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厄介事②…雅斗

「顔合わせもしたし、お披露目パーティーの予定も着いた。詳しい話は、後日で良いですか?」

突然遥が言い出した。

ふと時計に目をやった。

午後十時を少し回ったところだ。

「何を、急いで…。あっそういう事か」

俺は、亜耶の方に目を向けてみたが、今日はまだ大丈夫そうだが、これって緊張してるからなんだろう。

「今日は、大丈夫そうだけど早めに切り上げといた方がいいか…」

俺の言葉に両親と遥が頷く。

由華には、まだ話してないから、顔に疑問符が浮かんでる。

後で、説明しないとな。

「詳しいことはこちらで決めておくから…。遥くん、亜耶の事よろしくな」

親父も遥にそう声をかける。

「はい。じゃあ、俺たちはこれで失礼します。亜耶、行くよ」

遥が、まだ理解できていないうちに亜耶の鞄を肩にかけ、亜耶の腕を取り立たせて歩き出した。

亜耶は、戸惑いながらこちらに振り向き。

「お先に失礼します」

挨拶だけはして、遥に連れられるように出ていった。



「ねぇ、何を慌ててたの?」

由華が俺に聞いてきた。

そして、遥の両親も多香子さんも気になったみたいで、俺の方を見てくる。

俺は、両親に顔を向ければ、説明よろしくみたいな顔で、俺を見る。

ハァ、結局俺か…。

まぁ、元々そのつもりだったけどな。

「亜耶の体質の問題です」

俺の言葉に。

「体質?」

四人が声をあげる。

「まぁ、早く言えば幼児体質なんです。これは、年を重ねれば改善されると言われているので、そのうち無くなると思うんですが…。体質の内容は、午後十時以降起きてられないんですよ。今日はまだ緊張してたのか、起きてましたけどね。気が緩んだ瞬間、目蓋が落ちると思いますよ」

俺の言葉に四人が驚いている。

そのせいもあって、パーティーのお披露目も未だ終わってないのだ。

「えっ、それじゃあ、今頃…」

「ええ、俺の推測だと気が抜けて、目蓋が落ちている頃かと…」

今頃、遥大変だろうなぁ…。

ホテル内では、おんぶも抱っこも出来ないだろうし、亜耶を抱えながら駐車場まで運ぶんだからな。

「それなら、その事情を踏まえつつ、二人の婚約パーティーの打ち合わせをするか…」

おじさんが、切り出した。


全てが順調に話しが進み、お開きとなった。

由華は、多香子さんと話しが弾んでるし、互いの両親は、久し振りってこともあって、違うところでの飲み直す話をしてる。

俺一人が、する事がなくて暇をもてあます事になる。

とりあえず、さっき決まったパーティーの詳細を遥にメールした。

「由華。俺、下のラウンジに居るから」

「うん、わかった」

由華の返事を聞いてから、多香子さんに会釈だけしてその場を離れた。


ラウンジで寛いでいたら、声をかけられた。

そちらを見れば、先程の多田専務が似せ笑いを浮かべて立っていた。

余り、関わりたくないんだが…。

「何か?」

さっきとは違い、やたらと笑顔でこちらを伺ってくる。

「雅斗さんは、ご結婚されてるんですか?」

はっ?何言ってるんだ?

遥がダメなら俺ってか?

確かに立場的にも、俺の方が地位が高いが…。

俺は、結婚してるんだが、左の薬指見ればわかるだろうが…。

「大切な妻が居ますが、それがどうかされましたか?」

俺が、怪訝に思いながら尋ねれば。

「離婚する予定は?」

何?

