煌めく双子
「・・・――い、おーい」
遠くで声がする。
あれ、日本語?
ってことは今までのは夢?
とすると、此処は何処だ?
「おーい、・・・・・・あれぇ、起きないなぁ。フレディア、どうしよう」
「何言ってんのフレッド。あんたが勝手に受け取ったんでしょ!?ほんっと、ヴィリィクス様に弱いんだからっ」
フレディアにフレッド・・・・・・ヴィルから聞いた名前・・・・・・
「・・・!?」
「あ、起きた」
「あ、ほんとだ」
がばっと起きるとそこには金髪の美しい二人。
「に、日本語・・・・・・な、に・・・、え?」
「あー、混乱しちゃった。フレディアのせいだよ?そんな怖い顔してるから」
「勝手に人のせいにしないでよ!っていうか意味わかんないよその理由!どう考えてもフレッドのせいでしょ!?この子に何も説明しないから!」
「あーはいはい。やっぱり反応可愛いなぁ。ヴィルにあげたくないなぁ…」
ヴィリィクス様を呼び捨てするな!と女の子が叫んでいる。
ぽかんと見ていると、女の子がにっこりと笑いかけた。
「ごめんね、馬鹿な兄で。私はフレデリアよ。フレディアとかディアって呼んでね。今、お茶を持ってくるから待ってて」
「あ、ちょっとフレディア!僕を一人にしないでよ!」
「セイカさんがいるでしょ!ついでに説明しなさいよ!」
さっさと出て行ってしまった。
残った彼は、会話からしてフレデリック・ノワルーシェ?
「あー、・・・。何から話せばいいのかなぁ。・・・・・・僕って、人見知り激しいんだ。悪いんだけど、質問攻めされたほうがやりやすいんだけど・・・・・・セイカ・ミムラさん」
本で見たことのあるような煌びやかな貴族風の服を着ている。
その見た目とは違い、態度は砕けていて、溜め息を吐いている。
「あ、あの・・・あなたの名前は?」
一応確認のために聞いてみる。
「フレデリック・ノワルーシェ。さっきのは妹でフレデリア」
「・・・双子、ですよね?」
「うん。ちなみにフレディアはヴィルの婚約者だよ。本人達は互いに友達同士だと思っているけど」
・・・・・・。
今、ちょっとありえないことを聞いた気がする。
婚約者?そんなのいたのか!
「・・・・・・。セイカさん?こっちには心の声聞こえてるよー」
「は!やってしまった・・・・・・ってフレデリックさんは私に一切触れていないですよね?」
私はソファーに寝かされていて、彼は机を挟んだ向こう側にいる。
「あ、・・・ヴィルは説明しなかったのか・・・・・・じゃあ、フレディアに頼むか。ちょうど来たみたいだし」
え?と声を上げた瞬間、ドアからフレディアさんが入ってきた。
が、どうもしかめっつらをしている。
「・・・フレッド」
「なんだい?フレディア」
険悪な空気を纏いながら、フレディアがフレッドを問い詰める。
「セイカさんに変なことしてないでしょうね!?」
「やだなあ。僕が愛しているのはフレディアだけだよー?」
「何変なこと言ってんのよ!」
気付けばフレディアがフレッドを殴り飛ばしていた。
・・・・・・何だろう、この違い。
「はあ、はあ・・・・・・。セイカさん大丈夫?何もされてないよね?フレッドに変なこと言われた?それとも聞かれた?」
例えば服のサイズとか、スリーサイズとか・・・と言い出したフレディアに私はぎょっとする。そんなこと聞く人なのか・・・・・・。
「ふう。とりあえず何茶が好みかわからなかったから、無難なフォリィテフロ(茶)を持って来たわ」
「あ、ありがとうございます」
カップに注がれたお茶はピンク色をしている。桜に似た色だ。
「あの・・・フォリィ?って、どんな花ですか?」
「ああ、そっか。わからないか。えっと、・・・・・・」
「セイカさんがこっち(フィチカリネ)で一番最初に見た花だよ」
フレッドが助け舟を出してくれたおかげでわかった。
あの、桜のような花だ。
懐中時計に描かれていた―――
「「懐中時計!?」」
「!!??」
いきなり二人が叫んだので驚く。
「懐中時計って・・・フレッド」
「ああ。もしあの(・・)懐中時計なら・・・・・・。セイカさん、その懐中時計、今持ってる?」
「は、はい」
私は持っていた懐中時計を二人に見せた。
すると二人は目を真ん丸にして固まり、同時に呟いた。
「「大魔術師様・・・」」