真実を伝える…亜耶
朝、カミングアウトしてから、昼までには全校生徒の噂の的になっていた。
他のクラス、先輩方までもが私の事を見にやって来るくらいで…。
見に来るのが、一般生徒とおもしき人達で、こそこそと話しては去っていくって、なんか嫌な感じなんですが…。
どこぞの珍獣にでもなった気分です。
ハァ…。
何で、こんなことに…。
私、何も悪いことしてないのに…。
ただ、遥さんと結婚してるってだけで、白い目で見られなきゃいけないの?
「亜耶ちゃん、ゴメン。梨花のせいで…」
龍哉くんが、申し訳なさそうに言う。
「ううん、気にしないで。龍哉くん、梨花ちゃんに距離置かれてるんでしょ?」
あの後、梨花ちゃんが龍哉くんのところに来ないから…。
私の言葉に龍哉くんが力無く頷く。
「もっと、早く言っておけばよかった」
って、後悔してる。
「大丈夫だって。今は、困惑してるだけで、龍哉くんの気持ちをちゃんと話せばわかってくれるって…」
私は、龍哉くんを励ますように言う。
「そう、かな」
「そうだよ」
私は、安心させるためにも笑顔でそう答えた。
「亜耶ちゃんの方が大変なのにな。俺の心配してくれてありがとな」
って、少し崩れた笑顔が、痛々しかった。
「亜耶、ちょっと…」
そう呼び掛けてきたのは、梨香ちゃんで私は彼女の方に行く。
そのまま教室を出て、空き教室に入った。
そこには、龍哉くんを除く、愛美ちゃん、ユキちゃん、和田くん、田中くんがいた。
「亜耶ちゃんの好きな人って、高橋先生の事だったんだね」
田中くんが、静かな声音で言い出した。
前に話したこと合ったから、覚えててくれたんだね。
「うん。皆にはちゃんと言おうって思ってた。けど、学校側に止められてて、言えなかった。それに私だけの判断で話せるものじゃないし…。だから、昨日、遥さんに聞いてお許しが出たから、話そうと決めてたんだよ」
私がそう言うと。
「ゴメン。私のせいで、クラスの皆に話すことになっちゃったんだね」
眉尻を下げて、今にも泣きそうな顔で謝ってくる梨花ちゃん。
「気にしなくていいよ。遥さんは、最初から話しておこうって言ってたんだから、隠すことで余計な詮索されたくないって、思ってたしね」
私の言葉にホッとした顔を見せる梨花ちゃん。
「全校生徒に私達の事が、尾びれがついて噂になってる事は、悲しいけど、でも真実は朝話したのと前に伝えた事だから…」
私は、言葉尻をつまらせる。
「亜耶が、本当の気持ちを言ってくれて嬉しいよ」
「今度さぁ、女子会しよ。それで、馴れ初め的なものを教えて」
ユキちゃんも愛美ちゃんも明るく言う。
「うん!あっ、私ばかりはなく、ユキちゃん達も教えてよ」
私が言えば。
「「うん」」
って、頷いてくれた。
「…おーい。女子だけで盛り上がるなよ。って言うか、俺達も知りたい」
って、和田くんが口を挟んできた。
えっ…?
う~ん、どうしたらいい?
「だったら、どっかの家に泊まって、話せばいいんじゃないのか?」
田中くんが口にすれば。
「それ、ナイスアイディア。って、誰の家に?」
愛美ちゃんが口にする。
「その話は、後日でもいいんじゃない?」
ユキちゃんがそう言って、話を打ち切った。
「そうだよ。もう授業始まるし、教室もどろ」
和田くんの言葉に四人が出て行く。
教室に残ったのは、梨花ちゃんと私。
「ねぇ、亜耶。龍哉の家って…」
そう、聞こえるか聞こえないかの声で聞いてきた。
「私には、わからないの、ごめんね。龍哉くん、近いうちに梨花ちゃんに話すつもりだったみたいだよ」
私には、そう言うしかなかった。
本当に龍哉くんがどんな家系なのか、知らないし、伝えようがないんだ(遥さんなら知ってると思うけど)。
「そっか…。色々とごめんね、亜耶」
そう言って、梨花ちゃんは教室を出て行った。
大切な皆には、本当の事を伝えれてよかったと心底思った。




