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俺の目標…龍哉

お久しぶりです。

今回は、龍哉くん目線です。


相も変わらず、あの人はカッコ良いな。

俺は、あの人を目標にしてるんだ。

口に出しては言えないが……。


「龍哉。あの人…鞠山雅斗さん。滅茶苦茶格好いいな。男の俺でも惚れちまう」

和田が、俺の横に来てそう口にする。

「あぁ。あんな風に堂々と口に出して言えるなんて、真似したくても無理だ」

田中が、そう口にした時。

「俺の昔からの目標の人だから…な」

自然と俺の口から溢れ出ていた。

その言葉を聞いた二人が。

「「昔から?」」

聞き返してきた。

ヤバイ。

そう思うも、二人は俺を怪しげ眼差しで見てくる。

うっ…どう誤魔化すかそれを思案してるところに。

「龍哉ー!」

廊下を大きな声で俺を呼び、駆けてくる梨花の姿が目にはいる。

この時、本当に"助かった"って思った。

だって、追求されることがなくなったんだからな。

俺の傍に来てニコニコしてる梨花の頭を撫でてやる(感謝の意味を込めて)。

そんな俺を不思議そうな顔で見てくる。

"どうしたの?"って、目で訴えてくる梨花に"なんでもない"と首を振って答える。

「それより、亜耶のお兄ちゃんカッコよかったね」

うっとりした顔で梨花に言われれば、ムッとなるのは仕方ないと思う。

好きな娘に他の男性を誉められるのって嫌だと思う。

だって、どうあがいたってその人にはなれやしないのだから……。

「そうそう。あんな風に護ってもらえる亜耶ちゃんが羨ましい~」

加藤が、梨花と同じ顔をして言う。

「えー。付き合うの大変そうだなって思う。あんだけのイケメンだもの、同姓からのやっかみが…ね」

木村が、顔を歪ませて言う。

「「確かに」」

梨花と加藤が、木村の言葉に同意する。

お前ら、どっちなんだよ。

まぁ、あの人には奥さん居るしな。

そう思いながら苦笑する。

女子達の話を聞きながら、時たま相槌を打ちつつ教室に向かう。

「ねぇ、龍哉。亜耶に謝りたいから、一緒に残ってれくれない?」

梨花にしては、珍しいお願いだった。

俺は、思わず頷いていた。

だが、頷いてから、今日の予定を思い浮かべてた。

急ぎの案件はなかった筈だから、大丈夫か。

「僕らも一緒に待っても良いか?」

田中の言葉に驚きはしたが、首を縦に振って頷いた。


教室に入れば、他のクラスメイトは居なくて、俺たちだけが残ってた。

夕日が差し込む窓側の席に各々椅子を引いて座った。


「亜耶のあんな安心しきった顔、初めて見た」

不満そうな顔をして口にする梨花。

「それに、大人に対して、堂々と自分の意思を告げれる亜耶ちゃんが、カッコよく見えた」

加藤が口にする。

俺もそれは、思った。

あんなにも堂々と自分の意見を言えるのって少ないと思うんだよね。

俺は、彼女程強くはない(メンタルの部分においては)。

彼だったら、彼らだったらって何時もその事ばかり気にして、自分の意見なんか言えてない。

そんな事を考えていた時だ。


ガラッ。


教室の戸が勢いよく開いた。

入り口に目をやれば、二人仲良く手を繋いで立っていた。

「亜耶!」

梨花が叫ぶと同時にイスから立ち上がり、慌てて入り口に駆け寄る。

俺も慌てて後を追った。

「亜耶、ごめん。こんな大事になるなんて思ってなかった」

梨花が、勢いよくそれこそガバッて音がするんじゃないかって思う程に、頭を深く下げる。

俺は、それに続くように。

「遥さん、亜耶ちゃん。すみませんでした。俺が梨花(こいつ)に言っておけばこんな事にはならなかった」

梨花の隣に並び、そう告げて頭を下げた。

