生徒に報告…遥
教室中に悲鳴や、雄叫びが響く。
批難の目が向けられる。
「遥さん…」
亜耶が、不安そうに俺を見てくる。
「大丈夫だから」
俺は、そう言って亜耶の手を握りしめた。
安心してもらうためにも強く握った。
騒ぎが一段落ついたところで俺は、話し出した。
「この学校に来る前に亜耶と結婚したんだ。亜耶の家の都合でな。その後に、理事長っても、俺にとっては伯父だが、"教師の欠員が出たから、見つかるまで穴を埋めて欲しい"とその穴埋めに俺に連絡が来たんだ。断ろうと思ったんだが、亜耶が俺の"教師姿が見たい"って言うから、引き受けた。教師の仕事を引き受けることによって、本業の方を休まなくてはならない。それで、亜耶のお義父さんと相談して、""困ってるなら、助けてあげなさい"と了承を得て、俺は此処に立っている。本来ならば、鞠山財閥の副社長と言う立場なんだが、伯父の頼みを無下に出来ず此処にいる。伯父は、俺たちの事を知らずに頼ってきたんだ。その事を踏まえて考えて欲しい」
俺は、クラスを見渡してゆっくりと伝えた。
「それって、政略結婚ですか?」
何か、含みにある言い方に疑念を覚えたが、俺は。
「端から見れば、そうかもしれないが、違うんだ。俺が一方的に片想いしてたんだよ」
否定をして、想いをそのまま口にした。
周りは、呆然としてる。
仕方の無いことだ。
俺達の出会いは、9年も前なんだから…。
あの時に出会ってから、ずっと俺は片想いしてきたんだ。誰も俺の中に入る余地なんて無いんだ。
「俺から、二つだけ聞きたい。俺と亜耶の事を知ってる者は挙手してくれ」
俺の言葉に龍哉は当たり前のように手を挙げ、他に二人の手が上がった。
相沢は、龍哉が手を挙げたのを見て、驚いてるようだ。
「亜耶の素性を知ってる奴は、どれぐらいいる?」
俺の言葉に、さっきと同じメンバーが手を挙げた。
そっか…、殆ど知らされてないのか…。
まぁ、その方がいいんだろうけど、後々面倒になるだろうから、話しておいた方が、良さそうだな。
「亜耶の素性を話しても?」
俺は、亜耶の方に顔を向けると不安そうな顔をして。
「話さなきゃダメ?」
って、聞き返してきた。
俺は、静かに頷き。
「話しておいた方が、いいんじゃないのか?これからの事を思えば」
その言葉に亜耶が頷き返してきた。
「なら、自分で話すよ」
覚悟を決めた亜耶が、落ち着いた声音で言う。
亜耶が、自分で話すなんて、余程の覚悟がついたのだろう。俺が、亜耶の頭をポンポンと軽く叩きエールを送った。




