか、敬語を使いながら、さっきの90度の礼をしてきた。

いかにも真面目ですというような真摯な表情をしながら俺を見つめている。


ガイル父さんが「真面目過ぎるのも考えものだな•••••。」と言っていた。


だが俺は知っている。

この給仕の少女パリキが、可愛いものが大好きだということにな。


前に何回か俺の部屋に来ることがあった。そのときは給仕では無かったのかは分からないが、そのときのパリキは、周りに誰もいないのを確認すると俺に飛びついて頬をスリスリしてきた。

ずっと俺を見て「かわいいっ!」を連呼していて、それが何十分も続くのだ。


そんなことがあったから、俺は最初は戸惑ったものだ。今の誠実な姿は、初めて見たからな。



一応挨拶ぐらいはしといた方がいいか。

と言ってもまだ喋れないからなんとなく挨拶しているのが分かるようにしないと。



「アギャ、ギャオォアオンギャ。」



こちらこそよろしくと言ったつもりなのだが、やっぱりまだ喋れないか。

これは伝わってないだろうなぁと思っていると、



「いまこの子喋りませんでした⁉︎ねぇ喋りましたよね⁉︎」


と、パリキは鼻息荒くしながらガイル父さんに話し掛けていた。


おいおい、素が出てるぞ。ガイル父さんはまだパリキの素を見たことがなかったのか、凄く戸惑っていた。


ていうかよく俺のあれを聞き取れたな。

俺でもよく分からないような言い方だったのに。ある意味尊敬するわ。


こうして、真面目で誠実だけど素がそれと懸け離れているパリキが、俺の専属給仕係となった。




今回の四話目を書いていて思ったのですが、生まれた瞬間から意識があるって結構凄くないですか?

もし生まれた瞬間から意識があったらもっと人生を有意義に送れたのになぁ、と書いていて思いました。


五話目もすぐ出していきますので、気長に読み進めてください。

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