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厄介事①…雅斗

雅斗目線です。

「雅斗、おはよう」

突然、俺の所に来た親父。

「おはようございます。で、朝からどうしたんですか?」

親父が、浮かない顔をしてるから、何かあったのかと心配になって聞いてみた。

「さっき、遥くんから電話があってな、亜耶と遥くんのご家族との顔合わせさせて無かったのと、学校に婚姻の報告するの忘れてたんだよ」

親父の言葉に、俺も誰にも言わなかった事を思い出した。

「俺から、遥の実家に連絡しましょうか?」

俺が聞けば。

「遥くんのお姉さんから、電話が来ると思うからその時は、頼む。僕は、今日一日外回りだから」

と親父が言う。

「わかりました。時間とか決まりましたら、メール入れておきます」

「ああ、頼むな」

親父は、それだけ言うと部屋を出ていった。

あの姉さんと話すのか…。

まぁ、仕方ないか…。

こっちの落ち度だしな。

『副社長、一番に高橋カンパニー様からお電話が入ってます』

と、内線が入る。

俺は直ぐに受話器を取り対応する。

「お待たせしました、鞠山雅斗です」

『久し振りね、雅斗くん。で、早速本題に入るけど、遥が雅斗くんの妹の亜耶ちゃんと婚姻したって、本当?』

本当、この人直球しか投げてこないなぁ。

「本当です。こちらの都合で、婚約発表も無しで、亜耶の誕生日に婚姻届けを出してしまったこと、お詫びします。すみませんでした」

俺は、つい頭を下げてしまった。

『そう、本当なのね。前から遥には聞いてたのだけどね。で、顔合わせはどうする?』

直球だけど、直ぐに受け入れてくれるこの人は、好きです。

「うちの父は、今日しか空いてないんですが、そちらの都合は?」

俺の言葉に。

『うちは、両親と私だけ出席するわ。弟たちもとなると、騒がしいだけになってしまうからね。それと、この間の事のお詫びも兼ねて、うちの三ツ星ホテルで十九時でどう?』

多香子さんが、提案してくれた。

お詫びって、あの件(何処ぞの令嬢が、突撃してきた)だよな。

「わかりました。それでは、後程」

俺は、それだけ言って電話をきって、親父と遥、由華にメールした。



待ち合わせの場所のホテルのロビーに俺は来ていた。

十九時十分前には、両親と由華が到着した。

が、当事者達が、まだ来ない。

時間厳守のアイツが、遅れるなんてあり得ないんだが…。

「雅斗くん」

背後から声をかけられて、振り返れば、多香子さんとご両親が居た。

「お久し振りです。おじさん、おばさん」

俺は、そう声をかけた。

「久し振りだな。元気そうで何よりだ」

ニコヤカな笑顔で挨拶された。

「ご無沙汰してます、孝幸さん」

おばさんが、言う。

「本当に。今回は、こちらの不手際で申し訳ないと思ってます」

母さんが、頭を下げた。

「いえいえ、前々から遥からは聞いてたので、その点は大丈夫です。大切な娘さんを遥がもらったと聞いた時は、ビックリしましたけどね。亜耶ちゃんが、遥で良いかだけですから」

