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感心事…遥



待合室に足を向けて、二人を探す。

二人は、待合室の後方で他の人(患者や付き添い)の邪魔にならない所で立っていた。

そんな二人に俺は感心していた。

土曜日の午後は休診ではあるが、まだ待合室では会計を待つ人、向かえを待つ人とで溢れていた。

そんな中二人は、座らずに立っていたのだ(まぁ、座られていたら俺が分からないだろうっと言うのもあるだろうが……)。


「龍哉、相沢。ありがとうな。」

そう声を掛けながら近付く。

「済みません、遥さん。どうしても亜耶ちゃんのお見舞いに行きたいって梨花……相沢が聞かなくて……。」

龍哉が申し訳なさそうに言い出す。

「先生、ごめんなさい。どうしても亜耶の事が気になって、元気な姿を見たら帰りますから。」

相沢までもが申し訳なさそうな顔をする。

まぁ、仕方ないだろうな。

あの日、職員室に来る予定だった亜耶が、階段で意識無く倒れていたのを見てるんだから……。心配するわな。

「まぁ良いさ。亜耶も相沢に会いたそうにしてたしな。」

朝、相沢が来ることを話したら嬉しそうな顔してたもんな。

「移動するか。その前に売店寄っても良いか? 俺、まだ昼食べてないんだよ。」

亜耶に食べさせていたのもあるが、こいつらが来る前に食べようと思っていたのだがその前に来たから食べ損ねてるんだよな。

「構いませんよ。」

龍哉の言葉に相沢も頷く。

「ありがとう。」

俺は、そう言いながら売店の在る方に足を向けた。


「しかし、お前ら偉いよな。」

俺は、後ろを振り返りそう言葉を掛けた。

二人は何を言われてるのか分からず、キョトンとした顔をして俺を見る。

「何がですか?」

相沢が不思議そうな顔をして聞いてきた。

「二人とも椅子に座って待つことは出来ただろ? なのに立って待ってるとは思わなかった。」

俺の言葉に益々分からないと言う顔をしながら。

「それって、普通の事じゃないですか? 待合室の椅子って、体調の悪い人や怪我してる人が待っている間少しでも楽になる様に在るのだと思ってるので、健康で怪我をしてるわけでもない私たちが座るのは違うと思うのです。」

相沢が、答える。

まぁ、中には横暴な人も居るだろうが、それでも常識をきちんと持ち合わせてる二人が眩しく見えた。

「ですが、誰も居なければ座ってました。」

相沢が苦笑交じりで言う。

それが本音だろう。

俺だってそうするだろう。

話してる間に、売店の前に辿り着く。

「お前ら、何か飲むか?」

店に入る前に聞く。

「俺、アイスコーヒーで。」

龍哉の遠慮せずに堂々と言う姿に若干引くが。

「良いんですか?」

流石に気が退けるのか、相沢は聞き返してきた。

「あぁ、飲み物があった方がいいだろ。違うか? それに俺からのお礼だ。亜耶の事気に掛けて貰ってるからな。ありがとうな。」

こいつ達のお陰で、亜耶が少しずつ変わってきてるからな。

「じゃあ、アイスレモンティーで。」

それでもオロオロしながら言う相沢に、こいつ常識人だと改めて思った。

「分かった。アイスコーヒーとアイスレモンティーな。彼処で待ってろ。」

俺は、比較的人が来なさそうな場所を顎で指して店に入った。



アイスコーヒーを二本とアイスレモンティーのペットボトルを手にし、亜耶は大抵はミルクティーだが朝も飲んでいたし……ストレートティーにするか。

後は、サンドウィッチと菓子…あいつら食べるかなぁ……。亜耶は食べないだろうから、亜耶に合わせると……おっ、ワッフルがある。これなら茶菓子になるか。

ワッフルを三つ手にしてレジに並んだ。


土曜日だけあって、レジも混んでいた。

暫く待って、支払いを済ますと二人の所に戻る。


「悪い、待たせた。」

二人に声を掛けると。

「店内かなり混んでますから、分かります。あれだけ入って居ればレジもかなり混んでるだろうなっと。」

龍哉の尤もらしい言葉。

俺も改めて店に目を向けた。

やはり、そう思うか。

「行こうか。」

俺はそう口にして、エレベーターホールへと誘った。



亜耶の病室の階に付くとエレベーターを降りると、目の前にナースステーションがある。

「あら、高橋さん。その二人は?」

媚を売る看護師に嫌気を感じながら。

「妻の親友ですよ。どうしても妻に会いたいと言われましてね。」

妻を強調しながら答える。

横で龍哉が嫌そうな顔をしてる。

「そうなんですね。では、此方にご署名お願い致します。後、身分証の提示もお願い致します。」

二人に紙を渡しながら、身分証を見せろと手を出す。

ここの看護師は、なってない。

二人は生徒手帳を出して、看護師に見せつつ用紙に記入していく。

生徒手帳を見た途端その看護師の態度が変わった。

名門私立高校の生徒手帳を出されたら、身分なんて二の次になるよな。

「先生。あの人固まってるのですが、どうしたら……。」

相沢が戸惑いながら小声で聞いてくる。

「用紙書き終えたのならカウンターの向こう側の台にでも…って相沢では届かないか。龍哉、一緒に置いておいて。生徒手帳は返して貰ったか?」

二人が頷いたので。

「亜耶の病室に行くか。」

俺はそう言って二人を案内する。



後で、亜耶担当の看護師に話しておくか(勿論亜耶が居ないところで)。







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