嫌な予感…遥
病院内に入ると、直ぐに検査が行われた。
倒れ方からすれば、頭は大丈夫だと思うが、念の為の検査だ。
俺は、待合室の方に足を向けた。
待合室の片隅に見知った顔があり、俺はそちらに足を向ける。
「お義母さん」
その人に声を掛ける。
亜耶の母親は、顔を上げて俺を見るや否や。
「遥さん。あの子…亜耶は?」
顔を青くさせて、俺の腕に手をやり揺さぶってくる。
声も幾分か震えていて、動揺してるようだ。
「落ち着いてください。亜耶は、今検査中です。終わるまで、待ちましょう」
俺は、義母の隣に座り背中を擦る。
ここまで狼狽えてる所を見たことがないから、俺までもが動揺する。
「何で、亜耶が……、あの子が何かしたのでしょうか?」
うん、俺もそこが知りたいとこだが、実際俺は何も知らないって事。ただ、これは、ゆかり嬢が関わっているってことだけは、確信できる。
俺は、自分が知り得ていることを義母に伝えた。
「そ……う。あのお嬢さん、未だ、諦めてないの……。現実を見せつけないと……ね」
呟くように言う義母に、俺の背中に嫌な汗が流れる。
義母が、唐突に顔を上げたかと思ったら。
「遥さん。あの娘の事、お願いします。私は、やる事ができたので失礼しますね。何かあったら、何時でも連絡して」
そう言うと、さっと立ち上がり颯爽と出入り口に向かって行った。
今の、笑顔の筈なのに何故か怖いと思ってしまった。
あんな顔をして、何をしようとしてるんだろうか?
嫌な予感しかしないのだが……。
検査が終わり、病室へ移された亜耶。しかも個室で、面会謝絶(笑)。
結果から言えば、脳には異状無し。
ただ利き腕の右を骨折。
まぁ、念の為に二・三日の入院ってことになった。
取り敢えず、入院の手続きをして、亜耶の意識が戻るまで傍に居ることにした。
しかし、とんでもないことをしでかしたもんだ。
俺は、腸が煮えくり返りそうだ。
雅斗には、お義母さんから連絡がいくだろうが、俺からも要れるべきだろう。
何時目を覚ますかわからない亜耶を一人にしたくなくて、病室内から電話を要れることにした。