おじさんが、真顔で言う。

両親が、互いに挨拶してる時に俺の携帯が鳴った。

「ちょっと、失礼します」

俺は、一言断って、その場から離れた。


「もしもし」

俺が出れば。

『お兄ちゃん?ごめん。学校を出る時にトラブって、少し遅れそう』

亜耶が、申し訳なさそうな声で言ってきた。

学校を…って、あぁ、今日からだったか…。

って事は、遥が生徒に絡まれたのか…。

「そうか。まぁ、遅れるのは仕方ないが、安全運転で来いよって、遥に伝えてくれ」

『…うん、わかった。そう伝えておく。じゃあ、また後で』

それだけ言って、電話が切れた。

俺は、元の場所に戻って。

「亜耶たち、遅れるって」

そう両親達に伝えれば。

「そうか。先に場所を移動してますか」

そう言って、エレベーターホールに向かうなか、由華と多香子さんが楽しそうに話してる。

まぁ、この二人は直ぐ仲良くなると思ってた。

「雅斗。遅れる理由は聞いたか?」

親父が小声で聞いてきた。

「なんか、トラブルがあって出るのが遅くなったって言ってた」

亜耶が伝えてきた言葉をそのまま伝えた。

「なるほどな。彼なら仕方ない事なのかもな」

親父が納得気に頷いていた。


展望レストランの窓側の個室を貸切りにしていた。

夜景が綺麗な場所だ。

流石、多香子さんだ。

「料理は、二人が来てからで、先に飲みましょう」

おばさんがそう言うとそれぞれに飲み物が注がれる。

俺は、車出来ているから断った。


うちの親と遥の親は、昔から仲が良いんだよな。

高校、大学での先輩・後輩だとか言ってたっけ…。

その事は、亜耶は知らないんだよな。

うちの親は、ずっと隠したがってたし…。

「そろそろ着くと思うので、迎えに行ってきます」

俺は、それだけ告げて席を立った。


エレベーターに乗り込み一階に着くと何だか、変な空気が漂ってきた。

そんな中に俺は、入って行く。

「遥、亜耶。遅いぞ」

と声をかける。

二人の後ろに見知らぬ男が立ってはいたが、無視に限るな。

「雅斗…」

遥の顔が、来てくれて助かったって顔をしてる。

あぁ、また何か言われたんだろう。

しかも、亜耶まで巻き込んでか…。

さっきから後ろの男が、亜耶の事を訝しげに見てるし、俺が現れた途端、驚愕してる。

こいつ、俺と遥が繋がってるって事知らなかったんだろうな。それに亜耶の事もな。

まぁ、社交界デビューを未だしてない亜耶が、何処の令嬢かわかってないって事だよな。

「悪いな。学校を出ようとしたら、生徒に捕まってな」

遥が、遅れた理由を言い出す。

まぁ、予想出来た事だし、それはいいんだ。

「そうか。今日からだったか。教師の仕事。まぁ、仕方ないか。亜耶との事で何かあったんだろう。気にするな」

亜耶の事も関係してるだろうな。

しかし、後ろの男、さっきから落ち着かないのか、そわそわし過ぎじゃないのか?

遥に対してか?…イヤ、亜耶に対して何か言ったんだろうな。

仕方がない、俺から仕掛けるか。

「…で、さっきから顔を青くしている後ろの方は?」

俺は、目線だけを向ける。

これ、他の人には怖いって言われてるんだよなぁ。

まぁ、真顔で、射ぬく様に見れば仕方ないか…。

「あぁ、うちの系列で働いてる、多田専務」

遥が、面倒臭そうに言い出す。

そうたいした相手ではないって事か…。

「そう。お初にお目にかかります、鞠山雅斗と申します。以後お見知りおきを」

俺は、そう言って頭を下げた。

俺は、業と会社名を伏せた。

何故かって、それは今はプライベートの時間だし、会社の事で此所に居るわけではないから…。

「ここの系列の専務をしてます、多田康彦と申します。こちらこそ宜しくお願いします」

似非笑いを浮かべて、挨拶されてもな。

俺は、もう関わりたくない人だ。

俺は、そいつの存在を消して亜耶に。

「亜耶。今日一日、大変だったんじゃないか?」

と話しを振った。

案の定奴が食らい付いた(細い目を見開いて)。

「うん。遥さん、凄くモテるんだもん。それに、お兄ちゃんが言ってたブラックな遥さん、始めて見たよ」

亜耶が、普通に俺に言葉を返してきた。とても楽しそうだ。

ほう…、ブラック遥が降臨したか。

亜耶の前では、絶対見せない姿を見せたとは、これはからかう要素が増えたな。

楽しくなりそうだ。

「おにい…ちゃん」

ポツリと声が聞こえる。

亜耶とは違う野太い声。

そっちに目をやれば、さっきの不愉快な男が呟いた声だった。

何だ、まだ居たのか。

仕方ねえなぁ。

「えぇ。亜耶は、私の実の妹ですが、どうかしましたか」

俺は、睨み付けながらそう言葉を放つ。

その言葉に顔面蒼白になっていく。

「いいえ、別に…」

何か、やましい事でも言ったのか?

俺は、ふと考えた。

遥が、亜耶を妻として紹介したのなら、降りた時の空気に納得がいく。

って事は、俺が言えば丸く納まるのか。

なら、俺が取る行動は一つだな。

「あぁ。亜耶が、遥の妻ってことに納得がいってないんですね。亜耶は、高校生ですからね。年齢で釣り合いが取れてないって思ったんですね。ですが、当人同士も好きあっていますし、何より鞠山財閥の元会長が認めたとなれば、話は別でしょう。それに、この二人は約九年間、婚約者フィアンセでしたからね。頃合いだと思いますが」

俺の口から、するすると言葉が出てくる。

これだけ言えば、遥の事諦めるだろう。

「それより、二人とも、皆待ってるから行くぞ」

俺は、踵を返して、エレベーターのボタンを押す。

辛うじて止まっていたそれに乗り込んだ。

「多田さんは、乗らないのですか?」

遥が、冷静に奴に言葉を投げ掛けた。

「いえ、私は他に用を思い出しましたので、これで失礼します」

多田さんが、慌てて逃げていった。

何だ?

まぁいいか。


俺が、気にもせずにボタンを押して扉を閉めた。








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