約束…亜耶
教室に戻って自分の席に着けば、龍哉くんが心配そうに私を見てきた。
「大丈夫だった?」
「うん。遥さんとお兄ちゃんが助けてくれた。遥さんに言ってくれたの龍哉くん?」
私が聞けば。
「あ、うん。亜耶ちゃんの事知ってるの俺ぐらいだったから…」
そういや、そうか。
このクラスで、唯一私と遥さんの関係を知ってるのは、龍哉君だけだ。
「ありがとう。お蔭で助かりました」
ペコリと頭を下げる。
「嫌々。お礼を言われる筋合い無いし…。で、あの三人はどうなったの?」
照れながら、話を変える龍哉くん。
「就職先が無くなった…のかな。あ、後、理事長にまで伝わってると思うよ」
私の言葉に龍哉くんが、固まった。
「就職先が無くなった?どう言うこと?」
ん?あっそっか…。
「お兄ちゃんが来て、私が鞠山財閥次期社長の妹だって事をそこでやっとわかったのに、それまで散々と言っていたのが筒抜になってて、お兄ちゃんが"うちの系列には一切入れない"宣言しちゃって、それに続いて、遥さんも同じ事をするって言って、あの三人を受け入れてくれる大企業が無くなったのは、確実かな」
まぁ、あの二人が宣言したことは、確実に成し遂げるから、敵に回したくないよ。
「ご愁傷さまな事で」
龍哉くんが憐れんでいる。
「亜耶、亜耶。なんか、湯川くん(?)が呼んでる」
名前に疑問符がついてますよ、梨花さん。
入り口を見れば、湯川くんがソワソワした感じで立っていた。
何か、あったのかな?
悠磨くんの事はなさそうだし?
「ありがとう、梨花ちゃん」
私は、梨花ちゃんにお礼を言って入り口に向かった。
「どうしたの?」
私がそう声をかければ。
「あの人から聞いたかな?真由が、亜耶ちゃんと遊びたがってるんだけど…。昨日、その事を話したら、近いうちに遊ぶってなったんだけど…」
湯川くんが、不安げな顔で私を見てくる。
「えっと…。それは、聞いてないかな」
それどころじゃなかったし…。
私の言葉に落胆する湯川くん。
「そっか…。昨日、真由にその事を話したら、物凄く喜んでたんだよ。だから…」
あぁ、そういう事か…。
「今度の土曜日って、部活無かったよね。その日にしない?私から、あの人に言っておくから」
私の言葉に湯川くんの顔が、輝いた。
真由ちゃんの為に頑張ってる湯川くんが維持らしくて、そう提案した。
「ありがとう」
「時間と場所は、真由ちゃんにメールしておくね」
「本当。お願いしていい。あいつも喜ぶよ」
湯川くんが、嬉しそうに言う。
「約束が守れて、よかったね」
私が言えば。
「亜耶ちゃんのお陰だよ」
って。
「いや、誰かを喜ばせてあげたい気持ちがわかるからだよ。それがちゃんと伝わってきたから、受けたんだよ湯川くん」
うん、だって私も遥さんに喜んで欲しいから、頑張ってるんだもの。
顔を赤らめた湯川くんは。
「じゃあ、また」
そう言って、自分の教室に戻って行った。




