世界線
「ここは……」
先ほど突然強い衝撃と眩暈に襲われ、記憶が途切れた。
目を覚ますとビルとビルの間の通路のような場所にうつむせになり倒れていた。
特に外傷もなく頭がクラクラしているくらいだ。一体何が起こったのか理解出来ず思考が追いついてこない。
フラフラしながらも立ち上がり数メートル歩くと歩道に出る。
一体何が起こったんだ!?
さっきまで俺はコンビニに向かう為に自転車を漕いでいる最中だった。
そもそも、ここはどこだ。
そして目の前で起きているあり得ない事態に気がついた。
季節は夏だというのに、雪が降っていた。
ましてやお昼時だったというのに空は薄暗い。
あまりの非現実的な出来事に気味が悪い。何がどうなっているのだ?
この世界はどうなってしまったのだ……
「あれ?……瀬名くん?」
頭が混乱している中、突然聞き慣れない声がし、反射的に振り向いた。
そこには同じ高校の制服を着て綺麗な顔立ちをした一人の女性が立っていた。
「瀬名君、こんなところで会うなんて珍しいね!……って、顔色凄く悪いよ?どうしたの、体調でも悪いの!?」
彼女の顔をよく見ると高校時代のクラスメイトだった片山瑞樹だ。
だが、一体どうして片山が俺に話しかけてくるんだ?
こいつとはあの事件を境に、高校2年以降口をきいていなかったし、不仲なので街中で偶然会っても声なんてかける仲じゃない。
「……か、片山だよな?……」
「そうだけど……なんか瀬名君さっきから変だけど本当に大丈夫?……」
片山は不思議そうな顔をして返事をした。
「いや……体調が悪いのか、頭がおかしいのかわけがわからない。えっと……お前とこうして話すのも久しぶりだな、五年ぶりか?」
事態は全く把握出来ないが、少しでも冷静になりたかったので、話を変えて質問してみた。
「……やっぱり瀬名君おかしいよ。どうしちゃったの?……本当に瀬名君?
五年振りだなんて意味がわからないよ。数時間前まで学校で話してたじゃない。」
片山は心配そうにこちらを見つめながら答えた。
もはや一周回って冷静になってきた。
片山の噛み合わない回答、不思議そうな表情、おかしな気候。
俺の知らない片山。
そんなはずはないと思いつつも、
馬鹿げた質問をしてみることに。
「なぁ片山。今日って27日だよな??」
いくら何でもドラマやアニメじゃあるまいし現実世界でこんなこと起こってたまるものか。そう思いつつも片山に投げかけた。
「本当変な瀬名君。どうしちゃったの??……今日は5日だよ?」
「えっ?6月の27日じゃ……ごめん。少し頭の中調子がよくないみたいだ。西暦でいうと今って何年の何月だっけ??……」
「全く、瀬名君大丈夫ー??本当しっかりしてよねー……今は西暦ーーーーーー
って聞いてるの??」
頭の中が真っ白になった。
片山から飛び出した西暦は、六年前の西暦だった……。