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弁当の存在…遥



学校に行く準備を済ませ玄関に行けば、亜耶が先に待っていた。

一緒に玄関を出て、地下駐車場に向かい、車に乗り込む。

最近やっと、戸惑いもなく助手席に座るようになった亜耶。結婚する前は、他の女性が居ると思ってか、躊躇していたんだが、な。

馴れた手付きで、シートベルトを閉めてる亜耶を横目で見ながら、エンジンをかける。

「亜耶、悪い。今日のお昼だが、学食で買ってくれるか?俺、作り忘れた」

平日なのを忘れてるんだから、仕方ないよな。

「えっ、あっ、私もすっかり忘れてた。何処かのコンビニで買って行けば良いと思う。時間もまだあるし……」

亜耶も忘れていたのか……。

でも、珍しいこともあるもんだ。

「そうしたいんだが、他の目がな……」

あんなことがあったばかりだし、亜耶が変な目で見られるのは避けたいかな。

「じゃあ、遥さんはどうするの?」

亜耶が心配そうに聞いてくる。

「ん?空き時間にでも買いに行ってくるよ」

一様、そう答えておかないと亜耶は納得してくれない。

一食抜いたぐらいでは、死ぬこともないしな。

「ごめんね。もうちょっと早く起きれたら、お弁当作れたんだけど……」

亜耶が、落ち込みだした。

これはいかん、持ち上げないと……。

「気にしなくていいよ。俺も、朝食作り終えた時点で満足して、お弁当に気が回らなかったのが悪いんだから」

本当、俺の落ち度だ。

亜耶の顔を見て、目許が腫れてる気がして、左手で亜耶の目許を擦る。

「目、少し腫れてるな。大丈夫か?」

心配してそう聞けば。

「ちょっと見にくいけど、大丈夫だよ」

って、何でもないように言う亜耶。

あんだけ泣いたんだから、仕方ないか……。

「そう、ならよかった。……で、週末だけど、ちょっと早めに出ることになったから。透には伝えてあるから、準備だけしておいて……」

突然、話を変えたがわかっただろうか?

亜耶が沈黙し、心配になり。

「どうした?」

声を掛ければ。

「えっ、あ、うん。お泊まりだよね。何泊するの?」

ごく当たり前の言葉が返ってきた。

泊まる日数によって、準備は変わるからな。

「一泊だ。早めに出て、亜耶と真由が行きたがってた水族館に行って、ゆっくり館内を巡って海豚ショーとか見るんだろ?…で、夜は真由の誕生日パーティーするというプランだけど、他に行きたい所とか有れば、連れて行くが」

淡々と言ったが、俺のお姫様には伝わっただろうか。

「水族館、楽しみ。それに真由ちゃんの誕生日のお祝いって、豪華ディナーなの?」

気にするところは、そこなのか?

まぁ、前回の事もあるからかもしれないが……。

一様、伝えておいた方がいいか……。

「ん?そこまでじゃないが、ドレスコードはあるかもな。まぁ、現地で借りれば荷物の負担も軽減されるから、な」

既製品を亜耶に着せるのは気が引けるが、ドレスは嵩張るから、持って行くより借りた方がいい。

顔を青くしてる亜耶に。

「不安そうな顔をしてるが、大丈夫だ。ちゃんと見立ててやるから……」

そう言って慰めては見ても、どんなのにしようか迷うな。

「それって、真由ちゃんのは?」

はっ?

なんで、真由の分まで俺が見なくてはいけないんだ?

「透が出すだろ?あれでも仕事しているし……」

俺は、亜耶の頭を撫でながら言う。

ついでに。

「まぁ、ホテルの方は、半額だしな」

そう言うと驚いた顔で俺を見てくる。

「うちの系列だから、半額。まぁ、学生ってこともあってそれが妥当でしょ」

俺たちが泊まるのは、スイートだがな。

あぁ、早く亜耶の驚く顔が見たい。

何て考えていたら、学校に着いた。


「今日は、ごめんな。これで買って食べて」

俺は財布からお金を取り出し、亜耶に差し出したが。

「お金はあるからいいよ。遥さんもお昼、ちゃんと食べてくださいね」

って、可愛く釘を指してくる。

あぁ、先に言われてしまった。

別に食べなくても平気なんだが……

「あぁ、わかってる。今日は、比較的余裕があるから、きちんと摂るよ」

俺の言葉を聞いて安心したのか、ホッとした顔をし。

「じゃあ、行ってきます」

その言葉を残して行ってしまった。


何でも見通されてる気がする。

取りあえずは、理事長室に行くかな。

亜耶の事を心配してくれてたし……。

俺は、車を降りて職員用に出入り口に向かった。





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