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二人の時間…亜耶


遥さんに気付かれていたなんて、思ってなかった。

私が言った言葉に遥さんが、目を見開く。

久し振りに見た気がする。


「何が、どうしてそうなったんだ?」

遥さんが、動揺してながらそう口にした。

「…あの二人、四六時中一緒に居るの。他の二人もだけど……。その姿を見てて、私も…一緒に居たいのに…、居れないんだ…なって、思ったら、二人の事が羨ましく思っちゃって……。同じ学校に居るのに、一緒の時間が、とれない。って思ったら、寂しく思うように…なっちゃてた」

ダメだね。

最初は、遥さんの先生姿が間近で見えるって、喜んでただけだったのに、今じゃ、少しでも一緒に居たいなんて思ってしまってて、遥さんが他のひとと居る所を目にすれば、"私になのに"って、醜い嫉妬ばかりしてしまって……。自分でも感情の制御できていないなって、思うもん。

気付けば、視線が下に…自分の手の甲に向いていて、遥さんの顔を直視できずに居る。

今の嫉妬で歪んでいるであろう顔を絶対の見られたくない。そんな気持ちも遥さんには届いてなくて。

あろうことか、顎を持たれて上に向けさせられる。

慌てて横に向けば。

「亜耶…。亜耶がそこまで俺の事を想っててくれてて、俺は嬉しいよ。俺も、亜耶と居る時間をもっと大切にしたいと思ってるから…。でも、こればかりは仕方がないよな。俺は、仕事として学校に行ってるんだから、そこの区別は弁えないとな」

諭すように言う遥さん。

「そんなの、わかってるよ。だけど、どうしようもないんだもん。近くに居るのに触られなくて、一緒に過ごしたいのに、って言ったら我儘かなって思ったり…。一週間も経ってないのに他のひとと居る所を見ると、嫉妬しちゃって、胸の中に変な蟠りが…黒い靄みたいなのに支配されそうに…なっちゃて…もう、自分でもどうしたらいいのか、わからないんだもん」

ずっと思ってた。

遥さんが傍に居てくれてると安心できる。だけど、少しでも離れてしまうと不安で、押し潰されてしまう。

誰からも慕われてる遥さんだから、余計に不安が広がっていく。

自分よりも綺麗な人とか、可愛い人なんて一杯居るのに、何で私だったんだろうって何時も疑問に思ってた。

こんな出来損ないの自分で、本当に良いのかって、遥さんとの距離をとってみて自分の気持ちを確かめたかった。

そして、わかったことは、私は遥さんが居ないとダメなんだって……。

何時だって傍に居てくれないと、自分が保つことができなくなってしまってると気がついたのが、この間のレクの時だった。

気が付くの遅いよね。

それでも遥さんは、私が自分の気持ちに気付くまで待ってくれてたのを知ってる。

だから、少しでも力になれればって思うのに、空回りしちゃってる。

「亜耶……」

遥さんの手が、私の頬に伸びてきた。

一瞬肩を震わすが、直ぐに持ち直す。

「そんなに怯えるなよ」

少し困ったような顔をして言う遥さんは、私を自分の胸に抱き寄せる。

遥さんの心音、何処となしか早い気がする。

「亜耶…。亜耶の気持ちが聞けて嬉しいよ。亜耶が、我儘だと思ってることは、俺にとっては我儘だなんて思わないよ。俺自身が叶えてやりたいって思うことだしな。それにさ、亜耶は何時も限界まで我慢するだろう。俺としては、そっちの方が気掛かりだったりするんだよ。亜耶が遣りたいことは全部言って。今、思い付かなくても思い付いた時にでもいいから言ってくれないとわからないからな。それと、俺だって嫉妬してるんだぞ」

優しい声音で頭を撫でながら言う遥さん

えっ……、遥さんが…。

「相変わらず、悠磨とは仲が良いんだろ。亜耶が安心しているのがわかるんだよ。笑顔もさ、作り物の笑顔じゃないし…」

顔を上げて遥さんを見れば、口許を尖らせてて、ちょっと可愛いなって思ってしまった。

「はっ~。亜耶が可愛すぎて、手放すことが出来ないんですけど、その辺りはどうなんですか、奥さん」

って、拗ねながら聞いてくる遥さん。

て、奥さんって……。あっ、私、遥さんの奥さんでした。

「……頼りがいのある旦那様で、私にはもったいないと思うんです。でも…私にとって、唯一の大好きなひとですから…」

口にしたら、顔に熱が集まる。

あ~あ、やっちゃた。

本音が出ちゃったよ。

上目遣いで遥さんを見れば、息を呑んで吃驚している姿が伺える。

えっ、えっ……。

その後の蕩けるような、甘い笑顔で。

「あ~もう、何て可愛いんだよ。俺の奥さんは、何時までも俺を翻弄させる。もう、絶対放してやんないから、覚悟しておいて。大好きだよ」

って、最後は甘く囁くように言って、私の額に口付けた。







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