俺の大切な彼女の不始末は、俺にとっても責任あることだ。

「龍哉、相沢、頭を上げろ。亜耶が狼狽えてる。それに、お前らの所為じゃない。これは、俺たちが決めたことだからな」

遥さんの優しい声にゆっくりと頭をあげれば、そこには一度たりとも見せたこともない穏やかな表情の遥さんがいた。

遥さんは、亜耶ちゃんの頭を片手で撫で回している。

亜耶ちゃんの髪は見る間にグチャグチャになっていく。

その後、手櫛で髪を整えていく遥さん。

何て器用なんだ。俺には到底出来ない。

「二人とも。遥さんの言う通りだよ。二人の所為じゃないし、元を質せば、家のゴタゴタの所為。それに遥さんまで巻き込まれたんだよ」

亜耶ちゃんが、申し訳なさそうな顔をして遥さんんを見ている。って言うか、そんな顔を俺等に見せて欲しくない。何故なら、"何がなんでも護ってやらないと"と思わせる顔付きは、遥さんの前だけにして欲しい。本人は無意識なんだろうけど……。

遥さんは、遥さんでとても愛しそうな眼差しを向けている。本当に彼女の事を溺愛してるんだと思わされるくらいだ。

この二人、俺らの事忘れてるんじゃないかってくらいだ。

「亜耶。俺は巻き込まれたなんてこれっぽっちも思ってないぞ。むしろ自分から好んで巻き込まれたんだよ」

なんだか、甘い雰囲気が漂い始めた。

普段と違う遥さんに戸惑う俺。

ツンツン……。

俺の制服を誰かが引っ張る。

その方を向けば、隣に居る梨花で。

「ねぇ、あの二人って言うか、先生の方が亜耶にベタ惚れ?」

小声で聞いてきた梨花に、縦に頷いて肯定した。

「それにな、亜耶には隠し事なんて不可能なんだ。何時バレルかヒヤヒヤして過ごすよりも、大胆に宣言しておいた方が、安心なんだよ」

何時もの偽笑いではなく、素の笑顔の遥さんに驚かされる。

「遥さんのそんな笑顔、初めて見た」

気付けば、ポツリと呟いていた。

その言葉が他の五人を脅かせることになってるとは、思わなかった。

「当たり前だろ。素の顔なんか、亜耶以外に見せるわけ無いだろ。それよりも、龍哉の方が大変な事になってるぞ」

俺の呟きを聞いて、遥さんがそう口にした。

俺は、慌てて振り返れば。

「龍哉、どういう事?」

梨花が問い詰めてきた。

「えっと……」

一難去って、また一難ってか……。

俺が言葉を選んでる時に。

「お前さ、自分の立場を何時まで隠しておくんだよ。そろそろ話してやればいいだろ。それで、離れていく仲間じゃないだろ」

遥さんが、ニヤリと嫌な笑みを浮かべながら、さらりと爆弾を投下していく。

ちょ…遥さん。

たじろいで居る俺を楽しそうに見ながら。

「それに、俺たち、雅斗を待たせてるから、そろそろ行くな」

って、亜耶ちゃんに鞄を取りに行かせてる。

「観念しろよ。さっきから、俺の事"遥さん"って何度も呼んでるんだよ。」

遥さんが俺の耳許で言う。

その言葉に俺は、覚悟を決めた。

「亜耶。行くぞ」

遥さんが、亜耶ちゃんに声をかける。

「はーい」

嬉しそうな返事が返ってきた。

亜耶ちゃんが、遥さんの隣に立つと、当たり前のように手が繋がれる。

遥さんも優しい笑みを浮かべてて、とても幸せそうだ。

「いいな。あんな幸せそうな顔の亜耶が、羨ましいよ」

俺の横に居た梨花がポツリと漏らした言葉。

確かにな。

俺も首を縦に振って肯定する。

「…で、龍哉。さっきの高橋先生が言ってた事って、何?」

目線を俺に戻し、鋭く睨めつけながら、問い質してくる梨花。

う…、梨花、その目怖いから。

そう思いながら、とうとうこの日が来たんだと観念し、自分の事を話した。









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