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1-12 大男とレア

「止まれ」


 しゃがれたような声が聞こえた。

 この声はさっきの部屋の奥から聞こえていたもう一人の男の声だ。

 ギガス商会の人間で奴隷商人のやつ。

 小太りの男手白いスーツに銀細工のアクセサリーを身に着けており、太い指には全部宝石のついた指輪をしている。あのアクセサリーや指輪、全部売ったら金になるだろうなあ。

 残った手勢全部を集めたのか、俺達を大部屋に半包囲するような形で囲んでいる。

 どうやら逃げていると思わされながらここに追い込まれてしまったみたいだな。

 敵も存外にやるものである。


「よくもまあ、好き勝手に暴れてくれたものだ」

「ああん?てめえらこそ人のお嬢を勝手に攫ってんじゃねえか。しかも奴隷として売ろうとしていただあ?どの口がほざいていやがる」

 ふつふつとした怒りを抑え込むようにしてガヨウが奴隷商人に睨みを効かせる。

 ひっと息を呑む声が聞こえたと思ったら商人の後ろに神父さんがいた。

 きっとガヨウのような人間に耐性が無いのだろう、商人の後ろにいるせいで委縮しているのがよく分かる。

 このまま腰を抜かせてくれたり漏らしたりしてくれたら少しは気分が晴れるんだけどなあ。


「ふん、これだけ囲まれてもまだ逃げれると思っているのか?めでたい奴だ。出てこい」

 商人が後ろに声をかけるとずん、ずんと少し音を立てながらでかい男が現れる。

 身長は二メートル半はあるんじゃないだろうか。手足には枷が付けられており、首には黒い首輪がしてある。商人の下っ端みたいな人間がガチャガチャと手足の枷を外している。

 体は皮と骨しかないような明らかに栄養が足りていない体だが、その目は絶望の黒で濁っているのに光を発しているかのようにぎらついている。

 こんななりだが筋力はすさまじいであろうことは想像できた。

「我が故郷に隣接する土地に住む蛮族の奴隷だ。せいぜい逃げ惑うがいい!」

「オオォォオオオオ!」

 大男が獣のような咆哮を上げると包囲していた奴らが二、三歩後ろに下がった。

 中には大男に驚いて腰を抜かしている奴までいる。あ、神父さんだった。


「ちっ!こいつは使いたくなかったんだがなあ!」

 ガヨウが背中に手を突っ込む。

 何かを隠していたのか捲れた背中にはベルトが巻かれているのが見えホルスターのようなカバーが見える。え、ホルスター?

 パチッと留め具を外され、抜き出されたそれはジャコンと音を立ててガヨウの右手の中に出現する。

 非常に無骨で大柄な金属の塊、色は黒く、それで殴られたら頭が割れそうなほど重そうだ。

「銃っ?」

「は?何でてめえが知って……っ」

 俺が銃を知っていたことに驚いたガヨウが振り返ったが即座に何かに反応して飛び退く。

 次の瞬間には大男がデカくて長い手をハンマーのようにガヨウがいた場所に叩きつけた。

 うお、ちょっとふらついた。建物が揺れたのか、それとも迫力にやられたのか分からないが凄い威力である。

 当たったら俺やアロディは一撃で全身の骨が折れてお陀仏だろう。


 ガオン!と金属が咆哮を上げる。

 文字通り火を吹いた銃が弾を発射して大男の背中にめり込む。

「ガアアアアッ!」

「もういっちょお!」

 声と共に発射される弾が先ほど直撃した近くにめり込む。

 腕がいいんだろうな。まだ完成されていないと素人目でも分かる銃で大男の左胸付近に二連続で当てることができているのだから。

「何だあの武器は!」

 商人はガヨウさんがぶっ放す銃にくぎ付けになっている。あ、それがこの世界の人の正しい反応ですか。武具を扱う商人がこれならきっとまだ発表されていない新兵器の類だったのだろう。ちょいとミスったなあ。

 ほら、隣のアロディが変な物を見る目で俺を見ている。

 

「ヘルメス、これを」

 いつの間にかエオス先生が隣に来ていた。

 その豊満な胸付近の服の内側に手を入れると取り出した物を俺に渡してくる。

「これ、モンスターカードじゃないですか」

 描かれているのはカラス。ただしただのカラスでは無い。この辺りでも有名な大ガラスであり、狂いガラスと呼ばれる魔物だ。

 全長は普通サイズで羽を広げると四メートルはあり、そんな巨大な翼と鍛えられた肉体、巨大なくちばしを持つ凶悪な魔物である。

 基本属性を操る魔法使いじゃないと退治は難しいとされているがエオス先生なら可能か。

 でも、それ以上に驚いたのがこのカード……何か縁が銀色に光ってるんですけど。

 明らかにレア!と主張しているカードである。


「これならばきっとヘルメスの力になってくれるわ。お父様から早いけど魔法使いになった記念のプレゼントだそうよ」

 ゼニウス……あんた、いい親父じゃん。

 うるっときそうになる涙もろい俺だが、隣にいるアロディくらいは守ってみせようと思った。


「じゃあ、私も加勢するから」

「気を付けて行ってらっしゃい。あ、ガヨウさんの武器の射線には入らないようにね先生」

 丈夫そうな大男の体を突き抜けることもあるかもしれないからなあ。

 先生は不思議そうな顔をしつつも分かったと言って少し大ぶりな剣を取り出して大男に切りかかる。

「せえいっ!」

「ゴアアアアッ!」

 肉に刃が食い込む痛みに大男が絶叫する声が大部屋に響いた。

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