神様と転生
二話目です。
ーーーここはどこだ?
ーーーあれ?俺は今まで何をしていた?
たしか俺は残業後の帰りの途中にトラックに轢かれて死んだはずだ。
もし奇跡的に助かっていたとしてもここは病院ではない。病院特有のあの独特な匂いもしないし、病院の白いベッドの上でもない。
今俺がいるこの場所は全てが白で塗り潰されている。
そんなところに俺は浮いている。
ここは上も下も、右も左もわからない、時間が流れているのかすらも分からない不思議な場所だった。
こんな不思議な場所にいて、考えてますます訳が分からなくなって頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされていたところに、目の前が突然眩ゆい光を放ちながら一人の老人のシルエットを映し出した。
その老人は頭の上に光る輪っかが浮いていて、後ろから後光が差していた。
その俗世を超越した感じは物凄く神様みたいな感じだった。
いや、みたいなというか十中八九そうなんだろうな。
「わしは神である。」
あ、やっぱり神様だった。
俺はブラックな会社に入る前は、そこそこのオタクだった。ゲーム、ラノベ、アニメ、マンガなどに結構のめり込んでいた。だからこの手の知識は結構豊富なのだ。
まあそれも会社に入ってからは仕事に忙殺されてやっていないがな。
そうやって俺が考え事をしていると神様が俺を悲しげな目で見て語りかけてきた。
「わしは主らがいる世界の神である。お主はトラックに轢かれて死んで、ここにきた。」
あ、やっぱ死んだんだ。もともと死んだと思っていたからがっかりすることもあまりなかった。
「じゃが、今回お主は死ぬはずでは無かったのじゃ。
本来ならお主はあと数ヶ月後に過労で死ぬはずだったのじゃ。じゃがわしの不手際でお主を死なせてしまった。すまなかった。」
背筋に電撃が走ったような気がした。それほどこの告白は俺にとって衝撃的なものだったからだ。
俺は今回死ぬはずではなかった?それをこの神様の不手際で死んだ?
ふざけんな、と言いたかった。
けど神様の言葉を思い出した。俺は数ヶ月後に過労で死ぬ。過労ということはあの会社に働き詰めになって死んだのだろう。
そして俺はこう思い開き直った。
「どうせ俺は数ヶ月後に過労で死ぬんだろ?だったらそんなクソつまらない死に方するよりこうやって神様に会った方がずっとマシだ。」
つまらない人生でつまらない死に方をするより、まだこうやって神様に会った方がマシだ。なにせ神様に会うなんてこと人生でそうそうあることでもないしな。
「そう言ってもらった方がわしも楽になる。できることならお主を元の世界に戻してやりたいが、お主は元の世界ではもう死んだことになっている。だからお主を元の世界に戻すことはできない。本当にすまんのぅ。」
その言葉に少しがっかりした俺だが、あのままつまらない人生を送るのもなぁ、とも思った。
そこで俺は疑問に思った。
元の世界に戻すことができないなら、俺はどうするんだ?そもそも死んだら極楽浄土なりどこかに逝くだけじゃないのか?その筈なのになんで俺は神様と話しているんだ?
疑問が顔に出ていたのだろう。神様が俺の顔を見てその答えを話してくれた。
「じゃが、他の世界に転生させることはできる。」
その言葉を聞いて、俺は飛び上がりそうになった。
元オタク俺からしたらそれは願ったり叶ったりのことだった。
神様は苦しむような表情をしていたが、そのときの俺は満面の笑みだったであろう。
「お主が転生する世界は、名を『ガラディア』という。その世界は、お主たちの世界でいうところのファンタジーというやつだ。魔術があって、魔物がいて、勇者がいて、魔王がいる世界じゃ。」
「俺をその世界に転生させてくれ。いや、させてください!」
即答だった。
だって憧れの異世界転生だぞ!しかもファンタジーの!
オタクなら、いや男なら即答するもんだろ普通!異世界転生は男子が一度は考えたことがあるもんだろ!
「お、おう。そのつもりじゃ。じゃがガラディアは魔物が存在し、それは人類の生命を脅かす存在じゃ。今のままでガラディアに転生させても生きることすらも難しいじゃろう。今回はわしの不手際が原因じゃ。じゃからわしはお主に力を与えようと思う。」
「よっしぁぁぁああああっっ!!!」
俺はそれを聞き喜びすぎて叫んでしまった。異世界といったらやっぱりチートは必要だよな。
神様から言われないかなぁと思いながらずっと待っていたからその喜びようはとてつもないものになってしまった。
「まぁ落ち着け。わしがお主に与える力は『神力』じゃ。」
「神力?」
「そうじゃ。読んで字の如く神の力じゃ。万物を創造することも、物理法則を捻じ曲げることも、世界を創ることさえできる神だけが持っている神だけの力じゃ。」
「マジ!?そんなのくれんの!?」
そんな凄い力くれんの⁈
これはマジでチートだわ。やっべぇ、これは俺の時代が来るな。
そうやって俺が頭の中でムフフな妄想していると、
「まぁ、お主は何もできぬがな。」
「えっ。ど、どうしてだ?」
「この神力は神だけが使える力といったじゃろう。神じゃないお主に使えるわけ無かろう?」
は?
