願い事…遥
本日2話目です。
前の話から読んでくださいませ。
翌朝。
朝の眩しい光が目蓋を刺激してくる。
隣で寝ているはずの子猫に手を伸ばせばもぬけの殻で、まだ覚醒しきれない頭で、ベッドから出た。
寝室から出れば、ガチャガチャと音が聞こえてくる。
音を辿れば、キッチンで何時もと同じ光景なんだが、何処と無しか眠そうな亜耶の横顔が見えた。
そんな亜耶の背後から抱き締め。
「亜耶、おはよう」
挨拶すれば。
「ん、おはよう。ファアアアーア」
挨拶と欠伸も一緒に返ってきた。
かなり眠そうだ。
「やっぱり、眠たいか。今日ぐらい手をぬいもよかったんだぞ」
そう言葉を掛けると。
「だって、学食で食べるの嫌だったんだもん。見世物のパンダみたいになりそうで……」
と返ってきた。
亜耶の言葉に思わず、同感してしまった。
昨日の今日だし、興味本位で近付いてくる奴らも居るだろう……。
仕方ないか……。
亜耶の頭を撫でながら、あることを思い出した。
「そうだな。…でここで委員長にお願いがあるんだが」
俺の言葉に、戸惑いながら。
「なんでしょう?」
と聞き返してくる辺り真面目だなと思った。
「体育祭のメンバーの穴埋めを決めてもらいたいんだが」
俺の言葉が以外だったのか、目が点になってる(こいつ、忘れてたな)。
だが、さっきまで強ばっていた顔付きが緩んだ。
「それは、今日中で宜しいでしょうか、高橋先生」
亜耶が、少しおどけた調子で言う。
「うん。なるべく早目にお願いします」
朝から、亜耶に抱き付いたまま話してると、自然と充ち溢れてくる。
何て思っていたら。
「遥さん。お願いがあります」
亜耶が、突然俺に声を掛けてきた。しかも、お願いとは……。
「亜耶からのお願いって、珍しいなぁ。いいよ、言ってみな」
自分を頼ってくれるのが嬉しくて笑みを溢しながら言えば。
「時間がないので、おかずをお皿に盛ってもらってもいいですか?私は、お弁当の方を仕上げますから」
って、恥ずかしそうにしながら言ってきた。
可愛いなぁ、もう~。
おかずの盛り付けね。
時計に目をやれば、確かにギリギリの時間だ。
「任せて」
オレはそう答え、名残惜しいが亜耶から離れて、おかずを盛っていった。




