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ホンの一時の時間…遥

デザートも食べ終わったし、時間的に亜耶が持たないかと思い。

「顔合わせもすんだし、御披露目パーティーの予定もついた。詳しい話しは、後日でいいですか?」

俺は、亜耶の両親と雅斗に目を向けてそう言った。

うちの両親と姉、雅斗の嫁がキョトンとした顔をする。

「なに、急いで…。あっ、そういう事か」

雅斗の言葉に亜耶の両親も気付いた。

亜耶自信は、未だ気付いていないみたいだが…な。

「今日は、未だ大丈夫そうだけど、早めに切り上げた方がいいか…」

雅斗は、一瞬だけ亜耶に目を向けて、そう言う。

お義父さんも頷き。

「詳しい事は、こっちで決めておくから…。遥くん、亜耶の事宜しくな」

そう言って、目で行きなさいと言っている。

「はい。じゃあ、俺達はこれで失礼します。亜耶、行くよ」

俺は、亜耶の鞄を肩に担ぎ、亜耶の腕を捕り立ち上がらせた。

亜耶が、戸惑いながら俺を見上げてきた。

「ほら…」

今は、気が張ってるから眠気はないんだろうけど、時間的には何時落ちてもおかしくないんだ。

俺は、なかば強引に引っ張っていく。

「お先に失礼します」

亜耶が、振り返り挨拶する。

うちの両親と姉、それから雅斗の嫁が唖然としてる。

うん、そのうち話せばいいか…。

今は、早く帰って寝かせないと…。


「よかったんですか?」

亜耶が心配そうに聞いてきた。

っていうか、未だ大丈夫なのか?

「ん、いいんだ。両親と姉さんに亜耶を会わせておきたかっただけだから…」

とにかく、車まで無事に着けば後は、寝てても俺が運べばいいだけだ(亜耶は、人前でお姫様抱っこを嫌うからな)。

そう思いながら、足早に基の道を進んでいたのだが。

「はるかさ…ん」

亜耶が呼ぶから、俺は亜耶の顔を覗き込む。

やばい。

亜耶の目が、トロンとなってて今にも眠りそうだ。

「ちょ…亜耶。もう少しで車に着くから、我慢してくれ…」

俺は、亜耶にそう声をかけて腰に腕を回す。

亜耶は、亜耶で俺の体に腕を回してきた。

「ん…頑張る」

これ、何かの拷問ですか?

俺は、可愛くて仕方の無い奥さんをしっかりと抱き込みながら、車に急いだ。


どうにか支えて車に辿り着くと助手席のドアを開けて。

「ほら、乗って…」

亜耶を座らせ、鞄を足元に置きドアを閉めた。

運転席側に回り乗り込むと、亜耶のシートベルトをする。

「亜耶、お疲れ様。もう寝ていいよ」

俺は、亜耶の頭を撫でながらそう言うと、ゆっくりと瞼を閉じて眠りについた。


ハァー。

ギリギリだったな。

今日一日緊張しっぱなしだったからな。

ゆっくり寝て欲しい。

俺は、車をゆっくりと発進させた。



マンションの駐車場に車を入れて、エンジンを切る。

車を降りると助手席に回り込み、亜耶の鞄を肩に掛けて、お姫様抱っこをしてドアを閉めた。

よく眠ってる。

キーレスで車をロックするとゆっくりと足を進めて、部屋に戻った。


靴を脱がし、寝室に入るとベッドに寝かせた。

本当は、制服を脱がして着替えさせた方がいいんだろうが、やっぱり、年頃の女の子の服を脱がすのは気が引けてそのまま寝かせた。

俺は、寝室を後にしてリビングに足を向けた。

ソファーに座り、ネクタイを緩めた。

暗がりの中、今日の事を思い出し、明日、亜耶に何かあったらその時は、自分が盾になる覚悟をした。あの三人は、必ず亜耶に何か仕掛けてくるだろうと、そう思えたから。


それから、シャワーだけ浴びて亜耶の眠るベッドに潜り込んだ。



翌朝。

あるはずの温もりを手で探し、見つからずに目が覚めた。

もう、朝か…。

俺は、欠伸をしながら寝室を出た。

何やら、美味しそうな匂いがキッチンからしてくる。俺は、それに釣られて足を向ける。最初は不馴れで、色んな物を焦がして、失敗して落ち込んでたけど…。

そこには、亜耶の手作りの朝食が並んでいた。

「おはよう、亜耶」

俺は、そっと背後から亜耶を抱き締めた。

俺の声に首だけをこちらに向けて。

「おはようございます、遥さん」

挨拶を返してくれた。

そして、ゆっくりと俺の頭に手を伸ばしてくる。

「どうした?」

「髪、跳ねてるよ」

って、クスクス笑いながら言う。

何だ髪か…。別にそれぐらいなんともない。

「そう。後で直すからいいよ。今は、こうしていたい」

うん、俺の気力の充電をしないとな。

亜耶が、耳を赤くしながら。

「朝御飯食べよう。遅刻しちゃうよ」

照れ隠しのように言う。

もう、本当に可愛いよ、家の奥さんは。

「ん、そうだな」

流石に遅刻は不味いから、俺も一緒に準備する。

席に着くと。

「「頂きます」」

二人で手を合わせて合掌する。

俺は、一口目を食べる。

亜耶が、俺の方をじっと見てくる。

ん、旨い。それしか浮かばなかった。

「亜耶。日が経つに連れて、料理の腕上がっていくな。旨いよ」

それも、俺の好みの味付けになってきてる。

俺の言葉に嬉しそうに笑ってる。

何かいいな、こういうのんびり出来る朝って。

「ありがとう。もっと、頑張るからね」

亜耶の言葉に。

「頑張り過ぎるなよ。もっと、力抜きな。亜耶の本業は、学業だからな」

そう俺は言葉にしていた。

亜耶の今の仕事は、勉学であって家事ではない。

少しずつ成長していけばいいんだ。

亜耶は、人に頼る事を苦手としてる。

そのくせ、人に頼まれると嫌と言えない性格だ。

だから、せめて俺の前だけでもいいから、気を抜いて頼って欲しいんだよ。

亜耶の目を見れば、うっすらと涙の膜が出来てる。

「う…うん」

その返事を聞くと俺は、ほっとする。

「出来ない事は、出来ないでいいんだよ。ゆっくり出来るようになればいいんだからな」

俺は、亜耶の頭に手を伸ばして、ポンポンと叩く。

ゆっくりでいいんだ。

その言葉に頷く亜耶。

その後、たわいのない話をしながら朝食を済ませた。


身仕度(跳ねてた髪も直した)を整えて、玄関に向かう。

「遥さん、これ…」

亜耶が、後を追ってきて、渡してきたのが弁当だとわかった。

えっ…。

一瞬驚いた。まさかって…。

「おっ、ありがとう亜耶」

準備してくれてたなんて、思ってもみなかった。

一体、何時に起きたんだよ。

俺は、亜耶を抱き寄せムギュッと自分の腕に閉じ込めた。

あっ、もう…嬉しすぎる。

「俺、先に行くな。亜耶も遅刻しないようにな」

「うん。気を付けてね」

「あぁ、行ってくるよ。亜耶も気を付けるんだよ」

名残惜しいけど俺はそう言って、亜耶から離れると玄関を出た。


本当は、心配だから一緒に登校したい。

それを無理矢理押し込めて、車に乗った。




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