選手決めと出し物…亜耶
教室に戻れば、ザワザワと騒がしかった。
そんな中で、私は龍哉くんを呼び出して、黒板に"体育祭"と書き出し、種目と人数を書き出していく。
「宮原先生が、体育祭の選手決めと文化祭の出し物を決めておけって」
私は、黒板に書きながら龍哉くんに伝える。
「ん?わかった。亜耶ちゃんには悪いけど、女子リレーと男女混合スウェーデンリレー出てもらっていいか?俺も、男子のリレーとスウェーデンに出るから」
龍哉くんが、種目を見ながら言う。
「リレーに出るのは構わないよ。中学イヤ、小学生の時からリレーに出てたし…」
私は、そう言ってリレー枠のところに自分の名前と龍哉くんの名前を書く。
「亜耶。私もリレーに入れておいて」
そう言い出したのは、梨花ちゃん。
「どっちの?」
リレーは、二種目在るから。
「両方」
って答えが返ってきたから、私は言われた通りに記入する。
「ってことで、先ずはスウェーデンリレー男子後一人なんだが、誰か居ないか?」
龍哉くんの言葉に教室が静まり返り、一人が手を挙げた。
「和田、いいのか?」
「いや、これ役得だろ?亜耶ちゃんの足の速さは、わかってるんだし、梨花と龍哉だし、勝てる要素じゃん。やるしかないだろ」
和田くんが言う。
他に居ないようだし、和田くんで決まり。
「女子リレー、後二人なんだけど、誰か」
って言うと、ユキちゃんと愛美ちゃんが手を挙げてくれた。
他に挙げる人が居ないので、決定。
「後は、順番に言っていくから、挙手な」
龍哉くんが、順番に読み上げていく。
私はそれを見て、黒板に記入していった。
順当に決まっていった。
「後は、借り物競争の女子一人と男子リレー二人か…」
龍哉くんが呟く。
「女子は、全員一種目ずつ出てるから、私が出るよ」
私が言うと。
「えっ、でもそれ三種目だぞ」
龍哉くんが驚く。
「ん。リレーしか出てないからさ。それに借り物やってみたいと思ってたし…」
前からやってみたかったんだよね。
「じゃあ、お願い。男子のリレーは、四月の体力測定の時の記録を見て選出するな。選ばれた奴は、文句言うなよ」
龍哉くんが言い切った。
私は、自分の席に行きシャープペンを手にする。
「亜耶ちゃん。俺のも」
龍哉くんに声をかけられて、机の上に出ていたシャープペンを持って戻る。
私は、用紙に名前を書いていく。
龍哉くんも同じように書いていた。
ほぼ同時に書き終えて、私は黒板の文字を消し新たに"文化祭について"と書き出した。
龍哉くんが時計に目をやるのが見えた。
「時間がないから、さっさと決めるぞ。やりたい物がある奴、どんどん言って」
龍哉くんが皆に投げ掛ける。
「駄菓子屋」
「射的」
「クレープ」
「メイド喫茶」
「焼きそば」
「お好み焼き」
「お化け屋敷」etc…。
どんどんと意見が上がってくる。
切りがない。
「ここで打ち切るな」
龍哉くんが黒板を見る。
「亜耶ちゃん。この射的と駄菓子屋を一緒にして。後、メイド喫茶だけど、逆転メイド執事喫茶に変更」
そう言って指示が出る。
私は、言われた通りに書き直そうとしたが、一ヶ所だけ付け加え。
射的&輪投げ(景品駄菓子)
と。
すると。
「それ…、いいじゃん。射的は男子が集中しそうだが、輪投げなら女子も小さい子供も出来るな。景品を駄菓子にするのもいい案だと思う」
龍哉くんが賛成する。
「この中から、一つ選んで挙手な」
そして、票が集まったのが、射的&輪投げと逆転メイド執事喫茶。
「射的&輪投げか、逆転メイド執事喫茶のどっちかに挙手な」
龍哉くんに言葉に教室が静まり返る。
多数決で、射的&輪投げに決定。
まぁ、逆転メイド執事喫茶は、他のクラスと被る可能性もあるから、この方がよかったのかもしれない。
「亜耶ちゃん。これ、書いてもらってもいい?俺、男子リレーの選出してくるから…」
龍哉くんはそう言うと教室を出ていった。
私は、文化祭の出し物のところに"射的&輪投げ(景品駄菓子)と記入した。
やりたい理由。
射的、輪投げで大人から子供まで、楽しんでもらおうと考えました。
これでいいのかな?
私が不安に思ってると。
「亜耶」
不意に呼ばれて声のした方を見れば、廊下で遥さんが手招きしてる。
ちょうどよかった。
遥さんに聞けばいいよね。ここの卒業生だし…。
私は、文化祭の記入用紙を手に遥さんのところに行く。
「高橋先生。ここなんですが、これでいいですか?」
私は、事務的に話しかけて、用紙を見せる。
「あ、うん。それで大丈夫だよ。俺、亜耶不足。充電」
遥さんが、ギュッと抱き付いてきた。
誰かに見られないかとドキドキしながら許してる自分がいる。
そして、慌てて遥さんを引き離す。
「遥さん。ここ学校だから、それは後でね」
私が小声で言うと不満げな顔をする。
「あれ、亜耶ちゃん、どうしたの?」
龍哉くんが、ちょうど戻ってきた。
「あ、うん。ここを高橋先生に聞いてたの」
私は、とっさに答える。
龍哉くんは、知ってるから慌てることはないんだけど…それでもね、恥ずかしいから…。
「いいと思うよ。よく思い付いたね」
龍哉くんがニッコリ笑って言う。
「高橋先生。結婚おめでとうございます。亜耶ちゃんには、先ほど伝えたので」
龍哉くんが、声を潜めて言う。
「おっ、知ってたのか、龍哉。ありがとうな。籍だけ入れただけだから、式はしてないんだ。お前、クラスの代表で式に呼んでやるよ」
って、軽々しく言う遥さん。
「本当ですか?だったら、アイツもいいですか?このクラスで一番亜耶ちゃんと仲が良いんですが」
龍哉くんが言ってるアイツって、梨花ちゃんの事だよね。
「ん。亜耶と仲良しならね。あっ、でも今は内緒にしておいてな。式の予定まだ先だから」
遥さんが、口許に人差し指を立てて言う。
「わかりました。男子リレーのメンバー勝手に決めてきたから、それ伝えてくるな」
龍哉くんは、教室に入るとメンバーを告げた。
誰も不満をあげなかった。それどころか、エールを送ってる。
「仲が良いんだな」
遥さんが呟いた。
「うん。クラスが纏まってるから、とてもやりやすいよ」
私は、そう返した。
「亜耶。無理するなよ。お前は、直ぐに溜め込むからな」
そう言って、遥さんが頭を撫でてきた。
「うん」
コクりと頷くことしか出来なかった。




