教師としてスタート…遥
ハァー。
「遥さん、どうかしたの?」
亜耶が、俺の隣に座り顔を覗き込んできた。
引っ越し作業も無事に終わり、ホッとしたのも束の間。
伯父の電話で、また頭を抱える事にるとはなぁ。
「ん…。理事長が、教師に欠員が出たからって、穴埋めに俺に頼んできた。取り合えず、お義父さんに相談しないと何とも言えないから、保留にはしてるけど、多分やることになるだろうな」
俺は、そう答えるしかなかった。
そんな俺に亜耶が。
「仕方ないよ。理事長は、遥さんにとって伯父さんだもの。私は、遥さんの教師姿見れるなら、嬉しいよ」
ニッコリと笑って言う亜耶。
「そう言ってくれると照れるけどな」
亜耶が喜んでくれてるのなら、受けるか。
「そっか…。お義父さんが承諾したら、教師するか…」
俺は、亜耶の頭を撫でる。
亜耶の学校での様子も見れるし、何て気軽に思ってた俺だった。
お義父さんと話し合った結果“人手が足りないのなら、助けてあげなさい”だった。
俺が、会社に戻るまでは、会長と社長を兼任すると言ってくれた。
で、九月下旬。
俺は、亜耶の学校の体育館ステージに立った。
「中途であるが、新任の先生を紹介する。高橋くん」
呼び掛けられて、伯父の元に行く。
伯父から名字を君呼びされるとは、思ってもみなかったが…。
「「キャー、かっこいい!!」」
「「あの人って……」」
二通りの声が上がる。
そういや、九月の頭に亜耶とラブシーンしてたっけ…。
気付いたの、何人居るんだ?
おっと、そうだ亜耶は、何処だ?
俺は、一年生が並んでいるであろう場所で亜耶を探す。
おっ居た。
小さく手を振ってる。
あーもう、可愛いぜ。
「こら、遥。挨拶しろ」
伯父が耳元で言ってくる。
おっと、亜耶を探すのに気がいってた。挨拶ね。
「え~。本日からお世話になります、高橋遥と言います。教科は、化学です。宜しくお願いします」
それだけ言って、軽く頭を下げた。
「「キャー、声もいい」」
とか、何がいいんだか…。
俺は、亜耶さえいればいいのに…。
「高橋先生には、一年E組の副担任に就いてもらいます」
何て、伯父が言う。
そう、これは話し合った結果だ。