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聖女たるもの見過ごす訳には参りません  作者: 櫻木サヱ
聖女は象徴であることを拒まない

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聖女たるもの、代償は自分で払います

王城の鐘が鳴った。


 昼。


 それは、招集の合図だった。


「……来ましたか」


 私は、窓から鐘楼を見上げた。


「ええ」


 騎士団長が、苦い顔で頷く。


「評議会、正式に動きます」


「処分、ですね」


「はい」


 部屋の空気が、重い。


「聖女の職権乱用。

 評議会室への不法侵入。

 評議員への暴行未遂」


「未遂?」


 私は、首を傾げる。


「完全に、やりましたよ」


「そこは、王が調整しました」


「……王、胃が痛そう」


 団長が、小さく笑う。


「それでも」


 表情を戻す。


「あなたが表に立つ必要があります」


「分かってます」


 私は、マントを羽織る。


「逃げる気はありません」


 評議会広間。


 以前より、人が多い。


 記録官、護衛、そして――

 傍聴席には、貴族の影。


「聖女、前へ」


 呼ばれ、歩み出る。


「聖女」


 議長が、咳払いをした。


「昨夜、そして本日未明の行動について、

 弁明はあるか」


「あります」


 私は、はっきり言った。


「全部、私がやりました」


 ざわめき。


「理由は?」


「民を守るためです」


「それが、暴力である必要が?」


「ありました」


 即答。


「言葉が通じない相手でした」


 議長の眉が、ひくりと動く。


「聖女は、奇跡をもって導く存在だ」


「それは」


 私は、視線を逸らさない。


「平時の話です」


「……」


「暗殺者が刃を向けている時、

 祈って待つ聖女は、無能です」


 沈黙。


「処分として」


 議長が、声を張る。


「聖女権限の一部凍結を――」


 その瞬間。


「異議あり」


 王が、立ち上がった。


「聖女の行動は、

 王命に基づく非公式対応である」


 広間が、ざわめく。


「記録に残せぬ案件を、

 誰が処理するというのだ」


 王は、真っ直ぐ私を見た。


「私は、聖女に命じた」


 私は、一歩前に出る。


「違います」


 全員の視線が、集まる。


「王は、命じていません」


「聖女……!」


「私が、勝手にやりました」


 王を見る。


「王を、盾にしたくありません」


 再び、沈黙。


 議長が、深く息を吐いた。


「……ならば」


「ならば?」


「公式な処分は、軽減する」


 しかし。


「代わりに」


 指を立てる。


「今後、聖女の行動は、

 常に騎士団の監督下に置く」


「……」


「独断専行は禁止だ」


 私は、少し考えた。


「受け入れます」


「聖女!」


 団長が、小さく叫ぶ。


「条件があります」


 私は、続ける。


「私が殴る必要がある時」


 間。


「止めないでください」


 場内が、凍る。


 議長は、こめかみを押さえた。


「……検討する」


「ありがとうございます」


 一礼する。


 広間を出る。


 廊下で、団長が追いついた。


「本気ですか」


「本気です」


 私は、空を見る。


「代償は、理解して殴りました」


 拳を、軽く開く。


「だから、逃げません」


 聖女たるもの。


 殴った責任くらい、

 自分で払います。

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