誕生
三話目です。主人公転生しました。
暗いところで目が覚めた。
いや、正確には起きているが、目は開かない。
暗闇の中にたった一人という閉塞感と孤独感が俺を不安にさせる。
このままずっと暗闇に一人なのかもしれないと思ったとき、暗闇に一筋の光が現れた。
俺はその光に引っ張られるように、光の方向に向かっていった。
そして、誰かに持ち上げられる感覚とともに暗闇は消え、逆に目を焼くような激しい光に包まれた。
「オギャァアッ!!オギャァアア!!!」
声がした。赤ちゃんの声だった。
この声が誰の声なのかを思いつくまでに数秒を要した。そして、理解した。
これは、俺の声だと。
この世界に転生し、俺という名の生命が誕生した瞬間だった。
まだ目は見えないが、声が聞こえた。
「おぉ、見事な男の子が生まれたぞ!」
「えぇ、頑張りましたよ。あなた。」
若い男と女の会話だった。
どうやら俺の誕生に喜んでいるようだ。感じからして俺の母親と父親だろうか。
そういや、神様には言ってなかったが、できれば俺はイケメンがいいなぁ。
目は見えないが、声からして父親はそこそこのイケメン、母親は結構な美人だと思う。
あ、眠くなってきた。赤ん坊だし、生まれたてだから疲れてるのだろう。
意識が薄くなってきたところで父親だろう厳つい声の人物が、
「この子の名前は『ドレッド』だ。男の子が生まれたらこの名前にしようと決めていた。」
そんな声が聞こえた。
そして俺の意識は深い眠りについた。
次に目が覚めた時、俺は母親と思わしき人物に抱きかかえられて、ベッドの上にいた。
光に慣れて目が見えるようになり、改めて母親と思わしき人物を見てみた。
目を見張るようなプラチナブロンドのロングヘア。
思わず吸い込まれてしまうような透き通ったエメラルドグリーンの瞳。整った鼻。
胸は美巨乳と呼ぶに相応しい形をしている。スタイルもモデル並みに整っている。
驚くほどの美女。この人が俺のお母さんだったらいいなぁと、思っていたら、ドタドタという荒々しい足音とともに一人の男が俺がいる部屋に飛び込んできた。
「目を覚ましたか!『アリス』」
「はい。今目を覚ましたところです。この子も今目を覚ましたようですよ。『ガイル』」
「そうか。おぉドレッド。お前のお父さんですよ。お〜よしよし。」
そう言って、俺の父ガイルがその傷だらけな大きな手で俺を抱き上げた。
銀髪の短髪で、碧い瞳をしていた。
ガイルの身体は冒険者という感じの肉体をしていた。筋骨隆々の身体。それでいて筋肉が引き締まっていた。所謂、細マッチョを、さらに強化したような感じだった。
さらに、大きな刀傷が左目を縦に切り裂くように存在していた。
完全にカタギには見えない風貌をしていた。
父親と知らずに街中で絡まれたら即座に土下座して金を払い許しを乞いそうになるようなのが俺の父親だった。
さっきの会話で分かったがこの綺麗な美女のアリスが母親、左目に大きな傷があるこの男、ガイルが父親ということだろう。
これは俺の将来の容姿に期待してもいいのではないだろうか。
母親は言うべきにあらず、父親もそこそこのダンディなイケメンだ。
これは将来が楽しみだな。
「オギャァアッ!!!オンギァアアア!」
あれ?俺の意思とは関係なく声が出てしまった。
何故だろうか。確かに少し腹は減っていたが、その程度だ。やっぱ赤ん坊だから感情の制御ができないのだろうか。
「はいはい、お腹が空いたんですね〜。今ご飯をあげますからね〜。あなた、ご飯をあげますからでていてください」
「分かった。可愛い我が子を見れないのが残念だが、ご飯の時間じゃしょうがないな。」
そう言って、ガイル父さんが部屋から出ていく。
それと同時にアリス母さんが自分の服を捲し上げて、俺の前にその大きな乳房を露わにしてきた。
しかし、不思議と興奮はせず、感じたのは飢え渇くような食欲だけだった。
赤ん坊にはまだ性欲とかそういうのはないんだな。
俺はそのことに少なから安堵を得ていた。母親に欲情するとかマジで人間として終わっているからな。
この飢え渇くような食欲を満たすために俺は食事を開始する。
双丘の頂点にあるピンク色の突起に吸い付き、中から溢れてくる液体を、無我夢中で飲み下していた。
母乳の味なんて分からないが、赤ん坊の我が身としては物凄く美味しかった。
勢いあまって喉に詰まらせてむせてしまった俺を、アリス母さんが優しく撫でてくれる。
それから俺は腹がいっぱいになるまで飲み続けていた。
満腹になると、今度は睡眠欲が姿を現してくる。ほんとに赤ん坊って食っては寝なんだな。
俺がそう思っていると、アリス母さんが俺の背中をポンポンと叩いてくれた。
そして、俺は腹の中のモヤモヤを出すようにゲップをした。確か赤ちゃんってゲップをしないと喉に詰まって死ぬんだっけか?
「あなた、もう入ってきても大丈夫ですよ。」
「そうか。やっとドレッドを可愛がれるか。待ちくたびれたぞ。」
「ふふ、そんなに時間はたっていませんよ。」
「そうか?俺には随分長く感じたな。」
そういう会話を見して、ガイル父さんが俺たちがいる部屋に入ってくる。
どうやら俺を可愛がりたくてうずうずしていたらしい。俺をすぐに抱き上げてよしよしとしてくる。
俺はこの二人の親について考えた。
異世界転生ものでは、転生した先の両親が優しくないとかあったから、そのへん不安だったのだがどうやら心配なさそうだ。
俺はこの両親二人からちゃんと俺に対する愛情を感じた。だから安心していいのだろう。
そう思ったのもあるだろうが赤ん坊の体だからだろう。母乳をもらったあたりからうっすらと眠たかったんだが、ここに来てピークに達した。
そして、俺は安心しながら、ゆっくりと言われ瞳を閉じ、意識を手放した。
四話目も早めに投稿します。