青い太陽
青い太陽は傾き、赤い虹が掛かった空から翼を失った鳥が落ちてくる。その様子を彼は煙草をふかしながら悠長に眺めていた。…前の自分ならばこんな事があればどういう対応をしていただろうか。…いや、きっと騒ぎ立てながら焦っていたに違いないだろう。
ピーガッガッガガガ、と無機質な機械音がコートから響き自分はそれに耳を傾ける。
―――――残りの世界寿命を心行くまでお楽しみいただけるように、わたしたちは、うちゅうりょこうを実現いたしました。弊社では、空が見えません。世界寿命は時間を切るばかりです。うちゅーりょこー。こんなせかいすててうちゅーりょこーうちゅーうちゅー…――――。
自分は軽く舌打ちをしてその音を発する物体の電源を切る。何が宇宙旅行だ馬鹿馬鹿しい。もうこの世界は宇宙旅行すら叶わなくなったのにそんな淡い希望を持って提案している奴等こそバカだ。
元はと言えば偉い奴らの対応が悪かったから世界は朽ちたというのに、偉い奴らは聞く耳を持たないまま自殺しやがって残った自分らみたいな凡人はこんな世界でも彷徨っているというのに。
「…格好付けなかったらよかったのに」
青い太陽は近付いて来る。だって世界の寿命は切れてしまったのだから。自分らが息をして考えている間にも青い太陽は近付く。だって世界は息をしていないのだから。
自分は限界だった。