解決?…亜耶
本日2話目です。
前話からお読みくださいませ。
何時ものように登校する。
教室に向かう間にも昨日の事が、噂になってないか魚籠つきながら、廊下を歩く。が、何一つ噂が立ってなくて、不思議に思いながら、午前の授業が終わった。
いつものメンバーで、お昼御飯を食べて、話していたら。
「鞠山さんっている?」
教室の入り口に昨日の三人の先輩の姿。
他のクラスメートも不思議そうな顔をして、私達の間を交互に見てる。
「亜耶ちゃん。気を付けて。あの三人、有ること無いことを吹きまくってるから」
龍哉くんが、小声で教えてくれた。
「うん。ありがとう」
龍哉くんにお礼を言って、三人のところへ行った。
「ちょっといい」
「はい」
私は、黙って三人の後について行った。
辿り着いた場所は、体育館裏。
「それで、何の用でしょうか?」
私が聞けば。
「高橋先生と別れなさい。じゃないと全校生徒に有ること無いこと吹き込むわよ」
真ん中に立つリーダーが、そんな事を言ってきた。
今日の朝の時点で言ってないって事は、私を脅せば別れるとでも思ってたんだろう。
頭、悪いなぁ。
まぁいいか、今から知らしめれば。
「昨日も遥さん、言いましたよね。全校生徒に触れ回っても構わないって。その理由も分かってないみたいですけどね」
私は、嘲笑う様にクスリと笑みを見せると不快に感じたのか。
「何笑ってるのよ。弱味は、こっちが握ってるのよ!」
って、言ってきた。
今更だよね。大抵は、私の苗字でわかるだろうに…。
「あなた達が楯突いてるって事は、私の後ろ楯にも気付いてないんでしょ?教えてあげる。私は、鞠山財閥の一人娘です。まぁ、信じられないだろうけど…。それに、遥さんはこの学校を何時でも辞められるんですよ。遥さんに非難が及ぶ事もない。私が非難を受ける事も。全部、噂をばら蒔いていく貴女達に向かうだけです」
私は、三人が解るように言う。
三人は、まだ解ってないようだけど、大抵の人なら解ると思うんだけど…。
「あなたの言葉を信じるわけないでしょ。たかが一生徒でしかないんだから、さ」
って言葉で返された。
頭の良い一般生徒でも、これぐらい解ると思うんだけどなぁ。
「あっそ。じゃあ、遥さんに辞めてもらうとしましょう。元々乗り気じゃなかった仕事みたいだし、私が言えば、直ぐ辞めると思うよ。ね、遥さん。そこに居るんでしょ?」
私が問い質せば。
「亜耶には、叶わないな」
苦笑交じりで、校舎の影から出てくる。
三人は、驚いた顔をして遥さんを見る。
「遥さん。この人達、信じてくれないんだよ。私の言い方、難しかったのかなぁ」
私の言葉に。
「ううん。わかりやすかったよ。ただ、この三人が理解できなかったんだろ?」
蔑む言葉を遥さんが言う。
「俺達の噂をばら蒔いても、誰も信じないだろうなぁ。この学校、財界・政界の子息、令嬢が多く通ってる。しかも、財閥のトップである、鞠山家を敵に廻す人材なんて、居ないだろ。逆にお近づきになりたい人材は、巨万といるだろうけど…。一般生徒もバカじゃない。より良いところへ就職したいなら、そんな噂なんか信じる訳無いだろ」
遥さんが、ゆっくりとこちらに足を進めてくる。
「それに、俺達が夫婦だって触れ回っても、セレブではやっとかって思われるだけ、一般生徒内だと君たちみたいに思う奴等も居るだろうが、亜耶の後ろ楯が大きいから口にしないだろうな」
遥さんが、ニッコリと口許を緩めながら、目で三人を威嚇してる。
遥さん、それ脅してるよね。
って、先に口にしたの私だけど…。
三人は、まだポカンとしたままだ。
「遥。呼び出すのは良いが、場所ぐらい指定しておけよ。校内中探しただろう」
聞きなれた声が、聞こえてきた。
「悪いな、雅斗。やっぱりさ、雅斗に直に会った方がこいつらも信じるかもと思ってさ」
遥さんが、苦笑しながら顎で指す。
突然のお兄ちゃんの登場で、さらに呆然としてる三人。
それもそうだろうね。若くして、社長の座に就くであろうお兄ちゃんが、目の前に居るんだから…。
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
私が謝ると、溜め息を付きながら。
「亜耶が、謝る必要ないだろう。この三人が馬鹿な上に性格ブスなのがいけないんだろ。まぁ、三人の面が割れたし、うちの系列には一切就職できない様にしておくよ。紹介状があってもな」
お兄ちゃんの辛痛な言葉に、三人がやっとわかったって顔を悪くしていく。
私に甘いお兄ちゃん。
「理不尽すぎる!」
と声を荒げる三人に対して。
「当然の報いだと思うが。何せ、鞠山家の宝に牙を向けたんだからな」
嘲笑うお兄ちゃん。
三人が、まだお兄ちゃんの言葉を飲み込むことができずに居る。
「亜耶は、うちの大事な姫なんだ。誰よりも切れ者で、信頼性のある人物だ」
あれ?私、そんな中心に居るなんて、思ってなかった。
「大事な姫を侮辱したとあっては、それぐらい当然の報いさ」
お兄ちゃんの言葉にタジタジな三人。
「あっ、俺の方も就職できないようにしておくわ」
遥さんが、思い出したように言う。
その言葉に、三人ともキョトンとした顔をする。
「うち、ホテル経営してるんだ。その系列での就職を無くすことも簡単だ」
遥さんの新たな提示に困惑し出す。
「それから、理事長にもこの件は話しておくから」
お兄ちゃんから、新たな脅しをかけられて、青を通り越して白くなってる。
この二人にかかれば、最強だね。
二人とも、口が立つし…。
「わかったら、金輪際亜耶に近付くな!」
遥さんの言葉に三人が、逃げていった。
「遥。一緒に理事長室に行くぞ」
「は?」
「あの三人の名前と写真をな」
お兄ちゃん、それは個人情報保護法に違反するのでは?
「ん?それならもう終わった」
遥さんが、淡々と告げる。
「相変わらず早いな。まあ、理事長に挨拶だけして、仕事に戻るわ」
お兄ちゃんが、苦笑しながら遥さんの肩を叩く。
「亜耶も教室に戻れよ」
お兄ちゃんが、ニッコリしながら言う。
「うん」
私は笑顔を返して、教室に向かって歩き出した。