じゃあなんでそんなクソの役にも立たない力くれんだよ。喜ぶだけ損じゃねぇか。
そうやって神様が俺を上げて落としたことへのイライラを溜めていると、
「まぁそう怒るな。別に何もできないという訳ではないわい。この神力でできることは、お主の肉体を強化することだけじゃ。」
「さっきのに比べれば随分としょぼいな。」
「神の力じゃぞ?神の力で強化されたらお主の肉体は最強の武器になるぞ。それに万物の創造とかは神だけにしか使えないと言うておるじゃろうが。」
ん〜、まぁ何もできないよりかはましか。しかし神の力か。
どんだけ肉体が強化されるのか転生したら是非とも試してみたいね。
「ほかにはないのか?」
「お主神に対してよくそんな言葉が使えるな。まぁよいが。それと、今回はわしが悪いのじゃ。無茶な要求じゃなければよいぞ?」
無茶なのは駄目かぁ。もっとチートが欲しかったんだけどな。強くなくて、かつ結構便利な能力なんかないかなぁ〜。
あ、いいのがあった。
「また一から言語覚えるのめんどくさいから、ガラディアの全ての言語の理解、それと読み書き、これはどうだ?」
「うむ、それくらいならお安い御用じゃい。」
よし、これでまた言語を覚えなくてすむな。
生まれた瞬間から意識があると、無意識に言語を覚えることができないからな。
「よし、では今からガラディアに転生させるが、その前にお主にあっちの世界の一般的な情報を教えるでの。」
「おう、分かった。」
「まず、ガラディアの文明は中世のヨーロッパのような感じじゃ。ガラディアには二つの大陸がある。一つは魔大陸、二つ目はバラキルド大陸。魔大陸は魔族の王である魔王が治めている大陸全体で一つの国家じゃ。ここまでは良いかのう?」
「おう、続けてくれ。」
「バラキルド大陸は人間を始めとした獣人、エルフ、ドワーフが住んでおる大陸じゃ。お主が転生する場所はバラキルド大陸のルーラ王国というところの家庭じゃ。位置は確か東のほうだったかの?地理はこんなもんじゃ。あとは転生してから調べるがよい。」
「魔術についても教えてくれないか?」
「魔術は、魔力を使い世界の理に干渉することで引き起こされる。魔力は全てのものに多かれ少なかれ宿っておる。あとはイメージ力と属性の適正じゃの。」
おお、さすがファンタジー。男の憧れである魔術がリアルに存在するとは。今からワクワクとドキドキが止まらないぜ。
「その属性の適正ってのはなんだ?」
「魔術には属性がある。基本属性の『火』、『水』、『風』、『土』がある。そして特殊属性の『光』、『闇』がある。あと魔族には固有属性を持つものもいる。適正は普通は一個あればいいほうじゃの。稀に二属性持ちとか三属性持ちとかの奴もいるの。」
「俺にもなんかの属性はつくのか?」
「さぁの。それは儂にも分からんわい。」
ん〜、まぁそれもそうか。この適正は完全に才能だしな。転生した後の俺に期待ってところか。
「よし、だいたい分かった。んじゃ俺を転生させてくれ。」
「あい、分かった。では今からお主を転生させるとしよう。今回は本当にすまなかったの。わしのせいでこんなことになってしまって。」
「いいって。俺は逆に感謝してるしな。あんなつまらない人生から、こんな楽しいことをさせてくれて。」
そう、俺はもう神様のせいとかそういうのは考えていなかった。むしろ逆に感謝してるぐらいだ。転生は夢だったからな。
俺の足元に複雑な紋様が刻まれた魔法陣が現れた。
とうとう転生するのか。やばい今になってドキドキしてきた。
俺が、まだ見ぬ異世界に思いを馳せていると、
「あ、そうそう。言い忘れたことがあったでの。」
「ん、なんだ?」
意識が薄れてきたところで、神様こそんなことを言った。
「お主の次に生まれてくる予定の双子、勇者と魔王だから。」
「•••••••••え?」
そこで俺の意識は暗転した。
三話目も早めに投稿します。