2.異変
「あっ!……いけない!もうこんな時間!急いでるから、また明日学校でね!体調悪いんだったら、しっかりと寝てね!バイバイ」
片山は急ぎ足で交差点を渡り早歩きで去っていった。
まさか、本当にここは過去なのか……
これがタイムリープってやつなのか……!?
だが、そうだとしたらこの場にいるはずの俺はどこに消えたんだ。
俺がいた未来の世界はどうなったんだ!?
少しばかり冷静になってきたので、状況確認の為、持っていた鞄に手を入れ携帯電話を取り出した。
画面を開き日時を確認すると、片山が言った通り5年前の西暦で7月だったはずが12月になっていた。
さすがに壮大なドッキリというわけではなさそうだ。
こんな道端で野宿も嫌なので、自宅へと向かうことにした。
幸いにもここは家から徒歩で15分程のところだ。
俺がいた世界と同じ場所にあるとすればの話だが……。
15分ほど歩いたところで家に到着した。
ポケットにはキーケースが入っていたので
玄関の鍵を開けてドアノブを回した。
一体どうしてこんなドキドキしながら自宅の玄関を開けなくちゃいけないんだよ!
玄関を恐る恐るあけ、家の中を覗き込んだ。扉を開けた先には誰もおらず、ゆっくりと中に入り、自室のある2階へと向かった。
部屋の中には異変は特になかった。
特別散らかっているわけでもなく、俺の部屋に近い状況だった。
ただ一つ大きな違和感が目の前に映った。
高校のブレザーがハンガーに掛けられ
部屋の壁に掛かっていた。
そうか。五年前ということは今の俺は高校二年生ということか。
もう少し現在の状況がわかるものがないか調べようとしたところで携帯電話が鳴った。
携帯電話の画面には妹のゆずきの名前が表示されていた。
少し緊張しながらも電話に出た。
「もしもし?」
「お兄ちゃん?!ちょっとどこにいるの??6時に駅前のスーパーって約束でしょ?まさか忘れてたわけじゃないでしょうね!!」
突然妹からの怒りの電話でパニクる
スーパー??そういうことか、ここの時代の俺は妹とスーパーに向かう途中だったというわけか。部屋に掛けられている時計を見ると既に夜の6時5分を過ぎていた。
「ご、ごめん!すぐ行くよ!」
「先に夕飯の食材買っておくからすぐ来て!!こんな重い荷物持てないから!」
ゆずきは怒り口調で話しながら電話を切った。
今は冬のようなので、とにかく寒い。
クローゼットを漁り、昔よく着ていた温かいジャンパーを着て、庭に停めてあった懐かしい自転車でスーパーに向かうことにした。
だがいくつか分かったことがある。
一つはここは五年前の過去ということ、
もう一つは、どういうわけか単にタイムスリップしただけでなく、歴史も修正されているということ。
少なからず、片山とはある事件をキッカケに話す機会はなくなり、あんな風に話したりはしなかった。
それに妹とも……一緒に夕飯を買いに行くなんてこともなかった。そもそも一緒に夕飯に買いに出掛けた記憶なんてない。ゆずきとは反抗期を境に少しずつ会話が減り、いつしか全く話さなくなってしまっていた。
自転車を漕ぎながら自分の現状について整理していた。
あれ?そういえばさっき倒れていた俺は自転車漕いでなかったな。
スーパーに向かってたはずなのに、どうしてだろう。
まぁ……自転車で向かって支障もないだろう。