味覚の違い…遥
ご無沙汰してます。
気付けば、新年あけてました。
今年も宜しくお願い致します。
取り敢えず、家には帰って来たが、未だ亜耶が困惑から抜け出せていない。
俺は、リビングのソファーに亜耶を座らせ、自室に行き白のポロシャツとチノパンに着替えた。
リビングの亜耶の様子を見る限り、未だ戻りそうにないので、キッチンに行き冷蔵庫の中を覗き込んだ。
時間短縮で作れるものっと……。
俺は、在る食材を眺めて、パッと頭に浮かんだものを作ることにした。
粗方作り終わった時点で、ソファーの亜耶の隣に座って、様子を見る。
視線を向ければ、徐々に焦点が合わさってきていた。
もう少しかな。
何て思った矢先に。
「…はるか…さん」
って、か細い声で俺を呼ぶ。
はぁ……、ホッとして、溜め息が出た。
「やっと戻ってきたか……。取り敢えず、飯にしようか。着替えておいで」
亜耶の頭を撫でてそう言う。
今回は、二時間か…。
何時もより、長いか。
「わたし……」
戸惑いながら、そう呟く亜耶。
何か言いたそうにして居るが、今は言えなさそうだ。
「話は、飯を食べてからゆっくり聞いてやるから」
俺が、そう口にすればゆっくりと立ち上がって、自室に向かう亜耶の背中を見送り、キッチンに戻り仕上げの取りかかった。
自室から出てきた亜耶が、ダイニングテーブルに並んだ料理を見て項垂れた。
そんな顔して欲しくないんだがな。
「折角、亜耶のために作ったのに、自分を攻めるような顔はして欲しくないな」
俺は、そう言って、亜耶の顔を覗き込む。
「だって…」
そう呟く亜耶に。
「あのさぁ。前にも言ったと思うが、亜耶が一人で背負うことなんて、何にもないんだ。やれない事があって当たり前だ。全てが上手くなんていかない。各々の思いだって在る。それを巧く纏めるのは、難しい。学生の内なら、何度でも修正ができるんだ。そして、亜耶は今はそれを学ぶ時。間違ったことに自分で気付けるときもあれば、他人に指摘されて気付くこともある。…でだ、今は、食事の時間で俺と二人で楽しむ時間だと思うのだが、違うか?」
最後の方は、ちょっとおどけた風に言ってみる。
すると。
「そ…うだね。遥さんの手料理、早く食べたい。」
少しだけ、吹っ切れたのか顔が綻んでいる。
その顔を見て、ホッとする俺。
亜耶の肩を押し、席に着かせると自分も席に座る。
二人して手を合わせ。
「「いただきます!」」
同時に口に出す。
作った本人としては、亜耶の一口目が気になり、箸が途中で止まる。
そして、最初の一言が。
「遥さん。これ、辛い!」
と、期待の言葉とは違う言葉が返ってくる。
えっ、辛い?
どれの事だ?
俺は、亜耶が指してるのを目にする。
そこにあったのは、麻婆豆腐で、亜耶の好物だ。
俺は、不思議に思いながら、それを口に含む。
だが、自分には調度良い辛さなのだが、目の前の亜耶は、涙を浮かべて、水を勢いよく飲み干していた。
うーん。
「亜耶。辛いの苦手だったか?」
俺は、疑問に思いそう問えば。
「家で食べてた時は、中辛だった……」
亜耶が、申し訳なさそうに言う。
いや、まぁ、俺も確認しなかったのがいけなかったんだが……。
「悪かった。今度作る時は、気を付ける」
亜耶の好物だが、味が合わないのは仕方ないか…。
落ち込みかけた俺だが。
「折角遥さんが作ってくれたのだから、全部食べるよ」
って、亜耶が笑顔で言ってくれるから、苦笑混じりで。
「無理して全部食べる必要ないからな」
そう声をかけていた。




