新たなる疑問が浮上…遥
後片付けを亜耶がしてくれてる間、俺はリビングのソファーで寛いでいた。
今回の件、俺はちゃんと受け止めてやれるのだろうか?
否、受け止めてやらないといけない。
義務的に……違う、夫として亜耶の気持ちを受け止めてやるんだ。
そして、俺自身も考えなくてはいけない。
亜耶をどうやって護って、支えていくのかを……。
本当は、俺自身は学生結婚は望んでいなかった。
亜耶の負担が大きくなる事が、目に見えていたから。
だが、こればかりは仕方が無かったとしか言いようがない。
考えることばかりで、俺の頭の方もパンクしそうだがな。
考えに耽っていると、コトリとローテーブルに何かがぶつかる音がして、そちらを見れば亜耶が俺専用のマグアップを置いたとこだった。
「遥さん?」
不安気な顔をしながら俺を見てくる。
そんな亜耶の腕を掴み、俺の膝の上に向かい合わせに座らせた。
「は…遥さん…」
亜耶が、ジタバタ暴れと焦った顔で俺を見るが、背中に腕を回して、拘束する。
「何時もしてただろ?今さら、何恥ずかしがることがあるんだ?」
亜耶の耳許でそう呟けば、大人しくなり俺の右肩に亜耶が額を押し付ける。
そう、子供の時からこの体勢で俺には弱音をぶちまけてきた。
親や兄、友達にすら言えないことも、どうしても抑えきれなくなると全部俺に本音をぶちまけてきたんだよな。
それが何時もの事だった。
俺は、亜耶の背中を擦りながら。
「今回は、どうしたんだ?何時もと勝手が違うよな?」
優しく、話し出しやすいように聞く。
亜耶が、何時口を開いてもいいように耳を済ませていると。
「私にも……わからないの……。先生に、『悩み事があれば何時でも相談に乗るから』と言われた時、私に悩み何て……。有っても信頼のある人にしか話すなと言われてるのに……、この人は何故意図も簡単に、口に出せるのかなって……。私は、そんな人に相談なんかしたいとも思わない。でも、先生にとっては普通の事なのかなと思ったり……。グルグル頭の中を掻き回して……。」
くぐもった声が、ゆっくりと話しだした。
俺は、その言葉に対して。
「そう言うことか……。確かに先生の立場としては、生徒が悩んでいたら相談に乗るくらいはごく普通の事だ。が、亜耶にとっては普通じゃないんだよな。」
亜耶の戸惑いの言葉を聞き、そう返せば亜耶がコクリと頷いた。
信頼関係の基で相談しないと後でどんな事が言われるか隙有らばと痛手を追うから、亜耶には幼い時から言いつけられていたんだよな。
まぁ、中学時代の友人達では、信用できなかったんだろうけど……。
「その先生の言葉は気にしなくていいよ。亜耶の相談役は俺が居る。雅斗やご両親も。後、新たに龍哉達なら相談すればいい。龍哉達は、信頼に値できるからな。」
普通では、あり得ないことなのだろうが、龍哉という人と成りが信頼に値する人物だったということに加え、相沢達も亜耶にとってそんな存在に成っていたということなのだが。
亜耶が、俺の方を不思議そうな顔をして見てくる。
まだ、分からないかな。
「今までは、亜耶は自分から信頼のおける友達が居なかった。だが、この事件をきっかけに信じられる友達が…心から心配してくれる友達が居ることに、嬉しくなったのと安心して話せる友達が居たのだと、心から感じたんだろう。だから、頭で考えてることと違う感情が涙という形となって、現れたんだと思うよ。」
俺の言葉にキョトンとする亜耶。
その後、どうにか整理がついたにか、軽く頷き。
「考えてたのと違うことが起きて、心が追い付くことができずにいたのか……。」
って、口にする。
なんか、ちょっと違うような気もするが……、本人が納得したのなら、いいか……。
「そうじゃなくて、心から嬉いと思ったから、涙が出たんだ」
きちんと言葉にして伝える。
亜耶が、普段から素直じゃないとは言いがたいが、友達には素直な気持ちを時々隠すことがあるからな。
子供ゆえの意地があって、それを友達に相談できずに何時までも抱え込んでるところがあった。それが、昨日今日で覆ったんだろうと思う。
「…あぁ……そっか…。今まで、本当に信じれるのは、身近な大人だけだったのが、本当に辛い時に傍に居てくれた龍哉くん達に嬉しくなったんだ……」
呟きなが、理解した亜耶。
やっと、自覚したか……。
「亜耶さん。さっきから、寂しそうな顔をしてるんですが、それ以外に何か他にあったのではないですか?」
俺は、亜耶の額に自分のそれを充てがって聞く。
亜耶は、本の少しだけ顔を赤らめて視線を逸らす。
あからさまな態度に。
「亜耶、目を逸らすな。ちゃんと言わないと伝わらないんだぞ?」
亜耶の頬に手を添えて、自分と視線をマジ会わせて言えば、益々赤くする。
そんな亜耶が可愛くてしょうがない。
「うっ……、笑わない?」
上目遣いで聞かれれば、頷くしかないだろ。
「実は…、龍哉くん達が……羨ましかったの……。」
って、小声で言ってきたのだった。




