表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/183

聞きたかったこと…遥

「雅斗、助かった」

俺は、雅斗にお礼がわりに言う。

あのままだとまた要らぬことを言ってたかもしれない。

「あぁ、別に構わない。お前こそ、大変だったな」

雅斗が何食わぬ顔で言う。

しかし、亜耶の事となると容赦ないな。

まぁ、人の事言えないが…。

「何で、わかったんだ?」

俺は、何気に聞いてみた。

「ん?亜耶の事必要以上に見てたし、しかも顰めっ面だったからな」

雅斗の観察眼恐るべし。

「で、何て言われてたんだ?」

雅斗が、逆に聞き返してきた。

「俺と亜耶では不釣り合いだ。年相応の自分の娘と結婚しろってさ」

俺は、いたって普通に答えたんだが、亜耶の落ち込み様は、半端ない。

「ふーん。それで、亜耶に謝ることもなく立ち去るのは、大人としてどうなんだ?」

不機嫌な雅斗の声。

「それなぁ。本当に参るよ。姉さんに言って、降格させてもらう」

俺の言葉に雅斗も満更じゃなさそうだ。

「そうしてくれ。理由も説明しておけよ」

「そこは、抜かりなくしておく。後で突っ込まれて説明できなかったら困るしな」

本当に勘弁して欲しい。

大の大人が、自分の非を認めることもなく逃げるとは…。

雅斗の妹だと知ったとたんのあの態度は、頂けない。

「そのブラック遥のキーワード、何言われた時だった?」

雅斗が、亜耶に質問してる。

その悪そうな笑顔、本当に止めて欲しい。

その言葉に亜耶が一生懸命思い出そうとしてる。

思い出さなくていい。

「んっとね。主に私に関しての言葉かな。"そんな娘"とか"あの娘よりも癒してあげられる"とか"可愛くない"」

そのワード、俺にとってはタブーでしかないんだよ。

自分の事は、別に何言われても構わないんだが、亜耶の事となるとなぁ。

「ぶっは…。遥、何それ。亜耶の文句に対して切れるとか、お前、どんだけ亜耶に一途なんだよ」

雅斗が、吹き出して笑う。

「悪いかよ。俺は、亜耶が居ればいいんだよ」

俺は、ムッとしながらも亜耶を抱き寄せた。

あー、落ち着く。亜耶は、されるがまま動く気配がない。

「はいはい。全く仕方の無い奴だなぁ。そんなんで、仕事できるのかよ」

雅斗が呆れた顔をして俺を見る。

「ん?まぁ、出来るって言えるのかな。殆んど、古株の先生だし…。そういえば、変な話し聞いたんだけどさぁ。亜耶が入院してたって本当?」

その言葉を出したとたん、俺の腕の中で固まった。

おっ、これは事実だな。

どっちが話すんだ。って、亜耶固まってるから、雅斗か。

「あぁ、本当だ。夏休み前のレクでな、体調崩してたのに参加して、悪化させたんだ。責任感の強い亜耶だから、言えなかったんだろ」

ほぉー。

確かに、体調崩しても迷惑かけたくないって言って、参加するのが亜耶だけど。俺は、もう一つの方が気になるんだが。

「何で、その時に言ってくれなかったんだよ」

俺は、雅斗を睨んだ。

こいつなら、直ぐに俺に連絡つけれるのに何で言わないんだよ。

「言ったってしょうがないだろう?お前、どっちにしても帰ってこれなかったんだから」

雅斗が睨み返してきた。

そうかもしれんが、亜耶に関しての事は、知っておきたかったんだよ。

「だけど、それだけじゃないんだろ?亜耶が、突き落とされたって聞いたぞ」

俺は更に言葉を続けた。

その言葉に雅斗が驚いた顔をする。

突き落とした犯人は、わかってるんだろうな?

「どうして、それを…」

抱き締めている亜耶の口から言葉が、漏れ聞こえてくる。

「古株の先生が…。って言うか、口を滑らせたのは、亜耶の担任で、それから話しが膨らんで、亜耶がプールに突き落とされたって話しが出たんだ」

職員室で耳にしたことを伝えた。

「…はぁ。そっか。聞いてしまったのなら仕方がない。突き落とした生徒にもきちんと謝罪してもらってるし、何せ、亜耶が大事にしたがらないからな」

雅斗が、諦めたと顔に出して説明する。それに同意するように亜耶が頷いた。

二人が、納得いってるのなら、何も言えない。

「そうか…。ならないいけどさぁ、何か、俺だけ知らないって言うのやだからな」

この言い方、餓鬼っぽいよな。

だけど、亜耶の事は全て知っておきたいと思うのは、いけないことなのか?

隠し事されるの好きじゃないし、況してや俺達夫婦なんだぞ。

何て、考えていたら、亜耶がクスクス笑ってる。

「亜耶が笑う所じゃないだろ」

俺は、頬を膨らます。

「ごめんなさい。だけど、遥さんが可愛いから…」

か、可愛いって…。

俺がか?初めて言われたかも…。

って、感激してる場合じゃない(一人突っ込みモード)。

可愛いって、大人の男に使う言葉じゃないと思うぞ亜耶。

「は、遥が、可愛いって……。亜耶、お前の目、どうにかなったんじゃないのか?」

本日二度目の吹き笑いをありがとう、雅斗。

そう言いながらも心配そうな顔をして亜耶を見てる。

雅斗の言う通りだと思う。内心そう思った。

「まぁいいか。遥の珍しい顔を見れたし…」

雅斗が苦笑しながら言う。

珍しい顔?俺今一体どんな顔してるんだ?

エレベーター内に在る、鏡を覗き込む。

何?気が付かない内に顔が真っ赤に…。

うわー、やらかした。

普段、ここまで赤く(澄ましているから)なったこと無い。

「はっ…、ちょ、雅斗。この事お前の嫁には言うなよ。絶対、からかってくるんだから…」

俺は、雅斗に釘を指した。

あたふたしてる俺を見ながら。

「亜耶。やっぱお前じゃないとダメなんだな。そんな自然体の遥は見れない」

雅斗が穏やかに笑ってる。

「亜耶以外の奴に気が許せるものか」

その言葉を口にしたら、亜耶が俺の背に腕を廻して、抱き付いてきた。

何、何で、こんなに可愛いんだよ。

「亜耶。それ以上俺を煽るのは、やめてくれ」

俺は、亜耶から視線を逸らした。

俺に抱きつきながら、上目使いで見てくるんだ。

「亜耶に振り回されてる遥って、滅多に見れないな」

雅斗は、いかにも楽しそうな笑みを浮かべた。

こいつ、ホント亜耶の兄じゃなかったら、殴ってたかも…。

いや、その前に親友やめてるか。


話してる内に展望レストランがある階に着いた。

「亜耶、降りて」

俺は、亜耶の背に手をやりエスコートする。

雅斗は、俺達の前を歩いて行く。

直に亜耶に触れているせいか、何時も以上に緊張しているのがわかる。

「亜耶。緊張してる?大丈夫だよ。俺も居るし、安心しな」

そう言って、頭をポンポンと軽く叩く。

「まぁ、無理も無いだろう。何かあれば、俺もフォローするからな」

雅斗が振り向き様に言う。

「う…うん」

ぎこちない返事。

そうとう緊張してるな。

どうにかしてやりたいんだが…。


その時ヒラメイタ言葉が。

「亜耶。愛してるよ」

だったんだ。

これで、少しは緊張が解れただろう。

さっきとは違い、自然体になってるから…。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