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失敗談…亜耶

「亜耶。できたぞ」

遥さんが、リビングに顔を出す。

「う、うん」

私は、ソファーから立ち上がり、ダイニングに足を運ぶ。

テーブルの上には、私が作った肉じゃがをはじめ、マカロニサラダ、豆腐の味噌汁、白米(遥さんの分)それに遥さんが作ってくれた、トロトロ卵のオムライス。ご丁寧に"AYA LOVE"って、ケチャップで文字まで書いてある。

「ほら、冷めちまう前に食べるぞ」

遥さんが、私の肩を押して、座るように促す。

「う、うん」

何時もの席に座ると。

「「いただきます」」

手を合わせてそう言うと、スプーンを手にしてオムライスに差し込む。

遥さんが、じっとこっちを見てるから、食べづらい。

それでも、私はスプーンで掬ったオムライスを口に入れる。

「おいしい!」

私のその言葉を聞いて、遥さんがニッコリと笑う。

「そっか…。美味しいか…。よかった、亜耶の口にあって…」

何処かホッした顔をする遥さん。


あーあ。

何で、この人はここまで完璧にこなしちゃうの。

私なんか、失敗ばかりだっていうのに…。


「どうした、亜耶?」

心配気に聞いてくる遥さん。

そんな遥さんに私は、首を横に振り。

「なんでもない…」

そう答えた。

だって、こればかりはどうしようもないもの…。

今更、過去に戻る事も出来ないし…。

落ち込んでいく私。

「ちょっ、亜耶。見るからに落ち込んでるだろうが。俺が、料理できるのは、独り暮らしが長いからなんだって…」

遥さんが、慌てて言う。

えっ、独り暮らしが長い?

何で?

そういや、私遥さんの事、殆ど知らない。

私が小学生の時には、もう高校生だった遥さん。

出会った時から今までの事は、わかる。その以前の事は何も知らない。

何時か、話してくれるのかな?

何て思っていた。

落ち込み気味の私の隣の椅子に座ると、抱き締めてきた。

「亜耶には、まだ話してなかったな。俺、中学の時から一人暮らししてた。親、姉兄が煩わしくて…」

遥さんが、話し出す。

私が、顔を上げるとそに時の事を思い出したのか、苦しそうな顔をする。

「俺さ。家の重圧に耐えられなくてさ、親や姉兄に反発しまくったあげく、逃げ出したんだ。自分の責任を放棄して…。それから、独り暮らしが始まったんだよ」

遥さんが…。

「最初のうちはさ、惣菜とか買って食べてたんだけどな。味に飽きてきてさ、だったら、自分で作れば、自分の好みの味付けになるって気付いて、作り出したんだよ。だけどさ、失敗ばかりでさ。今日、亜耶が作ってくれた肉じゃがなんか、食べれた物じゃなかった。かといって、そこで諦めるなんて出来なくてさ、必死に覚えた。オムライス(これ)だって、今なら綺麗に作ることできるけど、前は全然ダメでさ。卵を焦がしたり、破いたり、何度も失敗した事か。諺にもあるだろ"失敗は、成功のもと"って。亜耶は、主婦になって、一ヶ月しか経ってないんだ。それに俺、朝にも言っただろ"焦らなくていい"って。亜耶のペースで上手くなってくれれば良いんだ」

遥さんが、優しい手つきで頭を撫でてくれる。

「遥さん。ごめんなさい」

私がそう言うと。

「何に謝ってるの?俺たち夫婦だぞ。出来ないことがあればそれをサポートするのが俺の役目だろ。俺は、亜耶が、無理して体を壊す方が怖いんだよ」

遥さんが、諭すように言う。

「それに、亜耶は頑張ってるよ。俺にとっては、自慢の奥さんなんだからな」

遥さんの言葉が、嬉しかった。

"自慢の奥さん"って、言ってもらえたこと、何れ程効果があるか、遥さんは知らない。

「うん…、ありがとう。私も遥さんが、自慢の旦那様だよ」

って、笑顔で言うと遥さんの顔が見る見るうちに赤く染まっていく。

えっ…。

もしかして、照れてる?

「ちょっ、亜耶。こっち見るな」

遥さんが、慌てて顔を背けた。

「飯。冷めちまうから、食べちまおう」

遥さんの腕が離れて、自分の席に戻ると食べ始める。

そんな遥さんが、可愛いと思いながら遥さんが作ってくれたオムライスを食べ始めた。


食後のデザートは、しっかり頂きました。


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