「そんな予定ありませんよ。新婚ですから」

由華は、俺にとっては大切な存在だ。

後ろ楯だけで、結婚した訳じゃない。

俺自身が、由華を愛してるからこそ結婚したんだ。

「雅くん、お待たせ」

由華が、俺に声をかけてきた。

その横には、多香子さんも居る。

「ん。もう、話はいいのか?」

俺が聞けば。

「うん。今度ゆっくり話す時間を作ったから」

由華が、嬉しそうな顔をして言う。

「多田専務。こんな所で何してるんですか?」

多香子さんが、仕事モードで問いただす。

「いや…、その…」

タジタジになる、多田専務。

「俺に由華と別れて、娘を押し付けようとしてたんですよ。遥にも同様な事を言ってましたけど…」

苦笑混じりに俺が言えば。

「へぇ、そうなんですか。あなたは、節操と言うものを知らないんですか?あなたの娘さんじゃ、鞠山家の後継になれるわけ無いじゃないですか。あんなバカ娘ではね」

多香子さんが、毒を吐いた。

「彼女だって、バカっぽいじゃないですか」

目の前の男は、由華をジロジロ見て言う。

由華をバカだって。

こいつ、見た目で判断しすぎだ。

「はっ?あたし、バカじゃありませんよ。それに、あたしの後ろ楯は、政界の沢口です」

由華は、自分で反論しだす。

自分で言うなよ。って、無理か。

男は、その言葉に絶句する。

はぁ…。

「人の嫁をバカにするのやめてくれませんか?自分の娘を金蔓のところに嫁がせようなんて、思わない方がいいですよ。それ相応の相手の方が、娘さんの為になると思います」

俺が、立ち上がると由華の肩を抱いた。

俺の言葉に項垂れている男。

どんな娘か知らないが、多香子さんがバカだって言うんだから、そうなんだろう。学歴がともわなければ、亜耶とも話が合うわけ無い。

「それでは、失礼します」

それだけ告げて、出口に向けて歩き出した。


奴からかなり離れたところで。

「雅斗くん、由華ちゃん。不快な思いをさせてごめんなさい。あの人、仕事はできるのに娘には、甘々だから、少しでも楽させようと地位の高い人材を探してるの」

多香子さんが、目を伏せて申し訳なさそうに言う。

「親心としてはわかりますが、亜耶に対しての偏見な意見を言われたこっちからしたら、不愉快ですよ。遥が九年もの片想いをやっと脱却して、夫婦としてスタートしてるのにあんな事言われたら、亜耶だって遥だって嫌な思いをするだけです」

遥が遥らしく、亜耶が亜耶らしく居られる場所を取り上げようとしてるのは、いただけない。

ましてや、遥が唯一安らげる場所を取ろうとするのは、もっとダメだ。

「彼には、何らかの処罰を与えておくわ」

多香子さんが、目を伏せてそう言う。

「お願いしますね。では、我々はこれで」

俺は、由華の肩を抱き抱えながら、車に移動した。



翌日。

学校に報告を兼ねて外回りをしていた。

今回、全てが後回しになってるよなぁ。

何て思っていたら、携帯が鳴った。

画面を見れば、遥からだった。

「おう、遥。どうした。っていうか今近くに居るんだが…」

そう言えば。

『亜耶が、昨日の生徒に呼び出しくらった。近くに居るなら、直ぐに来てくれ』

用件だけ言って、電話を切りやがった。

はっ、亜耶が呼び出し…。

それは、不味い事になった。

呼び出された場所は…。

あそこしか、ないか…。

俺は、学校に向かって走り出した。


俺が目星を付けた場所に亜耶と遥、それと三人の女子生徒が居た。

何やら揉めてるらしいが、そんなの俺には関係なかった。

そして、如何にもあっちこっち探し回ったような振りをして、息を切らせ。

「遥。呼び出すのはいいが、場所ぐらい指定しておけよ。校内中探しただろ」

遥に近付きながら、三人の様子を伺った。。

「悪いな、雅斗。やっぱりさ、雅斗に直接会った方が、こいつらも信じるかと思ってさ」

何て、遥が言う。

俺の事は、知ってるみたいだな。

…が、亜耶と俺の繋がりがわかってないんだなとわかる。

「お兄ちゃん。ごめんなさい」

亜耶が、いいタイミングで謝ってきた。

これが決め手で、俺達が兄妹だとわかっただろう。

「亜耶が、謝る必要ないだろう。この三人が馬鹿な上に性格ブスなのがいけないんだろう。まぁ、三人の面が割れたし、うちの系列には、一切就職できないようにしておくな。紹介状があってもな」

アホ面をした三人が、俺を見てくる。

こいつら、全然可愛くない。心内が顔に出てて、可愛さなんて、一欠片も無い。

って言うか、まだ気付かないのか?

