表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

1-11 脱出開始

「ふむ、身を挺してお嬢を庇うとは案外見どころのあるや……ああ!てめえこら、いつまで引っ付いて」

「ヘルメスッ」

 怖い顔のヤクザ様を思いっきり突き飛ばしたエオス先生は俺をアロディからべりっとはがすと縄を腰辺りから出したナイフで裂いて解くとぺたぺたと頬を触り、さわさわと腕やお腹を触る。

「大丈夫か?怪我は無いか?」

「うん、大丈夫。ただちょっとその触り方は恥ずかしい」

 良かったと感極まって俺に抱き付く先生は全く俺の声が聞こえて無いようだ。

 心配をかけてしまったな。


「ガヨウ、早くこっちに来て縄を解いて」

「く……お嬢分かりやした」

 突き飛ばされたヤクザ様はこっちを睨みつけてきたがアロディに言われて縄を解きにかかる。

 アロディの白い肌に縄の痕が付いてしまっておりヤクザ様がそれを見て顔をしかめている。

「ちっ。お嬢を攫うとは……ギガス商会の奴ら、ただじゃおかねえ」

「ギガス商会……確か貴族に武具を下ろしてる商会だったか」

 そのついでに奴隷商売ね。儲かってそうじゃないですか。俺とヤクザ様は同じことを思ったのかニヤーとあくどい顔を浮かべる。

 ちなみに神父さんはどさくさに紛れてすでに逃亡している。

 この逃げ足の速さ……確実に裏の世界にどっぷり足をつけている人間だろう。


「ええ、ここは叩き潰す。付いてこれるヘルメス?」

「付いて行くくらいならね」

 叩き潰すのは置いておくとしてまだここから脱出しないといけないミッションがある以上、戦力の一角である先生の足手まといになるわけにはいかない。

 自分で立って走らないとな。

「やっぱり男の子ね」

 誇らしげになるエオス先生だが、俺が男の子だからじゃなくて先生がいいんですよ、先生が。

 アロディも俺と同じように立ち上がり、おぶらせるために後ろ向きにしゃがんだヤクザ様の背中を蹴りつけていた。

 おう……ヤクザキック。


「ガヨウ。貴方も戦いなさい。走るくらいなら私にもできるわ」

「お嬢……もうこんなに成長なされて」

 ヤクザ様は背中を蹴られて顔面から地面に倒れたのに、涙を流して喜んでいる。

 なんだ、一人じゃないじゃないか。

 そう言った感じの目線をアロディに向けると気づいたのか顔を逸らされた。

 どうやら嫌われてしまったらしい。


「さて、そろそろここから脱出するわよ」

「あ、他にも子供たちがいるみたいなんだけど」

「そんなもん衛兵にでもまかしとけや。これだけ騒ぎを起こしたら後からくんだろ」

 それもそうか。

 俺はヤクザ様を見る。

「ヘルメスです。アロディの……なんだろ?友達候補?」

「ガヨウだ。根性だけは認めてやんよ。ただし、お嬢に手を出したら……いでっ」

「馬鹿言ってないで行くわよ」

 アロディがヤクザ様のふくらはぎ辺りを容赦なく何度もげしげしと蹴っている。

 ああ、俺の中のアロディのお嬢様像が崩れていく。

 まあ、こっちの方が素が出てて魅力的だと思うがね。

 ふくれっ面のアロディ達と俺とエオス先生は連れだって部屋から抜け出す。

 ちびっこ魔法使い二人に凄腕冒険者の魔法剣士とヤクザ様。

 安心できる要素はあまりないけど、脱出できない訳が無いって気持ちが何故か湧いてくるね。




「ファイア」

 別に魔法を使うのに声を出す必要は無いが俺は炎を横道から出てきた男の顔の前に出現させる。

「うおっ。ぐあ!」

 反射で怯んだ男を容赦無くエオス先生の剣が切り裂く。その威力は切られた男が三メートルとほど吹き飛ぶほど。

 どうやったら女性の身でそこまで力が出せるのか疑問が尽きない。


「どぅおりゃあ!」

 ヤクザ様の武器はその拳と足。

 出てくる相手を片っ端から殴り飛ばし、蹴り飛ばしては逃げる道を確保する。

「土よ、散れ」

 アロディの可愛らしい声の命令は多数の石を周囲に出現させて後方から迫る敵を殲滅……はしないが足を止めることに成功する。

 俺も一緒になり、バカスカと炎やら土やら水やら後方に雨のように降らす。

 ただ俺とアロディの魔法は致命傷にはならないので嫌がらせによる足止めが目的だ。

「それ、持つの?」

「夕方くらいまでならね」

 考え無しのような目を向けられたあと、非常識なやつを見るような目で見られた。

 世の中って理不尽だよな。


「やるじゃねえかお宅の坊主」

「そちらのお嬢様もね。もちろんヘルメスの方が凄いけれど」

「いやいや、お嬢の方が」

「何よ、ヘルメスは」

 前線の大人二人は軽口を叩きながら敵を次々なぎ倒す。

 余裕だな。しかし敵の数が思ったより多い。

 流石は武具を扱う商会、懇意にしている傭兵やらごろつきはいるみたいだな。

 もちろんそこらのごろつきではこの二人には勝てそうにないから、順調だな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