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復讐9

「パパ……」

 ドアがゆっくりと開いて、廊下を這いずってきたらしい薫子の顔が見えた。

「薫子!」

 岩本は慌てて掴んでた尻の肉を放り出して薫子の側まで行った。

 薫子はパンティをはいてたけど、片側の尻の肉がごっそりとこそげ落ちていた。

 脂肪やかろうじてまだくっついてる肉片をぶら下げて、岩本に助けを求める顔は真っ白で血の気が引いている。

 血で汚れた手を岩本の方へ差し出した。

 そして凹んだ下半身からは血がどんどん流れている。

「アキラ! お前がやったのか?!」

「ええ、まあ」

 どんな武器であんなにごっそり削り取ったんだろう? 私はそれが知りたかった。

 意識があるのにあれだけ削り取れるなんて、男は力があるからいいわねえ。

 暴れても対抗できるものね。

「若い女の尻の肉でしょ? ご要望どおりじゃないっすか」

「貴様! わしはその女を!」

 と岩本が私を指さした。

「え~、美里はそんなに若くないっすよ」

「失礼ね」

「だって、十三歳でしょ? あんたの娘。絶対そっちのがぴちぴちだって。若くても性病にかかってる女なんて俺なら絶対嫌だけど」

 と言ってアキラが笑った。

「う、裏切る気か? 今まで育ててやったのはわしだぞ! 贅沢をさせて暮らせてこれたのは誰のおかげと!」

 話が長くなりそうなので私はチェーンソーのスイッチを切って、ソファの上に置いた。

 うるさいし、重たいんだもの。

「殺人鬼にそういう感覚求める方が間違ってるって、なあ」

 とアキラが同意求めたので肩をすくめて見せた。

 でも、確かにそうだわ。

「あんたの言うとおりに今までハンターしてやったじゃん。十分だろ」

「あら、岩本と決別するの? もう就職先、ないんじゃないの?」

「笹本って金払いいい?」

「いいわ、でも、あの街に行くのは許さないわよ」

「どうして?」

「どうしても、よ」

「美里の縄張りは荒らさないよ」

「あたしはもうあの街には帰らないわ」

「それならそれでいいし、俺の事もほっといてくれよ」

 とアキラが言った。

「よその街に行きなさいよ!」


「きゅ、救急車を」

 と言いながら岩本が立ち上がったので、チェーンソーを持ち上げて刃をむける。

 チェーンソーはシュイイイイインと回転を始めた。

「座ってなさいよ。あんたの娘なんか興味ないわ。死ぬのはあんたよ」

「な、なんでわしが!」

 岩本は震えながらも元のソファに座った。

 薫子は部屋に入ったところでじっとしているけど、ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーとうるさく言っていたので、

「うるさい! 黙りなさいよ! 神経に障る女ね!」

 と言いながらチェーンソーでチっと髪の毛の先を切ってやった。

「ぎゃーーーーーーー、パパーパパー」

 余計にうるさくなってしまったわ。

「いつもそんな重量級の物を使ってんの?」

「まさか、こんな重いの。好きだけど、重いしうるさいしね」

「確かに」

「そっちは? どんな武器?」

「俺? 俺はいつも身軽、こんな風」

 そう言ってアキラはぎゃーぎゃーと泣き叫ぶ、薫子の顔を蹴り飛ばした。

 ぐふっと妙な声を出して、薫子が大人しくなった。

 顔が変な向きをしているので首が折れたのだろうと思う。

 アキラは続いてその薫子の顔を体重をかけて踏みつぶした。

 まさか顔が潰れるとは思わなかったわ。最初の蹴りで骨が砕けてたのか、薫子の顔は骨ごとぐしゃっと潰れた。裂けた皮膚の間から赤黒い液体と茶色いクリーム状の物がどろっと流れでた。

 アキラはこんこんと床で靴の先を蹴った。

 そういえばいつの間にかブーツを履いている。

 先に鉄でも入っているのだろう。軍隊で使うような重厚なブーツだった。

「薫子……」

 と岩本がつぶやいた。

「今度はそっちのお手並み拝見」

 とアキラが言ってから後ろに下がった。

「な、なんなんだ、お前ら」

 と岩本が言った。

「どうしてわしを……薫子を……何の恨みがあって……」

「楽しいからよ。そうでしょ? 今夜あたしを殺して尻の肉を食べる予定だったんでしょ?それは何故? 楽しいからでしょ? あたしも楽しいから殺すのよ」

 と言って私はチェーンソーを岩本の喉元へ近づけた。

 グイーンといううるさい音と、エンジンから出る生暖かい空気に岩本は顔を背けた。

「娘はとばっちりだったわね。アキラを何でも殺すような鬼畜なハンターに育てたあんたの失敗よ」

 そう言って私は岩本の右肩にチェーンソーをたたきこんだ。

 絶叫が上がって、血しぶきが舞った。

 よける間もなく、返り血を浴びてしまった。

 やっぱり、この武器は派手なだけでデメリットばかりだわ。

 やだわ、血だけじゃなくて、肉片も飛んでくる。安物は刃がもろいみたいね。 

 岩本が身体をよじって逃げ出したので、チェーンソーをぐいぐいと差し込む。

 人間の身体ってのは案外丈夫に出来てやがる。

 骨がチェーンソーの刃を食い止めてるわ。

 その振動が私の手に、腕に伝ってくる。

 だけど、美里、負けない。


 絶叫とともに腕がぽろりと落ちた。

 岩本は恐怖に怯えていた。

 大きな目をぎょろりと開いて今にも眼球がこぼれ落ちそうだ。

 汗と涙でてかてかだった顔にも血を浴びて、赤黒くなっている。

 

「う、う、う、腕が……助けてくれ……金を、金をやるから……アキラ、助けてくれ……」

 私はアキラを見た。

 薫子を殺しておいて今更岩本を助けるなんてありえないと思うけど。

 アキラは首を振った。

「再会したのが運のつきさ」


 岩本はソファの上から動けなかった。

 どうして、逃げないのかしら。

 どうして、反撃しないのかしら。

 殺されるのに。


「今度はあたしが手術してあげる」


 私はチェーンソーの刃を横に向けて、岩本の腹を切り裂いた。

 今度は肉と脂肪がチェーンソーの刃と戦ってる。

 少しずつだけど、刃の動きが鈍くなってきたわ。

 脂肪ってすごいわね。

 腹が少しずつ裂けて、血と肉がはみ出てきた。

 岩本は叫びとともに身体をびくんびくんと震わせた。

 

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