就職先が無くなってる事に…。

「理不尽すぎる」

やっとの事で、リーダー各の子が声をあげ、二人も頷く。

「当然の報いだと思うが。何せ、鞠山家の宝に牙を向けたんだからな」

真顔で睨み付ける。

「亜耶は、うちの大事な姫なんだ。誰よりも切れ者で、信頼性のある人物だ」

亜耶の一言で、大きく変わる時があるくらいだからな。

「大事な姫を侮辱したとあっては、それぐらい当然の報いさ」

俺の言葉に三人が顔を青くする。

ふん、何処までも馬鹿な奴等。

「あっ、俺の方も就職できないようにしておくわ」

思い出したかのように言う遥。

まぁ、そうだろうな。

って、この三人、遥の事見てくれしか知らないんだろう。

遥の言葉にポカンとしてるし…。

「うち、ホテル経営してる。その系列での就職も無くすことも簡単だ」

あーあ。遥の言葉に青を通り越して白くなってる。

「それから、理事長にもこの件は話しておくから」

最後の止めの一言を突きつけた。

三人は何も言えなくて、俯く。

「わかったら、金輪際亜耶に近付くな!」

遥が、決め台詞を言ったかと思えば、三人は逃げるように去って行った。


「遥。一緒に理事長室に行くぞ」

俺は、遥を道連れにしようとした。

「はっ?」

遥が、戸惑ってる。

そうだろうな。何しに来たかは、伝えてないし。

「あの三人の名前と写真をな」

これは、建前だ。

誰が聞いてるかわからないから…。

「ん?それなら、もう終わった」

遥が、何でもないように言う。

「相変わらず、早いな。まぁ、理事長に挨拶だけして、仕事に戻るわ」

遥の肩を軽く叩く。

「亜耶も教室に戻れよ」

俺は、笑顔で言えば。

「うん」

素直に頷いて、歩いて行く。


「なぁ、今日来たのって、あの三人の事、亜耶と俺の事を理事長に報告する為だろ」

横を歩いていた遥が、俺に聞いてきた。

「元々、昨日遥に言われた時親父が説明しに来るつもりだったんだ。だが、時間が取れずに今日から出張で来れないから、俺が今日時間を作って、理事長に説明しに来たんだ。そのついでに昨日足止めした生徒を見ようかとな」

俺は、今日来た理由を告げた。

本当は、籍を入れた時に来なければいけなかったんだがな。それは、こっちのミスだ。

「それで、近くに居るって言ったんか…。でも、本当タイミングよく現れたな」

遥が、感嘆してる。

「まぁな。しかし、こんな格好で全力疾走するとは、思わなかった」

この年で、スーツで走るとは思ってもみなかった。

何て思ってたら。

「なぁ、俺。やっぱり教師やめた方がいいのか」

遥が突然言い出した。

やたらと落ち込んでるが。

「何。珍しく弱気だな。俺は、どちらでも構わないんだ。出社してきたら、女性社員に言い寄られるのは、目に見えてるからな。今だけ、亜耶との学校の思い出た作りするのもいいんじゃないか。嫌でも、副社長の肩書きがついて回るんだからな」

学校を辞めて、会社復帰したら副社長という肩書きに目を眩ませた女性社員が、遥に言い寄っていくのは目に見えてる。それに加え、容姿も整っているから余計に来るだろうよ。

ここに居る間は、職員からの言い寄られても理事長が釘刺してるだろうから、下手な事出来ないし、生徒も頭の回転が悪くなきゃ、余程じゃない限り大丈夫だろう。

それに年が離れてる二人だから、学校での接触なんて普通なら出来ないのだが、先生と生徒という形でも学校での思い出も作れるだろう。

そんな思いで、そう告げたのだ。

「もう少し、頑張るかな」

俺の言葉に、遥が考え口にした答えだ。

「それでこそ、遥だ」

俺は、何時もの遥に戻った事に安堵した。

そんな俺に怪訝そうな顔を向ける遥。

「ほら、理事長室に着いた。中に入って話そう」

俺は、話を変えて、理事長室のドアをノックした。

中から、理事長の返事が返ってきて、中に入った。


そして、亜耶と遥の婚姻報告が遅れた事、その経緯を話しそれから、亜耶を呼び出した生徒三人の事とその処罰を話して、部屋を出た。


「じゃあな。もう少しだけ、ゆっくりしとけ。嫌でも忙しくなるから…」

俺は、遥にそれだけ言って、学校を後にした。








雅斗目線での話は、ここまでです。


っても、また違うところで出てくるかも…。

由華さん目線ってのもありですね。

ちょっと、考えてみますね(^-^)


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