第33話~決勝~
「ついに帰ってきたァー! ディル・ライオネル選手が、ショウ・ユウキ選手に続いて二着でここへ戻ってきたぞォー!」
割れんばかりの拍手と歓声も、まるで聞こえないかのようにディルは闘技場の中央――俺の居る位置――へと歩いてくる。
その表情に特に変化はなかったが、俺を見つけた途端、その目を若干歪ませていた。
「ななななななんと! ディル・ライオネル選手も二回戦進出の為に必要なバッジ十個とは別に、ショウ・ユウキ選手と同じ四十個ものバッジを余分にひっさげてキタァー!
これで会場に集まったバッジは丁度出場選手と同じ百個! しかし戻ってきたのはたった二人! これで次の二回戦が事実上の決勝戦へとなってしまったぞォー!」
うっそだろおい。あいつ、何人もの相手と戦って勝ってんだよ!?
しかも、四十個ものバッジとなると、俺がさっき戦った奴と同じくらいということになるんだが。
「ふっ、当然だな。エリザベスを取り戻すためなら俺は努力を惜しまない」
ディルは訳のわからないどや顔で俺を笑ってくる。
……一々癪に触るなぁおい。
「実況の話聞いていなかったのか?俺だってバッジは集めてたんだよ。もうお前に負けない為にな!」
「ふん。ならばここで決着を着けるか?」
「上等だ! やってやろうじゃねぇか!」
互いの目を睨みあってガンを垂れる。
これが漫画とかだったならきっと互いの目の間から火花が散っている事だろう。無論今そんなことは起こっていない。
そんな俺たちの諍いに、実況の人が若干あきれ果てたように
「あのー。お二人とも今ここで決勝戦を行うおつもりですか?」
「「当然!」」
クソっ忌々しい。ディルと声がハモってしまった。
向こうも俺と同じ考えだったようで、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
実況の人は後ろで何やら話し合っている。恐らく今決勝を行うか否かを審議しているのだろう。
今は日が暮れた直後、中々微妙な時間帯だ。
だが正直言って、一分一秒でもコイツをぶっ倒したい。体の内側から熱を持ったように、そんな考えが俺の中に頭をもたげてきた。
少しの審議の後、実況の人が観客にも聞こえるような声で説明を始めた。
「えー皆さま。明日行う決勝戦なのですが、予算の都合じょ……いえ、厳選な審査を経て今ここで決勝戦を行いたいと思います!」
観客から割れんばかりの歓声が沸き上がり、ディルコールとショウコールの嵐となる。
ついに来た。奴に負けてまだ数日しか経っていないが、この雪辱ここで削いでやる!
互いに距離を取り、デッキを構え宣言する。
「「誓いを此処に!」」
決戦が今、始まる




