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第17話~戦慄~

 先行後攻は、ディルのデッキが青い光を発したので、ディルの先行となった。


「俺のターン。ドロー! スタンドフェイズ、ムーブフェイズをスキップ。

 コールフェイズ! 俺は、世界魔法ワールドマジック《コキュートスの都》を発動!」


 ディルがカードを置くと、周りの景色が雪と氷に包まれ、氷柱で作られた無人の都市に切り替わった。

 吹き荒れる風が、冷たいを通り越して痛い。


「《コキュートスの都》は、互いがドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた時に、その枚数だけ、デッキの上からカードを墓地に送る効果を持っている」


 解説どうも。

 しかし、これは厄介なカードだな。これじゃあ《ツインドロー》をしたら、デッキの上からカードを二枚も墓地に送られてしまう。

 このカードから察するに、奴のデッキはデッキ破壊デッキのようだ。


「そして俺は、ランク3《スノーマンソルジャー》を召喚コールしてターンエンドだ」


 氷の都に、剣と盾を持ち、赤いバケツを被った雪だるまが現れる。

 よし、俺のターンが来た。


「俺のターン、ドロー! スタンドフェイズ、ムーブフェイズをスキップ。

 行くぜ、コールフェイズ! 俺は、ランク3《マッハイーグル》を召喚コール!」


 俺の肩に、赤い羽根の猛禽が止まる。あぁ、羽毛がモフモフしてて暖かい。

 いつまでも浸っていたいのだが、そうも行かない。


「俺は、《マッハイーグル》の効果エフェクト発動! 速攻! 《マッハイーグル》を前衛に!」


 威勢のいい声とともに、マッハイーグルが飛んでしまった。

 あぁ……モフモフ。


「速攻持ちのモンスターか。中々いいカードを使うな」

「そいつはどうも。行くぜ、アタックフェイズ! 《マッハイーグル》で攻撃!」


 マッハイーグルがディルに向かって爪を突き刺す。


「ぐッ!」


 見事に攻撃は命中し、奴のライフは残り九となった。

 よし、まず先制だ。


「俺は、このままターンエンドだ!」


 互いに一ターンを終えて、俺の方が今のところ有利だが、いつ転ぶか分かったもんじゃないからな。油断できない。


「俺のターン。ドロー! スタンドフェイズをスキップ、ムーブフェイズで《スノーマンソルジャー》を前衛へ。

 そして、コールフェイズ! 俺は、ランク3《荒ぶるカリブー》を召喚コール!」


 雪だるまの隣に鼻息を荒くした、獰猛なカリブーが一頭現れる。


「俺は《荒ぶるカリブー》の効果エフェクトを発動! デッキの上からカードを三枚公開し、その中にランク3以下の水属性のモンスターがいれば、一枚選んで、後衛に休息状態レスト効果召喚エフェクトコールすることが出来る!」」


 カリブーが低い唸りをあげて、仲間を呼ぶ。

 その声に応じて、ディルのデッキの上から三枚が公開される。

 どうやら、あのモンスターの効果は俺の持っている《月下狼》とほぼ同じ効果を持っているようだ。


「俺が効果召喚エフェクトコールするのは、ランク2《フロストバード》! よって《フロストバード》を後衛に休息レスト状態で効果召喚エフェクトコール!」


 空に、雪と氷でできた数体の小鳥が舞い上がる。


「《フロストバード》の効果エフェクト発動! このカードが効果召喚エフェクトコールに成功した時、相手モンスター一体を手札に戻すことが出来る! この効果でお前の《マッハイーグル》を手札に戻す!」


 フロストバードが巻き起こす強風にマッハイーグルは、翼をはためかせ必死に抗うも、ついには強風に飲み込まれ、俺の手札に戻っていった。

 まじかよ。あいつのデッキ。デッキ破壊だけじゃなく、手札戻しバウンスまでこなすのかよ。


「アタックフェイズ! 《スノーマンソルジャー》で攻撃!」


 雪だるまが、剣を振りかざし、こっちに向かって来た!

 ダメだ。躱す手段が無い。


「痛っつ!」


 これで互いのライフは九。同点だ。


「まだだ!  《スノーマンソルジャー》の効果エフェクト発動! このカードが相手モンスターを破壊した時、または相手ライフにダメージを与えた時に相手のデッキの上からカードを二枚墓地に送る!」


 雪だるまがこっちにバケツを投げつけてきた。

 一瞬の衝撃と鈍い激痛が俺の額に襲い掛かり悶絶してしまった。


 そのせいでデッキのカードが二枚吹っ飛ぶ。

 カードの内容は《疾風の赤兎馬》と、《ワイルドベアー》だ。


「ターンエンド。どうした? それで終わりか?」

「へっ、焦るなよ。まだ始まったばかりだぜ」


ディルの煽りを軽口で受け流す。

事実、まだ手段は残っているしな。

デッキ破壊も、二枚だけならまだ被害と呼べるほどじゃないし。


「俺のターン。ドロー! スタンドフェイズ、ムーブフェイズをスキップし、コールフェイズ!

ランク2《月下狼》を召喚コールし、《月下狼》の効果エフェクト発動! デッキの上からカードを三枚公開し、その中にランク3以下の炎属性のモンスターがいれば、一枚選んで、後衛に休息状態レスト効果召喚エフェクトコールすることが出来る!」


この効果を聞いて、ディルの耳がピクッと少し動いた。

お前のカリブーと同じ効果だよ。そんなに動揺するなっつーの。

そして、デッキの上からカードが三枚、公開される。お、これは。


「俺が選ぶのは、もう一体の《月下狼》! よって、もう一体の《月下狼》を効果召喚エフェクトコール! 更に、さっき効果召喚エフェクトコールした《月下狼》の効果エフェクト発動! デッキの上から三枚を公開!」


よし! 同じ《月下狼》が来たってことは即ち、俺の運命力(実力)が奴を上回っているという証拠だろう。

しかし、二体の《月下狼》がフィールドに出たことにより、また俺の足元を巡っての熾烈な争いが繰り広げられていた。

だからお前ら仲良くしろよ!

