夢の動物園
「閲覧注意」すぐ読めちゃいます。そのわりにはショッキングな内容なので、お得です。
テレビで放映された福島の避難区域にある小さな動物園で、子供の影が映っていると視聴者からの問い合わせが相次いだそうです。福島の役所では、そんなはずはないと誰も真面目にとりあわなかったのですが、唯一人動物園の園長さんは園内の立ち入り許可を願い出たそうです。
「子供が取り残されたか、勝手に遊びに行ったのかも知れない」
「園長さん、あの場所は放射能が特に強い。危険です。それに、あんな動物園に遊びにいく子供などおりません。残された動物の死骸が腐り誰も近づきたくはない」
「園内はそんな地獄絵巻ではない」
「テレビでハエのたかった動物たちが映っていたじゃありませんか」
「あれはテレビ局の過剰な演出だ。死骸などあるはずはない」
「お気持ちはわかりますが、面倒をみる職員や、あなたがここに避難していて動物がどう生きていられるのですか。」
そう言われて園長さんは自分のふがいなさに腹をたて、涙をこらえ決意をかためたそうです。立ち入り許可が無かろうとも、防護服がなかろうとも、子供の見つけ出そうと。
その夜、ポツリポツリと小雨の降る中、園長さんは動物園に向かったそうです。そこには園長さんの言うとおり動物の死骸などありませんでした。人も動物もいない閑散とした動物園は、まるで30年前の開園準備当初を思い出されたそうです。仕事場をいち早く見せたくて連れていった、幼い息子と幼い妻。
「パパ、キリンさんやゾウさんいないの?」
「あなた、こんなとこに連れてこられてもケンタはよろこびませんよ」
時空を越え笑顔と会話が脳裏に浮かびました。その奥さんと息子さんはあの3月11日の津波で被災してしまってご遺体もまだ見つからないそうです。
園長さんは動物園を一通り歩き、最後に残した「動物ふれあいひろば」に懐中電灯の光をむけました。すると、そこに男の子が下をむいて座りこんでいたそうです。「まさか?」園長さんは懐中電灯を投げ出し、男の子のもとへ走りました。
「ぼく、どうしたんだい?泣いてるのか?こっちをむいてごらん」
男の子は小さな声で、苦しい、苦しい、とうなりながら泥だらけの頭をあげました。その顔にはネズミのようなヒゲがはえ、口は三叉にさけ、小さな目には白目はなく満月が確かに映っていました。園長さんは空を見上げましたが月どころか星ひとつありません。この世を押しつぶしてしまいそうな暗闇におおわれているだけだったそうです。もう一度、男の子をみると、苦しい、苦しい、といううなり声は叫び声になり、目に映る満月の光がフラッシュのように白く閃光を放ったそうです。
園長さんの記憶はここまでで、気がついた時は病院のベッドの上だったそうです。お医者さんにそのことを話すと、
「放射線の意識障害からの幻覚ですよ」
「動物たちの幽霊かたたりでは」
「ガハハハッ。」
との笑い声が響き、ベッドのまわりに大勢の医者や看護婦がいることに驚くのだそうです。園長さんはそれでも、幽霊だ、たたりだ、と毎日誰かに話すのだそうです。時には独りきりの病室でも。
私が聞いた話では、あの「動物ふれあいひろば」の土の下には共食いや腐乱死体をさらさせてはならないと、生き埋めにしたウサギやヤギやモルモット達の亡骸が葬られているそうです。
千枚通しでこめかみを刺してしまえば苦しまず殺してやれるのですが、避難所に行く前の晩、空は晴れ、動物たちの目には満月の光が映っていました。死に神のあやつる命の炎のようだったそうです。命の炎を消すためには手に持つ千枚通しではあまりにも頼りなく園長さんを死に神に変えることはできませんでした。仕方なく飼料を運ぶためのフォークリフトにエンジンをかけ、一気に穴の中の動物たちに土砂をかけました。土埃とディーゼルエンジンの音がとても静かに暗く園内を包み込みました。。
今現在、園長さんは強い放射線を受けた影響で両目を失明し、毎日製薬会社で開発した最先端の薬品投与をうけ、実験用のモルモットのようだそうです。
初投稿なので評価をいただければ今後の執筆の参考になります。




