気付かれた…亜耶
食後の後片付けは、私が率先して行った。
料理は、遥さんが作ってくれたからこれぐらいはしないとね。
片付けが終わりコーヒーを淹れて、ソファーで寛いでる遥さんに持って行く。
遥さんは物思いに耽っているのか、ただ一辺を凝視していた。
私は、邪魔になら無いようにそっとローテーブルの上に置く。
その時、コトリと小さな音が鳴ってしまった。
その音で、驚いたように私の方に視線を向けてきた。
「遥さん?」
不思議に思って声を掛けたら、遥さんに腕を掴まれて、膝の上に向かい合う形で座らされた。
「は…遥さん…」
突然の事で、ジタバタ暴れてみるが背中に腕を回されて逃げる事が出来ない。
遥さんの顔を上から見る形となって、ちょっと恥ずかしいんですけど……。
目線は合うと。
「何時もしてただろ?今さら、何恥ずかしがることがあるんだ?」
って、何でもないように言い出す。
確かにそうだけど……。
何時の事を指してるんでしょう?
最近は、無かったと思うんですけどね。
でも、不安に陥った時何時も遥さんが、こうやって励ましてくれてたっけ……。
次第にそれが当たり前になっしまって、気付けば自分から相談事があるとちょこんって遥さんの膝に乗って、額を肩に載せて話してた。
今更ながら、とても恥ずかしいよ。
羞恥にかられて、遥さんの肩に額を押し付けた。
「今回は、どうしたんだ?何時もと勝手が違うよな?」
優しい声音にフルフルと身体が震えだす。
暫しの沈黙の流れるなか。
「私にも…わからないの……。ただ、龍哉くん達が居てくれて良かったって…そう思ったら、涙が…出ちゃって…自分でも……わからなくなっちゃって……」
ゆっくりと言葉を紡いだ。
遥さんは、黙って私の話を聞いてくれる。
「それって、亜耶が始めて感じた感情だよな。今までは、そこまでいかなかった事だしな…」
って、私の思いを解ってくれてのか、そう返してくれた。
私は、ゆっくりとコクりと頷いてみたが、遥さんに伝わったかは微妙だ。
「それは、嬉しかったんだな。亜耶自身の事をちゃんと見ていてくれてる証だな。で、亜耶は、嬉しくて…安心して涙が出たってことかな」
遥さんの言葉に疑問がわく。
嬉しい?
誰かに自分の事を理解してもらえることが嬉しいこと?
「今まで、亜耶は自分から信頼のおける友達が居なかった。だが、この事件をきっかけに信じられる友達が…心から心配してくれる友達が居ることに、嬉しくなったのと、安心して話せる友達が居たのだと、心から感じんたんだろう。だから、頭で考えてることと違う感情が涙という形となって、現れたんだと思うよ」
心と頭が別々の感情を持つ?
えっと……。
「考えてたのと違うことが起きて、心が追い付くことができずにいたのか…」
つい口にしてしまった。
それを聞いてたのか、遥さんが。
「そうじゃなくて、心から素直に嬉しいと思えたから涙が出たんだ」
訂正してくる。
えっ……。
頭で考えるよりも先に心が感じ取って、そのまま涙とかしたってこと?
この私が?
思ったままに素直に涙として流したってこと?
そう思ったとたん、胸の奥でポッカリと空いていた部分にピースが填まった気がした。
「…あぁ……そっか…。今まで、本当に信じれるのは、身近な大人だけだったのが、本当に辛いときに傍に居てくれた龍哉くん達に嬉しくなったんだ……」
納得するように口にすれば。
「亜耶さん。さっきから、寂しそうな顔をしてるんですが、未だ何か他に隠してるよね?」
と丁寧な口調で私の額に自分の額を合わせて聞いてきた。
うっ…なんで気づいてるのよ。
私は、視線を逸らしたのだが。
「亜耶、目線を逸らすな。ちゃんと言わないと伝わらないんだぞ?」
頬に手を添えられて、脅すように言ってくる。
あー、もう。
顔に熱が集まってくるのがわかる。
だって、ジッと優しい目で見てくるんだもん。
「う…。笑わない?」
そう口にすれば、微かに頷くだけ。
私は、意を決して。
「実は…、龍哉くん達が…羨ましかったの…」
呟くように口にした。




