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教室にて…遥

朝の会議前に伯父に挨拶をしに理事長室に向かう。

ドアにノックして、中に入る。


「遥、悪かったな急に頼んで」

詫び入れる様子はなくそう言う。

確信犯だよね。

伯父は、ソファーに座るように促す。俺は、示されるまま座った。

「ホントですよ。つい先日帰ってきたばかりなのに…」

俺は、声にして出す。

「そう言えば、雅斗くんがそんなこと言ってたな…」

伯父の口から漏れた言葉に引っ掛かりを覚える。

伯父には、何も言わず行ったが、そこで雅斗の名前が出てくるのは、可笑しい。何かあったのか?

俺が、訝しげな顔をしたからだろうか。

「遥。急な願いだったから、お前の願いを聞いてやる」

何か、誤魔化してないか?

まあ、聞かなかった事にして、願いを聞いてもらうか。

「だったら、亜耶の卒業証書を鞠山じゃなく、高橋で、それから、亜耶のクラスの副担任にしてくれ」

二つの事を頼んだ。

伯父から言い出したんだし、一つとは言われてないのだから、それぐらいはいいだろう。

「ちょっと待て。何で鞠山じゃなく、高橋なんだ?」

あれ?雅斗の奴伝えてないのか?

イヤ、お義父母も言ってないみたいだ。

バタバタしてたから、伝え忘れてるんだろう。

「え~と、亜耶は、俺の奥さんになったから?」

やば、自分で言うのも恥ずかしいぜ…。

あっ、俺も家族に言ってないや。

今日、この後姉さんに電話でもしておくか。

「はっ?経緯を教えてくれ」

伯父の眉間に皺が寄る。

「話が、長くなるけど…」

「それでも構わないから、話せ」

伯父が睨んでくる。

俺は、事の経緯を話した。


「はぁ…わかった、そう言う事情なら仕方がない。亜耶ちゃんの生徒登録用紙には、お前の住所を記入しておく。担任には、伝えておくな」

伯父の言葉に思いだし。

「あっ、その住所も変更だから、これが今の住所」

俺は、そう言って住所を書いた紙を取り出し手渡す。

「宜しく伯父さん」

ってな事で、亜耶のクラスの副担任をもぎ取った。



で、今は教室。

集会も終わり自己紹介。

担任の隣に立ち、クラスを見渡す。

知ってる顔が、二・三人居る。

あ、アイツ、俺と亜耶の関係知ってるな。さっきからニタニタしてる。

っと、亜耶は…。窓側の一番後ろの席で、可愛く手を左右に振ってる。

それを見てるとニヤリと笑みが浮かぶ。

「俺の名前は、高橋遥だ。急で悪いが、このクラスの副担任になったので、宜しくな。で、悪いが、顔と名前を一致させたいから、順番に軽い自己紹介してくれ。そっちから」

俺が指したのは、廊下側に座ってる奴だった。


順番に挨拶をしていく生徒達。

時には、自己アピールする奴も居た。

最後。

「た…じゃなくて、鞠山亜耶です。よろしくお願いします」

亜耶が、軽く頭を下げ座る。

おい、亜耶。間違えるなよ。

今は、学校なんだからな。

「高橋先生は、結婚されてるんですか?」

唐突な質問だった。

まぁ、予想はしてたけど…。

「結婚は、最近したんだ。とっても可愛い嫁さんだよ」

俺は、嘘は言いたくないんでね。

その言葉に亜耶の顔が、赤くなり俯いたのを見逃さなかった。

「なんだ、お嫁さん居るんだ」

残念がる声が上がる。

「遥先生って呼んでもいいですか?」

うおっと、それは…。

亜耶の方をチラッと見れば、首を左右に振ってる。

笑みが漏れる。

「悪い。高橋で呼んでくれ」

俺の言葉に亜耶がホッとした顔をする。

「HRは以上だ。直ぐに一時限目が始まるから、準備しろよ」

担任の言葉で、質問は終わった。

「それから、委員長。後で職員室に来てくれ」

「「はい」」

亜耶と、もう一人、(ああ、アイツ)が返事をした。

亜耶は、相変わらず委員長なんだな。

「高橋先生。職員室に戻りますよ」

担任の宮原先生が言う。

名残惜しいが、俺も仕事で来てるんだと割り切るしかない。


俺は、後ろ髪引かれる思いで、教室を後にした。

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