幸せの時間…亜耶
恥ずかしくて、顔が上げられずに遥さんの胸に伏せていたら、頭を撫でられてる内に目蓋が落ちて眠ってしまった。
翌朝、目が覚めると遥さんの腕の中だった。
あの後、遥さんに抱きついたまま寝ちゃったんだ。
遥さんを見れば、まだ寝息をたている。
今、何時だろう?
部屋の置時計に目をやれば、六時前だった。
時間があるし、シャワー浴びてから朝食の準備しよう。
私は、ベッドからモゾモゾと這い出て、着替えを持って脱衣場へ。
洗面台の鏡を見れば、昨日泣きすぎたせいか、目が腫れていた。
あ~あ、登校するまでに落ち着くかなぁ。
何て思いながら、シャワーを浴びた。
シャワーを浴び終えてリビングに行けば、遥さんがソファーでコーヒーを飲んでいた。
「おはよう、遥さん。昨日は御免なさい」
そう声を掛ければ。
「おはよう、亜耶。気にするな。俺は、嬉しかったからな。亜耶の素直な気持ちが聞けたから……」
笑顔で返された、その顔が眩しくて。
「直ぐ、朝食の準備するね」
逃げるようにキッチンに向かった。
…が、ダイニングテーブルの上には、既に朝食の準備が整えられていて、座って食べるだけになっていた。
いつの間に……。
ぼーぜんとして眺めていたら、後ろから抱き締められ。
「朝食、作っておいたから先に食べてていいよ。俺もシャワー浴びてくるから」
そう言うと、放れていきリビングを出ていく遥さん。
私のやることが……。
落胆して、その場に座り込んでしまった。
何で、あの人は全部自分でやっちゃうの?
負担になってないの?
疑問が浮かぶが、"亜耶のためなら、負担になんて思わない"って、返ってきそうだ。
取り敢えず、気を取り直して自分の定位置に着く。
先に食べてても良いって言ってたけど、ここは待つべきだろうと思い、遥さんが上がってくるまで待つことにした。
しかし、短時間でスクランブルエッグ(ベーコン入り)、サラダ、フレンチトースト、フルーツのヨーグルト和え、オニオンスープまで……。幾ら簡単なものとはいえ、見映えよく準備されてると落ち込むよ。
ハァ~~。
ガチャ……。
リビングのドアが相田音がして、我に返る。
「あれ、まだ、食べてなかったの?」
遥さんが、タオルを頭に載せて髪を拭きながらこちらを見る(服は着てる)。
「あ…、うん。一緒に食べたかったから…」
俯きながらそう答えれば。
「そっか。もしかして、落ち込んでた?俺、要らない事した?」
遥さんの弱々しい声に顔をあげれば、シュンと落ち込んだ顔で私を見てくる。
あっ、私何やってるんだろう。
遥さんにそんな顔して欲しくないのに、困らせちゃってる。
「ううん。遥さんに作って貰えるの私だけなんだなって思ったら、嬉しくなった」
遥さんの手料理を口にできるのは、私だけの特権なんだなって思ったら嬉しくもなるよ。
そう思ったら、自然と笑みが溢れた。
私の笑顔を見て、ほっとした顔をし。
「そうだよ。亜耶だけが、俺の料理を食べれるんだぞ。覚悟して食えよ」
俺様対応の言葉が返ってくる。
うん、何時もの遥さんだ。
「はい、いただきます」
何時ものように手を合わせて、二人で食べ始めた。
この時間が、私を幸せにさせてくれた。




