ー幕間ー王の間
「陛下、本当に勇者を異世界へと送還されるおつもりか?」
左大臣と国王しかいない王の間で左大臣が王に問いかける。
「そのつもりだ。勇者の意志が固い以上、無理に残って貰うこともできないだろう」
「お言葉ですが陛下、かの勇者の力、尋常ではございません。部下の報告によると、大半の魔物を一撃で葬る力をもち、魔王ですら例外ではなかったとききます。今後のローレンシア大陸の統一の野望の鍵となる存在です。陛下、今一度、勇者をこのグレタガルダに留めるように説得しては頂けませんか?」
「左大臣よ。お主の国を思う気持ち確かに嬉しく思う。が、それとこれとはべつの問題だ。わしは折角平和になったのだ、確かに各国が疲弊している今、領土拡大のチャンスなのかもしれない。それでは、魔王が生きていた時とかわらないではないか」
「しかし陛下!!」
「くどいぞっ、わしの意見は変わらん、他国に利用される前に勇者殿には祝賀会の次の日記念式典後、丁重にお帰り頂く。これにかわりはない」
「・・・わかりました。お気持ちは固いようですね。口惜しいですが・・・それでは私も宴会の準備がありますので、これで失礼いたします」
(大臣よ。あの者の力は危険が大きすぎる。何より民はもう争いは望んでいないのだ・・・)
(陛下、戦いはおわったのではありません。本当の戦いはここから始まるのですぞ。)