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第5話 衝突の予感

合格から数週間ーーついに春。

入学式を終えたタイチは、胸に“風”を抱きながら新しい学園へ。

しかし、そこで待っていたのは思いがけない“衝突”だった。





 入学式を終えるや否や、オレは教室を飛び出した。


 早くグラウンドを見たい。

 早く仲間と練習したい。


 胸が高鳴り、廊下を駆け抜けーー


 ドンッ。


 


「あっ、ごめんなさい!! 大丈夫ですか!?」


 


 角から現れた影と、もろにぶつかった。


 見上げると、俺より頭ひとつ分はデカい体格。

 オールバックに着崩した制服。

 そして黒いサングラス。


 その下から、鋭い目がギラリと覗く。


 


「いってーな。ちゃんと前見ろよ、アホ」


 


 低い声。短くて、冷たい。

 言い捨てるようにして、その人物は通り過ぎていった。


 廊下に残ったのは、わずかに揺れる風。


 


「……なんだろ、今の人」


 


 体格も声も、ただ者じゃない。

 すれ違いざまに感じた妙な圧ーー。


 まるで「お前の立つ場所はここじゃない」と言われたみたいで、胸がざわついた。


 


 オレは胸ポケットの中にある“虎の巻”を、そっと握りしめた。

 そのまま寮に向かう足取りは、ほんの少しだけ重かった。





 けれど、それ以上にーー胸の奥ではワクワクしていた。


 どんな仲間がいるんだろう。

 

 どんな先輩たちが待っているんだろう。



 怖さよりも、楽しみのほうがずっと大きかった。


 


 グラウンドの土の匂い。

 

 ボールの縫い目の感触。

 

 そして、まだ見ぬ仲間たちの声。


 きっと、ここから始まるんだ。


 オレたちの“煌桜”が。


 


 胸の奥で、春風がふっと吹いた気がした。


 


(どんなチームでもいい。オレは、この場所で風を起こすんだ)


 


 午後の日差しが差し込む廊下で、オレは小さく笑った。






 


春の出会いは、いつだって突然に。

タイチがぶつかった謎の男は一体ーー?

そして、これから出会う“仲間たち”とはどんな人物なのか。






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― 新着の感想 ―
読みに来ましたー! 野球、青春のイメージだけど、お爺さんはじまりだからか、ノスタルジーな風、お爺さんの青春を感じました! 野球って、今でも厳しいと言われていますよね。 どんな物語になっていくのか楽しみ…
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