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厄介事2…理事長



その後は、山積みの仕事を片付けていた。


そろそろ昼休憩でもと思い背を伸ばしたところで。

コンコンコン。

ドアがノックされた。

「誰だ?」

俺がそう返事をすれば。

「湯川です」

湯川? 透か。

何だか、焦ってるような声だが、何かあったのだろうか?

俺は、ドアに近付き開け放つ。

そこには、透と細川、その間に女子生徒が一人、何かをブツブツ呟きながら居た。

「何かあったのか?」

「鞠山さん絡みです」

透が、真顔で返してきた。

亜耶ちゃん絡みだと……。

だが、肝心の亜耶ちゃんとやつが居ないじゃないか。

「理事長。取り敢えず、中に入っても?」

透が促してくる。

立ち話ではすまないだろうとドアを大きく開け、中に促した。

俺は、三人をソファーに座らせ、対面に俺自身は座った。


「ところで、亜耶ちゃん本人とあいつは?」

そう問い質せば。

「鞠山さんは、意識不明で動かす事ができず、遥さんは鞠山さんに付いてます」

透は、如何にも冷静に答えているようで、経緯がわからない。

亜耶ちゃんが、意識不明?

何があって、そうなったんだ?

透の答えに更なる疑問が浮かぶ。

「俺自身が目撃したわけではないので、詳しくはわからないです。ただ、この女生徒が何らなの関わりがあることは事実なので、逃げられる前に遥さんの指示でこちらに連れて来たのですが……」

うん、それはいいが、何故、亜耶ちゃんが意識不明になったのかが俺は知りたいのだが……。透の話では、わからん。

という事で、矛先を変えてみる。

「細川は、何故ここに?」

俺が声を掛ければ。

「彼女、佐江……。青木佐江さんと言いまして、姉の……言い方が悪いのですが、"従僕"です。多分なんですが、姉に言われて鞠山さんを階段から突き落とした張本人だと言うこと。俺は、この件に関して身内がしたことなので、責任を感じたのと高橋先生の指示でこちらに来ました」

細川の説明は、透よりも明確だった。声は戸惑ってはいたがな。

「透。何故、先に亜耶ちゃんが階段から落ちたことを言わないんだ。それを言わなければ、疑問ばかりで先が進まない。もう少し落ち着いて状況判断する様に」

これが俺の後継者だと思うと先が思いやられる。

「すみません……。俺も、どう話して言いかわからないんです。たまたま、通った階段の踊り場に鞠山さんが倒れていて、ナニが? って思ってたら、鞠山さんのクラスの子に彼女を押さえるように指示されたから……。言われたままにしてただけで、何が何だか……」

こいつ、人に言われたままに動いただけなのかよ……。情けない。

「わかった。……で、彼女が、本当に亜耶ちゃんを突き落としたのか?」

俺が問い質すと、二人とも首を傾げ。

「直接見た訳じゃないから」

との事で、答えがでない。

「じゃあ、彼女じゃない場合もあるわけだな」

俺が再度聞けば。

「さっきも言ったんですが、目撃者は鞠山さんのクラスの女子生徒なんです」

透が答えてるところに。

コンコンコン。

ドアのノック音。

「はい」

俺が返事をすれば。

「1-Eの河合と木村です。鞠山さんの事で話に来ました」

冷静で、堂々とした口調で返ってきた。

「入れ」

俺の言葉を聞きドアが開く。

「「失礼します」」

礼儀正しく入ってくる河合とその後ろに女子生徒が一人、不安そうに入ってくる。

彼女が、木村なのだろう。

俺は、今座ってる場所から移動し二人をそこに座らせた。

「で、詳しく話せれるのは?」

俺が聞けば。

「木村の方です。俺は、彼女の付き添いです」

はっきりした声音で河合が言う。

彼女の方は、緊張からか少し振るえてるようにも見える。

河合が、木村さんに。

「大丈夫だ。見たままを話せば良い。言葉を飾る必要ないから」

と声を掛けると。

「あたし……彼女が亜耶ちゃんの背中を押すのを見ました」

小声ではいたもののはっきりした声音で。

そして、その前から亜耶ちゃんが嫌悪を表していたことも話してくれた。事細かく話してくれたことで、彼女が犯人と確認できた。

彼女の処分を決めなくてはならなくなった。


しかし、何故、次から次へと頭が痛いことが起こるんだろうか。



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