突然の事…遥
一週間と空かずに続編投稿です。
やっと、亜耶との想いが通じたのになぁ…。
何で、こんな事になってるんだ。
ハァー。
研修から帰ってきて、一週間。
突然伯父から。
「教師に欠員が出た。代わりが見つかるまで、教師の代講頼む」
何て言ってきた。
これから、会社に復帰するって言うのに、これだよ。
それに加えて、鞠山家でも問題が…。
御大自ら俺の所に連絡が来て、呼び出された。
そして、鞠山家の本拠地に出向くと、亜耶達家族も揃っていた。亜耶は、ビックリした顔を見せたが、他の家族は知ってたのか笑顔で出迎えてくれた。
家族会議が始まる。
俺、無関係のはずだが…。
俺も交えてなんて、思ってなかった。
突然会長が。
「会長の座を孝幸くん(亜耶の父親)に譲って、ワシはコヤツと世界一周旅行に行ってくる」
そう言い出した。
「「「「はっ!」」」」
家族一同が、驚愕する。
「お義父さん、何を急に言うんですか」
「急じゃないぞ。前々から考えていたんだ。それに亜耶のフィアンセも決まった事だし、少し羽を伸ばそうと思ってな。」
って、呑気に言う。
「じゃあ、この家は、どうするんですか?」
「お前達夫婦が住めば良いだろ」
御大、やってくれますね。
「今住んでる家は、雅斗が住めばいい」
「お祖父様。簡単に言いますけど、亜耶の通学の事考えてますか?」
雅斗が噛みつく。
「ここから通うには、ちょっとばかし遠いか…。だが、お前達の所にも居れんだろうて…。と言うことで、遥くんに頼みだ。亜耶と一緒に暮らしてくれんか?」
ヘッ…、俺ですか?
「イヤ、俺が今住んでる所でも、学校遠いですよ。それに、高校生の女の子が、家から出て行くのを見て、ご近所さんが何て言うか…」
俺の答えに。
「ならば、亜耶と婚姻してしまえばいい。で、通学に困らない場所に引っ越せばいいことだろ」
って、如何にもいい案だと言わんばかりの笑顔で言う。
うおー。
えっ、それって婚約期間無しって事ですか?
「お祖父様。私、まだ十六にはなってないですよ」
亜耶が、冷静に言う。
うん、確かにまだ十六じゃない。法律上は、結婚不可だ。
「だったら、亜耶の誕生日九月十五日に婚姻届を出せばいい。それで、解決するだろ」
御大は、ニコヤカに言う。
そうですね。
「これで、万事解決じゃな。と言う事で、お前、さっさと行くぞ」
御大は、奥様に声をかけると逃げるように出ていった。
「「「「ハァー」」」」
残ったメンバーが、溜め息を漏らす。
「遥くん、悪いね。家の事情に捲き込んで…」
亜耶のお父さんが言う。
「いえ。まぁ、亜耶との婚姻が早くなっただけの事ですので、気にはしませんが…」
何て言ったらいいのか…。俺的には、ラッキーなんだよな。仕事から帰ってきたら、亜耶が家に居るんだから…。亜耶は、それでいいのだろうか?亜耶の気持ちが知りたい。
「亜耶。亜耶は、どうしたい?」
俺は、亜耶に訪ねた。
「ここから学校に通うには、遠すぎるし一人歩き出来ない場所なのもわかってる。だけど、お兄ちゃん夫婦の邪魔もしたくない。独り暮らしは、無理だろうから、遥さんが迷惑じゃなければお願いしたいです」
お利口さんな答えだけど、俺が聞きたいのはそれじゃないんだよ。
「亜耶の気持ちは、どうなの?俺と一緒に居たいか?」
俺は、率直に聞く。
「…私は、遥さんと居たいです」
顔を赤くさせて言う亜耶。
可愛いな。
「うん。じゃあ、家探そうか?えっと、亜耶を連れてってもいいですか?不動産屋を廻りたいので」
俺が言うと。
「あぁ、そうだな。今のお前の家からじゃ、通学しにくいな。いい物件が見つかるといいんだが…」
雅斗が、浮かない顔で言う。
「そうだな。後の事を見越して決めてくるよ」
俺は、そう言って亜耶を連れて家を出た。
今日は、車で来てたから亜耶を助手席に座らせて、走り出す。
何時も、贔屓にしてる不動産屋に足を向けた。
「高橋様、いらっしゃいませ」
自動ドアを潜ると甲高い声が迎えてくれた。
そいつは、隣に居る亜耶を見て、不躾な視線を向ける。
「高橋様、此方の方は?」
何で、答えなきゃならないんだ。
何て思いながらも。
「俺の奥さん。今日は、新居を探しに来たんだよ」
そう答えてやった。
すると、一層強い視線を亜耶に向けた。
何だよ、不躾な奴だな。
「遥さん、どうしたの?」
亜耶が、俺の袖を引っ張って聞いてきた。
「イヤ。何でもないよ亜耶。亜耶は、どんな感じの家がいい?」
俺は、亜耶の腰に手をやり聞く。
「う~ん。よくわかんないよ」
まぁ、確かに高校生に解れて言う方が無理か…。
「じゃあ、俺が何件かピックアップしたのから、物件を観て決めるってのでいいか?」
俺の言葉に亜耶は、頷いた。
「セキュリティーがしっかりしてるとこで、4LDKもしくは3LDKでウォークインクローゼットの在るところを幾つか見繕って…」
俺は、そう伝えると直ぐに検索し出した。
眼は、まだ亜耶を睨んでるが…。
三・四件分の物件を持ってきた。
住所等確認して、学校に比較的近い場所を案内させた。
案内された物件の室内を見る。
リビングは広いし、水回りもゆったりしてる。お風呂場も広めに取ってある。ダイニングキッチンからリビングを見る事が出来る。子供が、出来た時にここから様子を見る事が出来るな。
「遥さん。ここがいい。学校に近いし、見張らしもいい。ねぇ、ここにしよ」
亜耶が、ハシャグ。
まぁ、見晴らしがいいのは、当たり前だ。八階だからな。
「ここにするか」
俺が、そう言うと亜耶が嬉しそうに頷いた。
店に戻り、契約を済ます。
部屋の鍵をもらい、粗方の説明を受けて店を出た。
「良いところ見つかってよかった」
亜耶が、安心したように言う。
ホントにな。
「後は、家具とか電化製品とか見ないとな。寝室は、一緒な。」
俺が言うと、亜耶の顔が赤くなる。
ああ、何で、こんなに可愛いんだ。俺は、衝動的に亜耶を抱き締めていた。
そして何だかんだと新生活を始めた矢先に、叔父の電話。
これから、どうなるんだ。