奈津の思惑が…奈津
私は、奈津広美。高校教師をしてます。
これでも、生徒には人気があると自負してる。
出も、出会いがないの。
そんな時だった。
「今日からお世話になります、高橋遥です。宜しくお願いします」
私の好みドンピシャな彼が挨拶していた。
もう、これはアタックしなくちゃって思った。
その日の一時間目が終わって、職員室に戻る途中に高橋先生の姿を捉え。
「高橋先生。今日、時間ありますか?」
彼の腕に自分の腕を絡ませて、胸を押し付けるように掴まる。
うん、先手必勝。
これでもかって、彼に近付いた。
のだが……彼は、私を嫌なものを見るように睨み付けてきた。
それでも、必要以上に引っ付いて笑顔でいた。
「亜耶ちゃん、見ちゃダメ」
と、何処からともなく声がして、そちらに目をやれば、学年一位の鞠山さんと二位の河合くんが居て、二人はとても居づらそうにしている。
鞠山さんの方は、少し顔を青くしてるのが伺える。
どうかしたのかしら?
疑問に思いながらも、視線を追えば高橋先生の方を向いていてさらに疑問を膨らませる。
その隙を付かれて、高橋先生が私の腕を逃れて、その女生徒の方に向かい出す。
「亜耶ちゃん行こ」
男子生徒は、慌てて彼女の腕を引いて行こうとする。
そうそう、子供はさっさと行きなさいよ。
疎ましく思いながら、私も先生の後に続いた。
「亜耶。ちょっと待って」
高橋先生から、思わぬ言葉を聞き驚いた。
だって、生徒の名前を呼び捨てにして、しかも慌ててる感じ。
どういう事?
「高橋先生?」
私が彼に声を掛けると、嫌悪感一杯の彼がこっちを向き、鋭く睨んでくる。
えっ、私何かした?
河合くんだけが、その場から離れて彼は鞠山さんを抱き締めている。
は?何で?こんないい女が居るのにそんなお子さまに抱きついてるの?
わからないんですけど…。
「ちょ、高橋先生。どういうことですか?一人の生徒の名前呼びとは…」
私が訪ねれば。
「だって、亜耶は俺の自慢の奥さんだ。生徒の中でも、一部知ってる奴も居るし、無理して隠す必要はない。まぁ、バレても、俺的には支障がない。困るのは、理事長である伯父だし…。この学校辞めても働く場所は確保できてるしな、亜耶。元々は、普通の会社に勤めてた俺だったから、亜耶との結婚も直ぐできたのに、急に伯父に頼まれたから仕方なく居るだけ。だから、必要以上に近付くの止めてくださいね」
って、口許は笑ってるのに目はいまだに鋭く睨んでくる。
…なっ…今、何て言った。
鞠山さんが、高橋先生の奥さんだぁ。
そんなの認められない。
こんな子供に、私が負けるのか。
そんなの諦められるわけないじゃない。
「え…ちょ…それって、問題が…。第一鞠山さんの親だって…」
そうよ、親が許してくれるわけ…。
「亜耶の親?了承済みだし。言い出したのは、鞠山財閥の元会長直々の言葉だった。それに俺達、九年前から婚約してたから、今更だ」
へっ…鞠山財閥…そんな大企業が何でここで上がってくるの?
九年前から、婚約って…。
う、そ…でしょ…。
彼の言葉に、何も言えなくなる。
「別に他の先生に言っても構いませんよ。あぁ、生徒にも。亜耶は優秀な生徒には変わらないし、俺事態何も痛くない」
堂々と言い切りながら、腕の中に居る彼女を愛しそうな眼差しで見る彼。
私と態度が全然違うじゃない。
「だけど、鞠山さんはどう思ってるの?」
彼に聞いても埒が明かないとわかった私は、彼女の方をつついてみた。何処かにほつれがないかと…だけど。
「どちらにしても、私は政略結婚せざる終えなかったのに、遥さんが一目惚れしてくれたこと、セレブの一員だったから、婚約という形が成り立ったんだと思います。けど、私自身は、遥さんを慕っています。ずっと、傍に居て支えてくれたのが彼ですから…」
顔を少し赤らめて、堂々と口にする彼女は幸せそうだ。
だけど、それは…。
「そんなの許されるはずない」
私は、そう口に出そうとして最後を。
「あるんだよ」
と遮られた。
声の方を見れば理事長が笑みを浮かべていた。
「伯父さん」
「理事長!」
驚いて声を挙げた。
「亜耶ちゃん。結婚おめでとう」
理事長が、ニッコリと笑顔で彼女に言う。
なえなれしく言う理事長に余計に違和感を感じた。
「あ、ありがとうございます」
彼女は、彼の腕の中でそう答える。
とても、幸せそうに…。
何で、彼女だけが優遇されてるの?
何が、違うの?
「次の授業全校自習としておいたから、奈津先生も一度職員室に戻って頂きたい」
そう言って、私を職員室に向かわせる。
二人も一緒だった。
急遽、職員会議が行われた。
それが、二人の事であって、意見は二つに割れた。
古くから居る先生は、高橋先生の事を知ってるみたいで、下の名前で呼んでいる。
それに、彼の事をとても信頼してるみたいだ。
若手の先生が、教育委員会を盾にとって反対していたが、それも理事長によってクリアにされた。
それ以上の反対もなく、二人の事は認められた。
なんか、腑に落ちない。
何で、そこまで待遇されるの?
彼女に何があるの?
不思議だった。
翌日には、理事長に訪問者があった。
チラリと見たその彼もイケメンだった。
古くから居る先生の話を聞けば、彼は鞠山さんのお兄さんで、高橋先生の親友だそうだ。
だけど、疑問に思った。
彼女の事なのに、お兄さんが出てくるって、どういう事なのだろう?
そんな中、一時間目が彼女のクラスで、足を向けてホールルームが終わるのを待っていたが、いっこうに終わる気配がなく教室を伺えば、二人の関係を話していた。
鞠山さんのバックが鞠山財閥なのは、この間知ったが、まさか高橋先生も御曹司だったとは…。
それを知った以上、諦めるわけにはいかないでしょ。
だって、玉の輿だよ。
絶対に振り向かせるんだから!
この想いが、ただの空回りになるなんて…。