一応、争いを鎮めるために二体の頭をなででやるとすぐにおとなしくなってくれた。


「……お前は何をやってるんだ}


ディルが呆れたような目で俺を見てくる。

こっちにも事情があるんだよ。いろいろとな。

さて、俺のターンを続けるか。


「俺はランク3《アサシンスコーピオン》を選択し、コイツを効果召喚エフェクトコール!」


足元から、小さな黒サソリがわらわらと這い出てくる。

うわっ! 気持ち悪! でも、そんなこと思ってられないんだよなぁ……。


「俺は《アサシンスコーピオン》の効果エフェクト発動! このカードが効果召喚エフェクトコールに成功した時、相手モンスター一体を破壊出来る! この効果により、お前の《スノーマンソルジャー》を破壊する!」


黒サソリが雪だるまに群がり、雪だるまは一瞬で雪に帰って行く。後には、剣とバケツが残るばかりだった。

これで、厄介なモンスターを倒したぞ。


「俺はターンエンド! どうした、お前こそそれで終わりか?」

「フン。モンスターを並べただけでいい気になるんじゃない。俺のターン、ドロー!」


なんだよ、煽り返しただけなのにそのガチ反応はよ。


「スタンドフェイズで全てのモンスターを活動状態スタンドに、ムーブフェイズで《フロストバード》を前衛に。

そしてコールフェイズ! 俺はランク3《アイスチャリオッツ》を召喚コール!」


氷の馬に乗った戦車乗りが馬の嘶きを裂いて、吹雪の向こうからやってきた。

来いよ。たとえお前がどんなモンスターを出してライフを削ろうが、その分パージ召喚が早まるだけだ。


「更に、俺はフィールド上の《荒ぶるカリブー》と《アイスチャリオッツ》を手札に戻すことにより、ランク4《冬将軍パンカ》を効果召喚エフェクトコール!」


カリブーとチャリオッツが吹雪の中に消え、それと入れ替わるように真っ白な馬と服の将軍が現れる。

ランク4のモンスターをこんな方法で出すのか、ちょっと勉強になったわ。

しかし、モンスター二体を手札に戻している時点でアド損だ。


「《冬将軍パンカ》は自分フィールドのモンスターを二体以上手札に戻し、効果召喚エフェクトコールすることが出来るカード。そして、このカードで手札に戻したモンスターの数だけ、相手のデッキの上からカードを墓地に送る! 俺が手札に戻したカードは二枚。よって二枚墓地に送ってもらう!」


「マジかよッ!」


アド損カードかと思ったが、そうでもなかったっていうか、中々強いカードだな。

パンカの巻き起こす猛吹雪によって、俺のデッキからカードが二枚墓地に送られた。

しかも、地味にカリブーを手札に戻してやがった。


「まだだ! 《アイスチャリオッツ》の効果エフェクト発動! このカードが手札に戻った時、相手のデッキの上からカードを二枚墓地に送る!」


「クッソ!」


チャリオッツがディルの手札から現れ、俺のデッキに突撃し、また俺のデッキのカードが墓地に送られた。

これで、合計四枚だ。

《冬将軍パンカ》の効果で《アイスチャリオッツ》を手札に戻してデッキを破壊し、《アイスチャリオッツ》の効果で更にデッキを破壊する。敵ながら実にいいコンボだ。

だが、俺もやられっぱなしじゃない!


「この瞬間。《リボーン・ボーン》の効果エフェクト発動! このモンスターが、カードの効果で墓地に送られた時、手札を一枚墓地に送り、後衛に効果召喚エフェクトコールすることが出来る! 俺は手札の《アヴェンジャーモンキー》を墓地に送り、《リボーン・ボーン》を効果召喚(エフェクトコール)

更に、《アヴェンジャーモンキー》の効果(エフェクト)発動!このカードが手札から墓地に送られた時、このカードを効果召喚(エフェクトコール)する!」


墓地から戻ってきた、骨だけの犬と、真っ赤に燃え上がる猿が俺のフィールドに現れる。

これで俺のモンスターは五体。中々の数が揃ってきた。


「俺のデッキ破壊コンボを引き金(トリガー)にモンスターを出すか。面白い、そうではなくてはな! 俺はこのままターンエンドだ!」


奴のターンが終わり、俺のターンが回ってくる。

しかし、まだ五ターン目なのに、もうデッキの枚数が二十一枚だ。

だが、このターンで一気に追いつめてやるぜ!

進出TCG用語

デッキ破壊:相手の山札をいち早く消耗させ、先にデッキ切れを起こさせることによって勝利する戦術。

バウンス:相手が場に展開したカードを相手の手札、山札などに戻す効果。

17話終了時時点での両者のフィールド

ライフ:9

手札:5枚

フィールド

(前衛)

なし

(後衛)

ランク3

リボーン・ボーン

アヴェンジャーモンキー

アサシンスコーピオン

ランク2

月下狼×2

デッキ:21枚


ディル

ライフ9

手札:6枚

フィールド

(前衛)

フロストバード

(後衛)

冬将軍パンカ

デッキ:29枚

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